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» 2004年04月16日 00時00分 公開

トレンド解説(7):ITコーディネータの活用で開発費を1億円削減!

ITコーディネータ制度が発足して3年が経過した。ITコーディネータを活用し、大きな効果を上げている自治体や中小企業なども増えてきている。その事例とITコーディネータの活動状況を追っていこう。

[アットマーク・アイティ編集局,@IT]

「ITコーディネータ」という資格制度が誕生して、今年で4年目になる。本資格を認定する「ITコーディネータ協会」によると、2003年12月現在で認定者は4300人以上。当初は新しいIT資格試験として業界内での話題にとどまっている感あったが、ここへ来て実際に自治体や企業でのITコーディネータ活用事例が生まれてきた。またITコーディネータ自身が中心となり、地域ごとにコミュニティを作り、相談窓口を設けるなど活発な動きを展開している。以下、ITコーディネータの活動と事例について見ていこう。

ITコーディネータ制度とは

 まず「ITコーディネータ資格制度」について簡単に説明しておこう。もともとは1999年、通商産業省(現経済産業省)の中間報告の中で提言された「戦略的情報化投資による経済再生を支える人材育成」を受けて2001年に発足した制度だ。米国の情報化投資と比較し、日本も世界第2位の投資額を誇るものの、実際の経済成長率には格差が生じていることから、経済成長を促す「戦略的情報化投資」を支援する専門コンサルタントが望まれていた。こうした背景を受けて誕生したのがITコーディネータだ。

 ITコーディネータの特徴は3つある。1つは経営戦略からIT企画立案まで一気通貫で情報化投資を支援するプロフェッショナルであるということ。例えば経営コンサルタントであれば具体的なIT企画・開発に関する支援は薄くなるし、ITコンサルタントであれば経営戦略策定は専門ではない。これに対しITコーディネータは、「経営とIT両方の専門知識を有し、両者の橋渡しをする人材」という理念があり、資格取得に際して受ける研修のカリキュラムもこの理念に沿って組まれている。

 特徴の第2点として挙げられるのは、中小企業の支援人材として期待されていること。国内企業の8〜9割を占めるといわれている中小企業だが、経営体力や競争力の面から見れば脆弱な企業が多いのも事実だ。特に専任のCIOやIT企画担当者がいない中小企業にその傾向が散見される。また経営体質が弱いからこそ、CIOなどを置く余裕がないともいえる。

 このようにITの知識を持つ経営者や実務担当者が少ないことに加え、経営課題から具体的なIT支援へとブレイクダウンできる人材が枯渇していることも一因だ。そこでITコーディネータが、経営とITの両方の知識を駆使し、中小企業の情報化を積極的に支援する人材として期待を担っているわけだ。これが上述したように、「戦略的情報化投資を通じ、経済成長を促す」という設立背景につながってくる。なおITコーディネータは中小企業だけの専門資格というわけではなく、自治体や大企業など、組織体や規模を問わずにコンサルティングを行っている。

 またこの資格は一度取得すれば生涯有効というわけではない。常に最新の経営手法と技術を学び続けなくては、ITコーディネータの資格がはく奪されることもある。ちなみにITコーディネータ制度は、一定の研修を受けた後、試験に合格して初めて与えられる「ITコーディネータ補」と、その後に実務と研修ポイントを取得することで授与される「ITコーディネータ」の2段階制になっている。資格更新は1年ごとなので、継続的に学習を行い、認定を受け続けなくてはならない。このため、ユーザー企業にとっては一定水準以上の先端的なコンサルティングサービスが受けられるという利点がある。これが3番目の特徴だ。

経営」「IT」という偏りがないコンサルティング

 もちろん制度が発足してまだ4年目ということもあり、いくつかの課題も抱えている。例えばITコーディネータの資格取得者を見ると、大半がSIベンダなどのコンサルタントだ。ほかは税理士や公認会計士、経営コンサルタントなどだ。こうしたことから、「従来のコンサルタントがそのまま“ITコーディネータ”という肩書を付けただけではないか」と、不信感を持つユーザー企業も多い。

 ITコーディネータ協会もこうした意見を無視してはいない。研修カリキュラムは一定ではあるものの、各人の専門分野を見極めたうえで、補完知識をしっかりたたき込むように工夫しているという。実際にITコーディネータの資格を持つコンサルタントは「研修カリキュラムの中で、これまでの専門分野以外のこともしっかりたたき込まれるので、経営とITの両面からコンサルティングサービスができるようになる」と口をそろえる。「もちろん、各ITコーディネータが持っている専門知識を無視するわけではありません。将来的には、『ITコーディネータ(会計)』というように、各人の専門知識を主軸にした制度になっていくかもしれないし、またその専門分野を通じて経営とITの橋渡しをするコンサルティングができればいいと思っています」(ITコーディネータ協会)。

