次世代モバイルマーケティングの本質とはFrom Netinsider(35)

「Netinsider」は、ネットワーク業界の最新情報をレポートしている週刊のメールマガジンです。@ITでは、Netinsiderに掲載されたコンテンツの中から役立つ情報を特に厳選して、毎週読者の方々にお届けしていきます

» 2001年12月26日 12時00分 公開
[森 美知典,Vagabond/@IT]

価値主導時代の次世代マーケティング戦略分析
顧客の心をつかむ次世代モバイルマーケティングの実現に向けて

第3回 次世代モバイルマーケティングの本質とは

 モバイルビジネス自体への、過度なまでの持ち上げが一段落した現在、モバイルの本質を見据えたマーケティングが出現し始めている。

 モバイルマーケティングは今後、どのような方向に向かおうとしているのか。

 今回は、事例を挙げつつ、次世代マーケティングの仮説を提示してみたいと思う。

マス・マーケティングからコンテクスト・マーケティングへ

 前々回(モバイル時代、顧客価値観の変容)、顧客の価値観が、集団の中での均一なものから、おのおののコンテクストごとにいくつもの価値観にコミットしその価値観に共感する人々とだけ、その場限りの関係性を持つ方向に変容してきた、ということを述べた。

 その変容に合わせて、各企業も、あるコンテクストでの顧客の心を動かすための価値を訴求する仕組みを構築し始めている。

 従来のマーケティングであれば、ターゲティングはセグメント化した顧客グループであった。

 しかし、コンテクストを主眼においたマーケティングにおいては、商業施設内やイベント会場、ストリートといったシチュエーションでセグメント化し、そこに集まる人々をターゲティングしていくことが重要になってきたのである。

 コンテクストに主眼を置いたマーケティングとはどのようなマーケティング手法なのか。

 簡潔にいえば、あるコンテクストでの顧客の心を動かすための価値を訴求する仕組みである。

 「音楽を聴いている」「友だちと食事をしている」「映画を楽しんでいる」「街をブラブラしている」……などセグメントエリアという、場所でのセグメントだけでなく、ユーザーが置かれている状況を見据えて具体的アクションにまでドライブさせることを目的とさせるのだ。

 例えば、「商業施設でショッピングをしている」というコンテクストで何を訴求できるか、という観点で興味深い実験を行ったのが、「くるくるラフォーレ」である。

 これは、NECと森ビルが行った、ラフォーレ原宿での共同実験である。入場時に無線タグを配布、タグの番号よりユーザーのメールアドレスを登録し、そのタグからの信号によりユーザーの位置情報を把握し、リアルタイムにリアル店舗と連動した情報を携帯電話に配信する仕組みを構築した。

 この実験マーケティングでは、いわゆるお薦め情報を配布するにとどまらず、建物内での簡単なオリエンテーションのようなものを仕掛けていった。店舗ナビゲーションとコンテンツを組み合わせた企画が実践され、参加した10代後半から20代前半ユーザーへの有効性は実証されたようだ。

 また、商業施設というリアルとモバイルを結び合わせた事例に、弊社ごとで恐縮だが、イエルネットと株式会社パルコが開発した「インタび」(from ADJAM)がある。

 これは、スクリーンに映し出される映像コンテンツとモバイル向けコンテンツの同期を取り、双方向に情報提供を行えるシステムである。

 例えば、大型ビジョンを通じてテナント情報を提供すると同時に、来店客はモバイルでそれに合った個別の情報が取得できるというもので、「ショッピングをしにきた」という顧客のコンテクストに合わせたマーケティングを行うことができる。

 これらのように、コンテクストに応じて顧客にアプローチすると、どうなるか。

顧客のシチュエーションを見抜く必要性

 顧客のコンテクストを理解し、顧客の動機を確認してから訴求できるため、直接見込み客だけを狙うことができる。つまり、見込み客の発見と同時にその顧客に直接アプローチが可能になるのである。

 そして、見込み客に対するアプローチが可能になるとどうなるか。

 見込み度の高い顧客に対しリッチな情報を提供することができるため、購買までのラストワンマイルに結び付けやすい。そのため安価で効果の高い訴求が可能となるのである。

 さらに、こういったコンテクスト・プランニングはそのまま、価値にコミットしたいという動機を顧客に持たせ、その動機自体を囲い込み、単なる顧客から価値を持ったリピーターへと昇華させるということができないだろうか。

 企業は「商品」を売るのではない、その上にある「価値」を売るのだ、という言説はよく耳にするところだ。しかし、価値観自体を取捨選択できる顧客を相手にするためには「価値」を訴求するだけでは十分ではないのではなかろうか。

 顧客はもはや、いいモノだけでは振り向いてはくれない。

 「欲しいとき」「欲しい場所」「欲しい環境」で「価値」を得たい、そう考えているのだ。

 特に、顧客の手元にいつもある携帯電話を用いてマーケティングを行おうとするすべての企業は、シチュエーションを見抜き、それに沿った「コンテクスト」を提供する、「コンテクスト・プロバイダー」に変容する必要があるのかもしれない。

(「価値主導時代の世代マーケティング戦略分析」は今回で終了です )


Profile

森 美知典(もり みちのり)

イエルネット株式会社 プランナー

某モバイルコンテンツプロバイダーを経て2000年、イエルネットに入社。現在に至る。ストラテジック・プランナーとして、eビジネス構築の企画戦略に携わる。

イエルネット株式会社

企業のeビジネスを、企画戦略からインターフェイスデザイン、システム構築まで、トータルでサポートする。PCだけでなく、ブラウザフォンやPDAなど、マルチプラットフォームでの開発を得意とし、新時代のコミュニケーションデザインをミッションとして、さまざまな企業の業務支援を行っている。

東京都渋谷区渋谷2-2-10 青山H&Aビル4F

TEL:03-5464-2526(グループ直通)

TEL:03-5464-2525(代表) FAX:03-5464-2522

メールアドレス:mmori@yellnet.co.jp

ホームページ:http://www.yellnet.co.jp/


※本記事は、 【NETINSIDER】vol.132(2001年11月22日)に掲載されたものです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR