写真販売ベンチャーが苦心の末に編み出した“ダブルクラウド”活用術:クラウド最前線(2/2 ページ)
いまや幼稚園にもクラウド化の波が及んでいる。多くの保護者に喜ばれる「ネット写真販売サービス」の裏側には、新技術と向き合うベンチャー企業の試行錯誤の歴史があった。
パブリッククラウド同士の“ハイブリッド化”へ
ニフティクラウドは用途に合わせてさまざまなメニューがあるが、ディスク容量は一律30Gバイト。さらに大容量のディスクを使いたい場合は、1ディスク当たり100Gバイト〜2テラバイトの「増設ディスク」を追加する必要がある。
「はいチーズ!」のリニューアル当時、選択可能な増設ディスクは「Disk40」(2テラバイトまで)と「Disk100」(1テラバイトまで)の2通りだった。だが柏木さんによれば、“安定しているが高価”なDisk100をとるか“安価だが不安定”なDisk40をとるかの板挟みの中で「2往復ほどデータを引っ越しした」という。
サイトをダウンさせるわけにはいかないし、インフラコストも削減したい――こうした悩みを解消するきっかけになったのが、2011年3月のAmazonデータセンターの東京進出だったと柏木さんは振り返る。「早速試してみたところ、速度も安定性も良かった」ため、同年4月から順次ニフティクラウドのストレージ内データをAmazon S3に移行。その後2カ月ほどかけて、サーバのフロント部分には「サーバは抜群に良い」というニフティクラウド、ストレージにはAmazon S3――という“ハイブリッド環境”を完成させた。
「もともとAmazonクラウドの中でもS3とEC2は全く別物のサービスなので、S3は外部のサービスと連携させやすい作りになっている」と柏木さん。ハイブリッド環境への移行後は1度も障害が起きていないほか、ストレージサービスの利用コストもニフティクラウドだけの時と比べて削減できたという。
“ハイブリッド構成”ならではのメリットもあるという。「ニフティクラウドに問題が発生した時は、その気になれば全てAmazonに移せるし、Amazon S3が不安定になってきた際はニフティクラウドに戻すという選択肢も取れる。要は二股している状態なんですね」と柏木さんは話す。
また、こうして作られたインフラ環境が「はいチーズ!」の強みにもつながっている。柏木さんによれば、データ移行後もサーバのチューニングを重ねることで、サイト内の写真表示スピードの高速化を実現。ユーザーの利便性を向上させているという。
自社のデータセンターとパブリッククラウドの接続などを指す「ハイブリッドクラウド」という言葉が認知度を高めつつある中、企業のビジネス要件によっては、こうしたパブリッククラウド同士の組み合わせも1つの選択肢になるかもしれない。
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