グローバルビジネスを支えるIT部門とパートナーの役割とは? IT系メディアが議論(3/3 ページ)
企業のグローバルビジネスを支えるITの基盤をどう実現すべきか。国や地域で異なるネットワーク環境や法規制などが壁として立ちはだかるケースも多い。IT部門が自社のグローバルビジネスを成功に導くために果たすべき役割や、それをサポートするパートナーの意義について、IT系メディアによる討論が行われた。
IT部門に求められる姿、パートナーの役割
それでは、舘野氏や星野氏が提起したような役割をIT部門が実践しているグローバル企業では、どのような取り組みが行われているのだろうか。浅井氏が米General Electric(GE)の事例を紹介した。 浅井氏によれば、GEでは、情報システム部門の役割を「経営戦略をITに翻訳すること」と定義し、ビジネスプロセスのすべてに関わることを求められており、そのためのリーダー人材育成プログラムも充実しているという。
「GEには2年間のITリーダー育成プログラムがある。6カ月ごとに世界中の事業部門のプロジェクトを担当させ、その期間内に成果を出させるというもので、次の10年を担うスキルをビジネスの現場で学ぶものだ」(浅井氏)
GEの事例は、IT部門に求められる役割のモデルケースのひとつになるようだ。だが浅井氏は、GEが積極的に外部パートナーを活用していることも挙げ、パートナーの重要性を指摘する。前述のように進出先での拠点構築の際に人材不足という課題に直面するケースが少なくない。IT部門も例外ではなく、現地でのIT基盤の構築をサポートしてくれるパートナーの存在が不可欠になる。
この点について大谷氏は、「これまでネットワークは通信事業者に、データセンターは別の事業者に、というように分野ごとに異なるパートナーが支援する仕組みだった。しかしユーザー企業としては、できれば1つのパートナーで多くを支援してくれる方がありがたいと感じている。今後、パートナーには“総合力”が求められてくるのではないか」と述べた。
グローバルICTパートナーの実力を知るには、進出先の国や地域の数、サポートしている言語の数といった指標が分かりやすいだろう。大谷氏は、そうした数字よりも、実際にどの程度までサポートをしてくれるのかといった“中身”こそが、ユーザー企業にとって重要だと話す。「例えば、進出先が北米と韓国だけだとしても、そこでは非常に手厚いサポートを提供している、現地の状況をよく理解してコンサルティングをしてくれるといったパートナーが大切な存在になるだろう」(大谷氏)
ユーザー企業がグローバルICTパートナーに求めるのは、進出する国や地域に関する豊富な情報や、そこでの課題を乗り越えるためのノウハウ、それらを活用したサポートであるようだ。
また星野氏は、このように考えるユーザー企業の中には必ずしもグローバルICTパートナーが日系企業である必要性はないとみる動きが出るかもしれないと予想する。「単にネットワークやデータセンター、クラウドサービスを提供するだけではなく、ユーザー企業のビジネスを変革させてくれるという役割がパートナーには求められるだろう」(星野氏)
日本企業のグローバル化が今後ますます加速していくとみられている。舘野氏は、IT部門やパートナーが自らの役割を果たしていく上で、日本という枠だけにこだわらず、世界に視野を広げていくことが大切だと語った。
IT系メディアによる「メディア横断討論会」は10月28日にも開催され、読者も参加できる。今回の内容を踏まえ、企業のグローバル化とITの役割についてより広い視点で議論が尽くされることになるだろう。会場に足を運び、各メディアの“生”の見解をぜひ聞いていただきたい。
関連記事
- 震災を乗り越え、「グローバル化」につなげる――IT系メディアが討論
グローバル時代に企業のIT部門が果たすべき役割とは何か――。この命題に取り組むIT部門は、東日本大震災での経験も大いに生かしていくべきではないだろうか。では、どのような視点やアクションが必要なのか。IT系メディアが一堂に会し、メディアの垣根を越えた討論が行われた。 - キーワードは「成長」と「グローバル化」――IT各社の年頭所感から
世界同時不況の波に飲まれた2009年はIT業界にとっても厳しい一年だった。依然として先行きが不透明な状況の中で、IT企業は2010年にどのような展望を見出すのか。各社トップの意気込みをまとめた。 - グローバル化――そこに横たわる課題解決のために
企業にとってグローバル化は避けては通れない道となっているが、それに伴うさまざまな課題もある。企業はこうした課題にどう対処すべきなのか。日本マネジメント総合研究所 理事長である戸村智憲氏に、アイティメディア ITインダストリー事業部 編集統括部長 浅井英二が聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.