モンキービジネスの罠にご用心!From Netinsider(7)

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» 2000年11月14日 12時00分 公開
[Vagabond,@IT]

<vol.7の内容>

「ザ・クライテリア」

シリーズ最終回では、株式公開の際の「リードベンチャーの選び方」を取り上げています。ベンチャーキャピタル、キャピタリストの本来の役割をふまえて、どのような視点でリードベンチャーを選ぶべきかについて解説します


「働かないおじさん〜史上最強のモンキービジネス(前編)」

「NETINSIDER」より (2000年6月15日第60号掲載)
コンサルタント、VC、印刷会社、人材紹介会社……IPOの夢を売ってベンチャーを食い物にする迷惑なサルたちについてのコラム。前編&後編を一挙公開


「働かないおじさん〜史上最強のモンキービジネス(後編)」

「NETINSIDER」より (2000年6月22日第61号掲載)
もう、あなたはベンチャーころがしから逃れられない。公開やめますか?人間やめますか?




■■ ザ・クライテリア ■■




監査法人太田昭和センチュリー
公開業務推進部長(*) 田村義則

(5)リードベンチャーの選び方

ベンチャーキャピタリストに何を求めるか

 ベンチャーキャピタルの仕事は、(1)成長資金の調達を行うこと(2)技術を見つけること(3)CEOCFOをスカウトしてくること 等により、会社の経営を助け、会社の価値を高めることである。ベンチャーキャピタリストは、資金調達力のある人もなれるが、この3つの能力を兼ね備えている場合は、完璧な人といえる。会社がどんなことをベンチャーキャピタルに求めているかによって、それぞれのウエイトが変わる。

 成功しているベンチャーキャピタリストには、投資予定会社がターゲットとするマーケットの成長性を見極める目がある。二つ目には、自らも経営に参加し、その会社にふさわしい経営者をスカウトしてくる能力がある。三つ目には、株式公開までの計画を効率よく立てて実行する能力がある。四つ目は、投資先が、その業界で2位以下になりそうな場合、経営資源を集中投入して1位に持って行く努力をする。

キャピタルゲインを最大化するのがベンチャーキャピタルの本質

 ベンチャーキャピタルが組成するファンドは、ハイリターンを期待して投資する投資家を相手としているため、ベンチャーキャピタルとして責任を持って運用を出来る規模で行うべきである。お金が運用能力以上に集まっているファンドは、ベンチャーキャピタリストの「目利き」能力が落ちてしまうし、ベンチャーキャピタルがリードベンチャーとなるために株価を実力以上に釣り上げ、当面必要な額以上の資金を調達した投資先企業にあっては、資本利益率が低下するばかりか、放漫な経営を行いかねない。

 また、投資家は、期待利益を得ることができず、その後、ベンチャーキャピタルは、新たにファンドを設立しにくくなる。ベンチャーキャピタルの成功は、いかに利益を最大化するかであり、金をばらまくことではない。

株式シェアを与えるに見合う努力をしてくれる相手を選定

 我が国の場合、金だけが潤沢なベンチャーキャピタルが多く、経営に積極的に参加して、企業価値を高めていく支援活動を行っているところは少ない。金をばらまくだけのベンチャーキャピタルには、最近設立された事業系ベンチャーキャピタルにその傾向が強い。「ハンズオン」型の活動を行っているベンチャーキャピタルには、独立系に多く見られる。

 ベンチャーキャピタルにシェアを多く握られている会社は、株式公開後、それが売り圧力となって、株価形成がうまく行かないリスクが大きい。また、事業会社1社とそのベンチャーキャピタルに偏ったシェアをもたれている場合、その事業会社の業績に影響されやすくなる。会社がリスクを共有するに値する能力を持つベンチャーキャピタルをリードベンチャーとして付き合うことが肝要である。

(おわり)


(*)筆者は現在日本ファースト証券に在職



働かないおじさん〜史上最強のモンキービジネス(前編)
<2000年6月15日第60号掲載>




 汚い普段着で打ち合わせに出席しても、顧客満足より自分の満足を追求しても、ユーザーより上司のパーミッションを至上にしてパーミッションマーケティングを進めても、すべて、相田みつを先生よろしく「ネットビジネスだもの」の一言で許されてきた連中が、いよいよ社会的責任が問われはじめてきているということを先週書いた。

 しかし、円見江博士の最新の情報によれば、ネットビジネスよりもさらにいっそう児戯に等しいモンキービジネスがこの世に存在するという。

 人間の向上心には限りがない。その証明がここでも実践されている。上には上があるものだ。刑務所内で詐欺師が泥棒に説教するようなこのダメな実態を、いまここで明らかにしよう。

とにかく働かない「ベンチャーころがし」

 とにかく奴らは働かない。一般に、単位時間当たりの売上が高い仕事ほど、その業務の「モンキー度」は上がると言われているが、不労所得にも等しい暴利をむさぼるこの働かないおじさん達は、「ベンチャーころがし」と呼ばれる紳士達だ。

 東証マザーズ市場にかげりが見えてきたところで<註1>、このいわゆる「ベンチャーころがし」の弊害が、明るみに出始めた。奴らは「ころがし涼太」を更に下品にしたようなものと考えてもらって差し支えない。コンサルタント、ベンチャーキャピタル、印刷会社、人材紹介会社などなど、公開に関係する各社が暴利をむさぼるべく行っている、情実と利権と不合理と恫喝という、日本ビジネスの古典芸能によって完成された、独特の業界慣習である。

 簡単にいってしまえば、公開関係各社が、互いに公開意志をもっている(公開予定ではないところがミソである)会社を相互に紹介し、甘い汁を吸いあう構造である。公開意志のある会社があれば、ベンチャーキャピタルが資金を提供し、増資やら監査を「ころがし人脈」の会社に依頼する。増資となると、司法書士やら、証券代行やら、印刷会社(日本法令の株券用紙に印刷すればいいのに)に紹介して、バックマージンを得る。ワラントを発行するなどと言おうものなら、他のベンチャーキャピタルにワラント引き受けを頼んで、その手数料としてワラントまでいくばくかいただいてしまう。

「ベンチャーころがし」シンジケート

 しかし、公開業務の経験者が、上記の「ベンチャーころがし」シンジケート以外ではなかなか見つからないことも事実で、それゆえにころがしを抜けることができない。きわめて精緻巧妙にしくまれたシンジケートなのだ。

 これまで株式公開する会社は、売上も利益もある企業体力のある会社が中心だったので、このモンキービジネスのシンジケートに1〜2億円もっていかれても、耐えることができた<註2>。しかし、東証マザースやナスダックジャパンに出てくる年商数千万円の“夢工場”企業<註3>が「ベンチャーころがし」シンジケートにはまったとしたら、かなりの痛手である。ついでにいうと、それで上場できないことになったら、(それはそれで公共の福祉のためにはいいことかもしれないが)立ち直れないかもしれない。

 もっとも悪質なのは、最近急増しているベンチャー支援をうたうコンサルタントで、「ベンチャー支援」というと聞こえはいいが、実際には何もできないから支援などという口当たりのよい言葉でごまかしているだけで、公開を考える企業にとって必要なことは、資金調達、監査、資本政策などなどいろいろあるが、ベンチャー支援をうたうコンサルタントができるのは、机上の計画作りまでである<註4>。それでは、なぜ、知識もノウハウも大したことがない支援組織がはびこるかというと、とにかく素早くベンチャーに喰いつくのである。

「ベンチャーころがし」の手口

 ベンチャーキャピタルや証券会社が、まだ本格的に関与していない段階ならば、公開実務をほとんど知らないネットベンチャーの経営者と契約するのは、難しくない。早い時期に入って、株式、ワラント、ストックオプションなどをもらう契約を締結する。

 しかも公開を考えるようなベンチャー企業の経営者というのは、いい歳をしてそろいもそろって、“自分に都合のよい奇跡が起こりうる”などと本気で考えているような、白日夢の中で脳死している人たちばかりなので、瞳孔全開の彼らを丸め込むのは、赤子の手をひねるように易しい<註5>。彼らの多くは、ベンチャーキャピタルなどで、一応公開関連業務に近いところに所属していたことのある人間が多い。

