デジタル庁が後押しする「第三者保守」 コスト削減と投資転換を実現する6つのユースケース

デジタル庁のガイドラインで認知度が高まる第三者保守だが、日本は海外に比べ利用が低調だ。ブレイヴコンピュータとひとり情シス協会は、IT保守コスト削減とDX投資への転換を可能にする6つのシナリオを発表した。

» 2025年10月30日 07時00分 公開
[齋藤公二インサイト合同会社]

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 メーカー保守が切れたハードウェアを第三者が代わって保守する第三者保守は、2025年6月にデジタル庁が公開した「デジタル社会推進標準ガイドライン」に取り上げられるなど認知度は高まっている。ただ、日本では米国を中心にした海外に比べて利用割合が低いと言われ、活用の余地が残っている状況だ。

 そういった状況を受け、第三者保守専業ベンダーのブレイヴコンピュータは2025年10月15日、ハードウェア第三者保守に関する戦略説明会を開催し、第三者保守の現状や、活用のメリット、活用のためのシナリオを公開した。

ひとり情シス協会から見た「第三者保守」の価値

ブレイヴコンピュータ 神山悟氏(筆者撮影、以下同)

 ブレイヴコンピュータの神山悟氏(代表取締役)は冒頭で、「2026年で15周年を迎え、累計7万5000台、顧客数は700社を超え、新規引合数は過去3年で49%増となりました。この背景には、デジタル庁のガイドラインの浸透、情シスの人材不足、守りの設備投資からAIなどのDX投資への転換などがあります」と、同社を取り巻く動向を説明し、さらなる活用にむけて、ひとり情シス協会と共同での取り組みを進めていると話した。

ひとり情シス協会 清水博氏

 続いて登壇したひとり情シス協会の事務局 清水博氏は「第三者保守は、守りの投資を節約し、攻めの投資に転じる良い手段となる」と訴えた。清水氏によると、サーバを対象にした第三者保守のグローバル規模での利用実績は48.8%に上る一方で、日本での利用実績は12.3%と大幅に遅れている。

 「海外ではITの主流な保守戦略の一つとして認識され、IT保守コストを40〜70%削減できるという点が評価されています。それ以外にも、『月や年単位での柔軟な契約が可能になる』『マルチベンダーサポートが受けられる』『修理用部品の確保が保証される』『修理の専門知識など高度なスキルを持つ技術者のサポートを受けられる』といったメリットがあります」(清水氏)

 また、海外ではコストにシビアな企業が多いことや、安定したシステムを延命しコスト削減することが一般化していること、経済合理性を優先しベンダーロックインを避ける姿勢が強いことといった事情も第三者保守の利用を支えているという。システムを販売するシステムインテグレーターやリセラーも、ベンダーサポートではなく、第三者保守を組み合わせて提案することも一般的だという。

 「純正保守を見直し、第三者保守に対応することで、さまざまなメリットが生まれます。EOSL(End Of Service Life:サービス提供終了)を回避することで、リプレース計画に余裕ができ、次の手を熟考できるようになります。また、削減した金額を使って、例えば、生成AIのライセンスを多くの従業員に適用するなど、DX推進に向けた攻めのIT投資に転じられるようになります」(清水氏)

第三者保守活用のユースケース6選

 第三者保守の事例は、デジタル庁でも取り上げられ、認知度は高まっているが、実際の活用となると課題が多いという。特にコロナ禍以降、中堅・中小企業でIT経験の浅い「ひとり情シス」が急増したこともあり、機器・ソリューション選定に役立つガイドが必要になってきた。そこで、ブレイヴとひとり情シス協会が協力し、第三者保守の代表的な6つのユースケースについて、課題と解決策を整理した。

 6つのユースケースは以下が挙げられている。具体的な内容については「第三者保守の活用シナリオ」として公開されている。

  1. ハードウェア延命戦略
  2. レガシーシステムのセキュリティ強化、
  3. クラウド移行のための移行期間確保、
  4. 中小企業の情シス人材不足への対応、
  5. 医療機関における専用システム延命

 「ひとり情シス協会に第三者保守の相談窓口を開設し、活用シナリオの質問や上申方法の相談、セカンドオピニオン、新ユースケース開発などに取り組みながら、企業をサポートしていきます」(清水氏)

 ブレイヴコンピュータは、第三者保守サービス「つなぎ保守」を提供している。つなぎ保守は、メーカー保守終了を迎えたサーバ、ネットワーク機器、ストレージなどを次の更改までつなぎ、ハードウェアの安定稼働をサポートするサービスだ。同社を含め、保守パーツは国内外の中古市場から調達し、サービス範囲はハードウェアのみ、マルチベンダーで主要メーカーの機器に対応するのが一般的だ。

ブレイヴコンピュータ 小峯寛子氏

 ブレイヴコンピュータの小峯寛子氏(経営戦略本部)は、つなぎ保守ならではの4つの強みとして「契約顧客向け専用保守パーツをストックすること」「3〜5年の長期保守契約も提供できること」「自営保守拠点から自社エンジニアが対応すること」「24時間365日エンジニアと話せる障害受け付けダイヤルを設置すること」を挙げた。

 保守拠点は国内9都市にあるテクニカルセンターで、自社エンジニアが24時間365日障害を受け付ける。顧客専用の保守パーツを最寄り拠点にストックし、定期検査を実施し、スピードと信頼性を確保しているという。エンジニアにはメーカー系保守会社出身者が多く在籍し、エンジニア自らがコンタクトセンターで顧客と直接会話してサポートする。

ひとり情シス協会 黒田光洋氏

 ひとり情シス協会では、同社のテクニカルセンターを第三者機関として評価する取り組みも実施している。評価をしたひとり情シス協会の黒田光洋氏(技術顧問)は、5つの評価ポイントがあったとし、こう説明した。

 「1つ目の評価ポイントは、豊富な保守パーツ。マシン一式対応ではなく、壊れた箇所のパーツ単位で対応できるため、低コストで運用継続が可能な点です。テクニカルセンターでは、詳細なパーツも丁寧に分類・保管されている。2つ目は、自社エンジニアの技術力。ベンダー出身者による専門的な構成を把握しており、マルチベンダー対応可能な技術力を持つ。3つ目は保守部材の管理体制。パーツレベルでラベルが添付してデータベース化、構成情報を可視化して効率性を確保している。4つ目はテクニカルセンターの環境。ほこりやチリの少ない清潔な環境を維持する他、実作業を考慮して空間を確保するなど合理的な設計になっている。5つ目は会社体制。仮眠スペースなどエンジニアの労働環境への配慮の他、経営者がエンジニア重視の姿勢を持つ」(黒田氏)

 説明会に合わせて、東京にあるカスタマ・テクニカルセンターの見学会も実施された。黒田氏が指摘した、保守パーツの管理方法やエンジニアによる作業風景、パーツレベルでの管理体制などを見ることができた。

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