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日本の電子コミックを世界へ――Windows 8アプリ「地球書店」のインフラ構築記導入事例

日本の電子コミックを世界に配信することを目指すサービス「地球書店」。Windows 8アプリの開発に当たっては、国内外のユーザーからの大量アクセスを見越して柔軟なサービスインフラを構築したという。

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 海外でもファンが多い日本のコミック。それらを電子書籍化し、全世界に向けて配信しようと挑戦しているのがNTTソルマーレだ。携帯電話向け電子コミックサービス「コミックシーモア」(旧コミックi)を2004年から運営している同社は今、PC/スマートフォン向け電子コミックサービス「地球書店」を通じ、日本語版/英語版それぞれの電子コミックを販売している。

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Windows 8版「地球書店」のコミック閲覧画面。「紙の本のようにペラペラとページをめくれるユーザーインタフェースが特徴」(安永氏)という。

 地球書店は、2011年1月にiPhone/iPad向けアプリとして登場。同年5月にはAndroid版アプリ、2012年10月にはWindows 8アプリが公開された。中でもWindows 8アプリについては「世界的な普及が見込まれるWindows 8向けにアプリを提供すれば、地球書店をさまざまな国で広めるチャンスになると考えた」とNTTソルマーレの安永健治氏は話す。

 だが、海外展開を視野に入れたアプリの開発には課題もあったという。最も懸念したのはサービスインフラの部分だ。「当社はこれまで、大量の物理サーバを使って電子コミックサービスを展開してきた。だが地球書店のWindows 8アプリの場合、開発期間が短く物理サーバを用意できるか心配だったほか、将来的に国内外からのトラフィックがどう変化するか予測できない点も不安だった」(安永氏)

 大量の画像をインターネット経由で配信する電子コミックサービスでは、日や時間帯によってネットワークトラフィック量が大きく変わる。また今後、地球書店の海外展開が順調に進めば、時差などによりトラフィック増減の予測がますます困難になることが予想される。そのため同社は、ITリソースを必要に応じて柔軟に利用できるクラウドサービスを、地球書店のWindows 8アプリのインフラとして利用することにしたという。

クラウドを「未来のためのプラットフォーム」に

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NTTソルマーレの安永健治氏(コミック事業部 サービス開発グループ)

 地球書店アプリの開発基盤に採用したのは、日本マイクロソフトのクラウドサービス「Windows Azure」だ。Windows 8アプリ開発との親和性を評価したほか、ミドルウェアなども含めて利用できるPaaS(Platform as a Service)である点や、各種オープンソースアプリケーションを利用できる点を評価したという。

 また、Windows Azure上で提供されているオートスケール機能も採用の決め手の1つになったという。「サービス規模が大きくなっても、オートスケール機能でリニアにディスク容量を増やしていける。そうした面で、アプリの将来を見据えながら開発していくためのプラットフォームとして扱いやすいと判断した」(安永氏)

 2012年1月にテスト版アプリの開発をスタートし、4月にWindows Azure上での開発を開始、10月に正式版をリリースした。また、地球書店アプリの開発経験を生かし、コミックシーモアのWindows 8アプリもWindows Azure上で開発。2012年12月に正式版を公開している。

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地球書店の海外向けカテゴリ

 オートスケール機能は既に効果を発揮している。安永氏によると、地球書店やコミックシーモアのような電子コミックサービスは、年末年始にトラフィックが集中する特徴がある。だが、同社が提供している2つのWindows 8アプリは、トラフィック量に応じて自動で仮想サーバのインスタンス数を拡張することで、初めて迎えた年末年始も安定的にサービスを提供し続けることができたという。

 また、「電子コミックサービスは夜間や休日にトラフィックが集中し、平日の昼間にはあまりアクセスされない特徴がある」と安永氏。オートスケール機能を活用し、アクセスの少ない時間帯には仮想サーバのインスタンス数を減らすことで、インフラ運用コストの削減も実感しているという。

 同社は今後もWindows Azure上でWindows 8アプリを開発、展開していく方針だ。「日本のコミックは海外でもファンが多いが、海外向けに電子コミックを展開している日本企業はまだ少ない。2004年からずっと電子コミックサービスを提供してきた当社こそ、新しいことに取り組んでいく必要があると考えている」(安永氏)

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