 そこで、安いうちに株を入手し、あとは「まちぼうけ」よろしく待てばよいという間違ったビジネススタイルを骨の髄まで身につけている。そのため、うわっつらの言葉や人脈は豊富に持っている<註6>

 その後は、「ベンチャーころがし」シンジケートに、その会社を紹介してしまえば、あとは自動的に資金などがついてくる。しかも、支援組織には、紹介したシンジケート各社からバックマージンが来るので、言うことなしである。

 もちろん、中には、ちゃんとした支援組織もある。見分け方は簡単である。

(後編につづく)

written by 円見江博士 maru@vagabond.ne.jp

芦原 穣 ashihara@vagabond.ne.jp


◆◆ 註 ◆◆

<註1>

「主幹事証券が決まらない」「増資の際の株価が低くなる」「公開時期が見えない」などなど、マザーズ・バブルの頃はイケイケだったのが、かげりがでたとたんに、公開準備にさまざま支障がでてくるようになった

<註2>

ある意味、動物園で猿にやるバナナと同様に、数億円程度なら“御祝儀”として目をつぶれるような利益のでている太っ腹企業でないと公開できなかった

<註3>

経済的利益「以外」のものを生産する製造業者の事業所のこと。たまに間違ってお金をもうけることがあるが、それはソフトバンクにとってのソフト流通同様、本来の機能ではない

<註4>

もちろんそれくらいは、ベンチャーキャピタルでもやってくれます

<註5>

もっとも丸め込みやすいのが欲のある人間であることは、オレンジ共済、和牛商法など、過去のさまざまな事件を例にあげるまでもなく明らかである。ある意味では、「必ず自分にだけ幸運が来る」という誰の目にも非合理な仮説を信じなければ、1年365日ギャンブルに生きるようなネットビジネス常在戦場では正気を保てないのかもしれない。なお、自分の経営する企業が社会へ果たした貢献以上の対価を得ようとする欲のある薄汚い人間のことを、昨今のネットベンチャー業界では「夢のある若者」と表現するらしい。日本語は偉大だ

<註6>

なお、本当に実力のある人間は、「支援組織」などというお天道様をもまともに見られなくなるようなモンキーカンパニーに、いるはずがない。高給で外資に引き抜かれるか、自分でファンドを作って資金調達してベンチャーキャピタルをやるのである。株式会社猿であるところの支援組織は、所詮ひとりだちできない弱者連合で、その弱者連合が、さらに弱者である初期ベンチャーを喰い物にするのであるから、ダーウィンの学説はここでも正しいことが証明されている




働かないおじさん〜史上最強のモンキービジネス(後編)
<2000年6月22日第61号掲載>




 この世の物事の8割は、児戯に等しい騙しと、非合理・情実・恫喝などによって成り立っていることはきょうび高校生でも知っている。しかしネットビジネスは、ほぼ100%がイカサマで成り立っているのかもしれない。若きネットベンチャー経営者は、自分に都合のよい奇跡がその身に起こるなどという絵空事を、社会人になっても真剣に信じているような、あきれ果てた奴らであるため、モンキービジネスの格好のカモとなる。

 もっとも悪質なのは、最近急増しているベンチャー支援を謳うコンサルタントで、「ベンチャー支援」というと聞こえはいいが、実際には何もできないから支援などという口当たりのよい言葉でごまかしているだけに過ぎない。

 しかし、まともな支援組織とモンキーマジックの人たちを見分けるのはそれほどむずかしくない。以下に「404 Not Found」(c)の「モンキー基準」を公開する。ウキキ!

