NBAもF1もPGAも、裏で支えるAWS 視聴者体験の変革を支援

AWSがメディア・エンタメ業界向けイベントを開催した。“1兆ドル市場”でAIはスポーツ観戦をどう変えるのか。NBAやF1の事例から、データがもたらす新たな視聴体験の未来が語られた。

» 2025年10月18日 08時00分 公開
[村田知己ITmedia]

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 アマゾン・ウェブ・サービス ジャパン(AWSジャパン)は2025年10月6日、メディア・エンターテインメント業界における「Amazon Web Services」(AWS)導入事例を紹介するイベント「AWS Media & Entertainment シンポジウム」を開催した。

AWS ニナ・ウォルシュ氏(出典:筆者撮影)

 冒頭、AWSのニナ・ウォルシュ(Nina Walsh)氏(Global Leader of Industry BD for M&E, Games & Sports)はAWSが17年以上にわたりメディア・エンタメ業界の顧客と協業し、サービスの95%が顧客のフィードバックに基づき開発されてきたことを強調した。

 同業界の規模は昨年1兆ドルに達し、さらに成長が見込まれる。同氏は、「メディア、ゲーム、スポーツの境界線は消えつつあり、この業界横断的なアプローチこそが“1兆ドルの機会”だ。リアルタイムでパーソナライズされたAI体験を習得した企業が次の10年の成長を掴む」と述べ、2025年を生成AIの「ビジネス価値を生み出す年」と位置付けた。

生成AI活用において、2023年は「PoCの年」、2024年は「作る年」、2025年は「ビジネス価値の年」(出典:ウォルシュ氏の講演資料)

 では、これらの業界ではAWSのAI技術がどのように活用されているのか。続いて、NBA(北米プロバスケットボールリーグ)やF1(フォーミュラ1)、PGAツアー(男子プロゴルフツアー)など、世界的なスポーツリーグとのパートナーシップを通じて、AIとデータを活用した視聴者体験の変革がいかに進んでいるかが解説された。

AIがNBA選手の貢献度を可視化 F1、PGAでの活用例も

 イベントでは「Amazon Prime Video」でのNBA配信が発表されるとともに、AWSのAI技術による新たな視聴体験が紹介された。シュートの難易度や、味方の得点機会創出、守備での貢献度など、これまで専門家の感覚に頼りがちだったプレーの評価をデータで可視化し、視聴者がより深いレベルで試合を楽しめるようにする。

 これらの指標は、選手の身体に設定された骨格ポイントをAIが認識し、1秒間に60回のトラッキングデータを解析することで算出される。アマゾンジャパンでPrime Videoコンテンツ事業本部 スポーツ事業部の部長を務める横尾賢氏は、「SNSで結果が先に流れてしまう『ネタバレ』を防ぐ低遅延配信とともに、データによってファンとの『共通言語』を作り出し、新しい観戦体験を提供したい」と語る。

 AWSの取り組みはNBAにとどまらない。2017年から協業するF1では、マシン1台が毎秒110万点のデータを生成。コース上のセンサーや天候データと合わせてリアルタイムで分析し、ファンエンゲージメントの向上に活用している。取得したデータを基にオペレーションスタッフやエンジニアの業務効率化も支援する。

 また、PGAツアーとの関係は、単なるスポンサーやベンダーの枠を超えているという。ウォルシュ氏によれば、PGAツアーの技術責任者は自らを「ゴルフを手掛けるテックカンパニー」と称しており、AWSは団体の技術革新を支援する「共創パートナー」として位置づけられている。コースに多数のカメラを設置してショットを追跡。専用アプリでその軌跡を確認できるようにした。

AI変革の課題と、データ活用の民主化

 AIの導入には知的財産権やデータプライバシー、人間の創造性とのバランス、技術インフラの整備といった課題が伴う。ウォルシュ氏はこれらの課題を乗り越えるために以下の3つのアクションを企業に推奨する。

  1. 自社のAIに関する能力の棚卸しと、すぐに着手できる改善機会の特定
  2. 明確なデータ戦略の策定
  3. 人材のスキルアップ

 F1における導入事例では、新しい視聴体験によって「F1 TV」アプリでの視聴者のエンゲージメントが伸びていることが確認できているという。イベント後の記者会見でウォルシュ氏は「審判の効率化、視聴者の体験向上、運営業務の効率化といったさまざまな面でAWSの技術が使われている」と述べ、AWSがメディア・エンターテイメント業界を"全方位”で支援していることを強調した。

 AWSジャパンは同週に医療・製薬業界、金融業界における導入事例を紹介するイベントも開催した。ウォルシュ氏が言うように2025年はまさに生成AIの「ビジネス価値を生み出す年」であり、多様な業界でその成果が表れ始めている。ぜひ、これらの事例から自社の業務効率化のヒントを見つけてほしい。

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