ビジネスで携帯を“とことんまで”使える時代が来た──KDDIの法人携帯戦略(2/2 ページ)

» 2006年12月12日 20時48分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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 出退勤管理は、最近では単に残業代を計算するのではなく、業務負荷を可視化することで限られたリソースを有効活用するためのニーズが増えているという。「例えばキャンペーンを実施した場合、派遣したスタッフが遅くまで働いていたら、スタッフを増員したり、キャンペーン内容を変えるといった施策がすぐ打てる」(阿部氏)

 同じ携帯を使った出退勤管理でも、初期導入コストや操作性のレベル、携帯の利用の仕方などによってバリエーションがあるのが特徴だ。

Photo 顔認証を使った勤怠管理システムの携帯アプリ画面(左)。管理者側に送られたデータ右のように表示される

 1つは端末内に出退勤管理用のBREWアプリをインストールする方法だ。社外勤務者が出勤時と退勤時にBREWアプリに用意された「出勤」「退勤」ボタンを押すだけで現在時刻と位置情報が付加された情報が管理用のサーバに送信される。初期導入コストをあまりかけず、短期間で導入できるのがこの方法だ。

 2つ目は携帯カメラとBREWアプリを連携させた出退勤管理。BREWアプリを起動すると携帯カメラが起動し、顔を認証した上で時刻と位置情報を付加して管理側のサーバに送信する。顔写真付きで出退勤を管理できるのが特徴で、導入コストは「中くらい」だという。

 3つ目は、社外勤務者が持つバーコードなどの情報を、Bluetooth携帯で読み取って、管理側のサーバに送信する方法だ。初期導入コストはかかるものの、社外勤務者は付与されたバーコードを読み取り機にかざすだけで済むなど手間が省ける。

 アルコールチェックシステムは、東海電子のセンサーと携帯電話を活用したドライバーの飲酒チェックシステム「ALC-Mobile」を提供している。飲酒運転が問題視される中、東海電子の据え置き型アルコールセンサーは、バス会社やタクシー会社など350社に1200セットの導入実績があるという。これを遠隔地でも利用したいという企業の要望に応える形で、携帯電話を利用した可搬性のあるアルコール検知システムを展開することになった。現時点での導入実績は30社400台にのぼるという。

Photo センサーに息を吹き込むとセンサーが呼気中のアルコール度を測定。結果は携帯を通じて送信する(左)。管理者側は右のような画面で状態を確認できる

 ALC-Mobileは、折りたたんだ携帯電話より一回りほど大きいサイズのセンサーと携帯電話で構成されるシステム。ドライバーがセンサーに差し込んだストローに息を吹きかけると、息の中に含まれるアルコールが測定され、測定結果とドライバーの顔写真、位置情報が携帯電話経由で営業所に送られる。

 基準値以上のアルコールが検知された場合は、管理者側のPCがアラート音を発し、当該ドライバーのデータが赤で表示されるなど、ドライバーのステータスを把握しやすくする工夫も盛り込んだ。

 このシステムは、飲酒したかどうかを確認できるだけでなく、(1)ドライバーに対する抑止効果が働く (2)安全運転のための取り組みとして乗客へのPRになる という導入効果があるという。

 店舗リサーチのソリューションは、携帯電話の高機能化が生かせる分野だ。売り場の持つ価値をいかに早く高められるかが問われる中、テキストだけでなく、カメラで撮影した店舗の写真や、録音した現場の声をつけたデータを本部に送信できるようになったことから、よりリアルな情報を迅速に伝えられるようになったとしている。

Photo 携帯の高機能化により、よりリアルな現場の声を届けられるようになった(左)。右は携帯から送られた現場写真と現場の声を管理者側で再生したところ

携帯でやる気になれば、ここまでできる

 2003年2月に最初のBREW端末が登場してから約4年、携帯電話の性能もインフラもめざましい進化を遂げた。最新のビジネス携帯E03CAには、(1)タフネス性能 (2)大容量バッテリー (3)セキュリティ (4)Bluetooth (5)利用者制限 (6)管理者によるアプリの自動配信 (7)WIN対応 (8)豊富な内蔵メモリといった、ビジネス利用に求められる各種機能が盛り込まれ、既にヤマト運輸が集荷時の端末として導入することが決まっている。

 これまでもヤマト運輸は、業務に携帯電話を採用していたが、現場からの配達完了報告や荷物の管理など、配達フローの一部の利用にとどめていたという。阿部氏はE03CAの登場で、これまで携帯で扱うには無理があるといわれていた集荷時の料金計算にも使えるようになったとし、「携帯がようやくPDAのたぐいまでたどり着いた」と胸を張る。「やる気になれば、ここまでできるというところに達したので、来年1年間は、この端末を使って業務ソリューションのレベルを上げていきたい。やっとインフラと業務がマッチングした」(阿部氏)

 目下の課題は、まだビジネス利用の実可動が少ない点だという。「(パートナー向けに)ケータイ・カスタム・キットもデータベースも無料で提供している。こうしたツールを使ってパートナーの方々と一緒にモバイルソリューションを盛り上げていきたい」(阿部氏)

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