モンキー基準(1)【自分で資金をもっていて投資してくる】

 自らのリスクで資金を提供してくるのであれば、公開まで気を入れて関わってくれることを見込める。ベンチャーキャピタルなど、外部資金を紹介することだけ考えているようでは、最悪紹介料目当てということも考えられる。はっきりいって、本当に可能性のある事業であれば、自分でいくつかのベンチャーキャピタルに電話すれば、必ず親身に話を聞く会社がひとつはある。ないとしたら、誰にも理解できないほど革新的か、まるでダメかのどっちかである。

モンキー基準(2)【主幹事証券を決めることができる】

 マザーズでは主幹事証券会社がやる気がなければ公開することはできない。主幹事証券会社を決めることは最重要課題である。しかし、単なる証券会社の紹介ならば、誰にでもできる。主幹事になってもらうまでの段取り、ネゴシエイションができるかどうかが、重要なポイントである。支援組織と契約する際に、契約後、3ヶ月以内に主幹事証券が決まらない場合の損害賠償規定などを盛り込んでおくとよい。その規定を極度にいやがるようであれば、「わいは猿や!」と告白しているのといっしょである<註1>

モンキー基準(3)【PL/BS、DCF、株価算定書を作ることができる】

 これらは、公開にあたっての当たり前の実務といえるが、その知識と経験すらない場合がある。ためしに作ってくださいといってみて、その結果できないと言うようならば、理由の如何によらず契約するのは危険と考えられる。もっとも多い理由は「口頭でのコンサルティングや企業(証券会社など)の紹介業務のみを行う」ためということであるが、言葉をかえると口先だけ適当なことをいって、知人を紹介することでお茶を濁すだけともいえる。さらに最悪なのは、「それは自分の仕事ではないが、支援組織の他のメンバーで作れるので、費用を見てもらいたい」などと臆面もなくぬけぬけと言い出す場合である。こういうときは、「それがおまえの仕事でないなら、その品の悪いスーツを着て座って、愚にもつかずおもしろくもないトークをすることがおまえの業務なのか」とハッキリ問うべきである。株価を計算することもできない、BSを作ることもできない人間にコンサルタントが勤まるならば、リクルートや学生援護会の求人誌で時給800円で募集すれば、コンサルタントが見つかる<註2>

 以上に、あなたの会社に近寄ってきたベンチャー支援をうたうコンサルタントが、猿かどうかを判断する「モンキー基準」を三つ挙げておいた。まだひっかかっていない人はこれを参考に判断の基準にしてほしいし、すでに泥沼にはまっている人は目を通して、自分がすでに猿以下であり、霊長類の一員ですらなく、ドッグイヤーを地でいく負け犬であることを自覚してください<註3>。合掌。

 今からでも遅くない、終わらない悪夢から早く覚めて、何か耐久消費財とかサービスとかの付加価値を、自ら額に汗して製造して、それによって対価を得るというまっとうな仕事に戻って、我が国の生産性と株価向上のためにがんばって欲しい<註4>。公開は目標ではなく結果として後からついてくるものだということを、ほんとうはよく知っているはずだから。

「公開やめますか? 人間やめますか?」

(おわり)

written by 円見江博士 maru@vagabond.ne.jp

芦原 穣 ashihara@vagabond.ne.jp


◆◆ 註 ◆◆

<註1>

主幹事を決める、という条項を契約に盛り込むことは、おそらく難しいと思うが、それがダメでも3ヶ月で主幹事が決まらなかったら、とっととコンサルタントをお払い箱にできる準備をしておいた方がよい。具体的には、コンサルタント費用を一括で最初に払ったりしない、ワラントや株を与えないなどである。

<註2>

とはいえ彼らにも、立ち上げ初期の有望ベンチャーをいち早く見つけてフォローするという意味では、存在意義はある。あとは程度問題なのである。

<註3>

なお、霊長類に戻りたいCEOのために、業界の善意の任意団体が「ころがし110番」を開設することを計画中との噂である。

猿なあなたの「ころがした体験」、負け犬CEOの「ころがされ体験」を広く募集するらしい。「はい、もしもし、え?元ベンチャーキャピタルのコンサルタント?ウキー。モンキー指数すでに80%ですねえ? 株式をあげた???モンキー指数100%!!!よかったら、体験談を記事にさせてください」という具合にオペレーターがとてもやさしく対応する ・・・というのはもちろん嘘です。

<註4>

年商規模は、ネットベンチャーの10倍以上、利益もでているのに、ネットでないために公開できない会社の人間が、くやしまぎれにいうお約束の捨てゼリフも、たまには、正論である。


次回「From Netinsider Vol.8」の掲載は11月21日です。

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