ウィジェットを檜舞台に押し上げるmixiアプリ:浮上するもう1つの企業メディア(2/2 ページ)
ウィジェットの普及には、それを配信するプラットフォームの成熟が欠かせない。その急先鋒となるのは「mixiアプリ」。企業の参入も進んでいる。ウィジェットマーケティングを展開するための土台となるプラットフォームを考察する。
利用者と密接につながる“モバイルデバイス常駐型ウィジェット”
mixiアプリのような「Web連携型ウィジェット」がリーチの拡大に有効であるならば、「デバイス連携型ウィジェット」は利用者との関係を強化するのに有効だ。これはインターネットに接続できる機器が増加したことで、一層普及している。
その中でも、スマートフォンや携帯電話などにコンテンツを常駐させられる「モバイルデバイス常駐型ウィジェット」が注目株だ。企業がこのタイプのウィジェットの利用拡大に成功すれば、利用者に毎日の頻度で情報を届けることができる。
国内市場に目を移すと、モバイルデバイス常駐型ウィジェットとしては「iPhoneアプリ」の存在が際立っている。話題性や利用者数でほかのウィジェットと比べても群を抜いており、iPhoneアプリを利用したマーケティングを先行して実施する企業も増えている。
グッチグループジャパンはこのほど、iPhone/iPod touch専用アプリケーションの提供を開始した。コンセプトは「ファッション、ライフスタイル、音楽を1つに統合する」というもの。グッチの限定商品やファッションショーの映像、イベント情報などを提供している。非常に多機能なコンテンツであり、“グッチファン”は日常的に「Gucci」というブランドに触れられる。顧客満足度を上げるという点でも効果は大きい。
今後は 「Android Phone」「Windows phone」などもウィジェット市場に参入する。同様のアプリケーション(ウィジェット)の利用者は増えていく。当然、企業側もその存在を無視できなくなるだろう。
ただし、モバイル端末にウィジェットを展開するには、企業が乗り越えるべき致命的な課題がある。それは端末ごとに技術仕様が異なっていることだ。現状では各プラットフォームに合わせてアプリケーションを開発する必要があり、結果としてウィジェットの制作に掛かるコストも膨れ上がってしまう。
だがこの課題が改善されるのは時間の問題だ。例えば、米Adobe Systemsが提唱している「Open Screen Project」という活動では、AdobeのFlashやAIRといった技術をオープン化し、PCやテレビ、携帯電話などでFlashのコンテンツを統一利用できる環境作りを目指している。同プロジェクトにはNokia、Sony Ericsson、Qualcomm、Motorola、NTTドコモ、MTV、BBCなどの名だたる端末メーカーやコンテンツ事業者が参加しており、ウィジェットの技術基盤の共通化を進めている。モバイル端末でウィジェットを展開しようとしている企業は、こうした技術動向も追いかけておきたい。
これまで4回にわたり企業とウィジェットマーケティングの関連性を解説してきた。実際には「自社でウィジェットを活用するハードルは高い」と思っている担当者も少なくないはずだ。だが、今のタイミングでウィジェットマーケティングを展開することで得られるアドバンテージ(先行者利益)は大きいことも確かだ。本連載がウィジェットの特性を把握し、マーケティング活動や自社メディアを強化するための一助になれば幸いである。
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著者プロフィール:竹下直孝(たけしたなおたか)
2001年にソニーに入社。2005年に社内の有志数人で「新しいネットメディアの開発」をコンセプトに、ウィジェットサービス「FLO:Q(フローク)」プロジェクトを発足。現在、サービス全体で約20万人の登録会員を抱えるサービスに育て上げた。最近では新たなウィジェットのプラットフォームとしてmixiを活用した「mixiアプリ」をリリースしている。
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