RFPの作成支援で開発費を1億円削減

 実際にITコーディネータを使って、どのようなメリットがあるのか。いくつか事例を紹介しよう。

 広島県福山市では、RFP作成やベンダからの見積もり評価業務をITコーディネータに委託することで、市町村合併に伴うシステム統合費用を1億円削減したという。同市では専門のシステムエンジニアが不在なうえ、1社のベンダにシステム開発を全面委託しており、開発・運用コストがかさむという問題を抱えていた。これが議会でも問題となり、民間のIT専門家を積極的に登用するなど、先進的な取り組みを推進。2001年に1名のITコーディネータを非常勤嘱託職員として採用し、IT調達フェイズの改善に取り組んだ。

 このITコーディネータはもともとシステムエンジニアとして長年実務を経験しており、その経験を生かしてベンダとユーザー(市)の橋渡し役として活躍。特に、あいまいで冗長になりがちなエンドユーザーの要求を分かりやすいRFPにまとめたおかげで、発注側/受注側双方の意思疎通がスムーズになり、手戻り開発や無駄な投資を防げるという効果があったという。

 また東海バネ工業では経営戦略を全面的に見直し、「売るため、もうけるためのシステム作り」を推進。この企画策定に一役買ったのがITコーディネータだ。同社はITコーディネータとともに戦略実現のための情報化戦略を検討。具体的にはWebサイトのリニューアルやグループウェアの導入、メールの活用、インフラ整備という4つのIT化を推進した。これにより、Webサイトからの新規顧客開拓や、在庫を金額ベースで11%削減しキャッシュフローの改善を実現した。このほかにも、昭和電機(大阪)では「顧客ニーズをくみ取り、より優れたサービスを提供する」という目的の下、ITコーディネータの意見を取り入れ、日報管理システムの改善など顧客ニーズを吸い上げる仕組みを構築している。

 こうした事例から、

  • ベンダのいいなりになっている状況を、どう打破していいのか分からない
  • どのようにRFPを作成し、ベンダのシステム提案書を評価・選択すればいいのか分からない
  • 経営戦略を実際のITに落とし込む際にアドバイスが欲しい

というニーズを抱えている企業・組織にとって、ITコーディネータの効果がいかに大きいかが分かる。もちろん、従来のITコンサルタントや経営コンサルタントの能力が不足しているわけではない。ただ、ベンダやコンサルティングファームから離れた中立的な立場でアドバイスが得られる、というのはユーザー企業にとって大きなメリットとなる。

ITコーディネータにコンサルティングを依頼するには

 実際にITコーディネータにコンサルティングを頼むにはどうすればよいか。

 ITコーディネータの資格取得者が増えるにつれて誕生したのが、地域のITコーディネータで組む「コミュニティ」だ。例えば東京都内だけでも、「ITC江東」「ITC多摩」「ITC武蔵野」「ITC新宿」……など、地域によってITコーディネータのコミュニティができている。現在、全国100近い組織が存在している。これらのコミュニティに連絡を取りたければ、ITコーディネータ協会のWebサイトに連絡先が掲載されているので、それを参照するとよい。また同協会のサイトでは、ユーザー企業の業種とITコーディネータの専門分野をマッチングさせる仕組みを用意しており、これを使ってITコーディネータを検索するのも一手だ。

 コミュニティの活動としてユニークなのは、行政機関や金融機関と提携し、新規顧客の開拓に努めていること。例えばNPO法人「千葉県ITコーディネータ」は、千葉興業銀行(千葉興銀)と組んで中小企業向けのIT相談を推進している。千葉興銀では、顧客である地場の中小企業経営支援強化に乗り出しており、その一環である情報化支援に関してITコーディネータを使うというわけだ。これはITコーディネータにとって新しい顧客開拓につながるとともに、ユーザー企業にとっても利用しやすい窓口となる。

 同じくNPO法人「ITC愛媛」はえひめ産業振興財団からの委託により、情報化戦略や投資にかかわる案件のアドバイスに務めている。また東京・江東区のNPO法人「ITC江東」は国や区と協力し、セミナーや研修会、ITコーディネータの派遣などを積極的に推進。このように行政機関を窓口とすることで、地場の中小企業経営者へ門戸を広げているコミュニティも多い。まずは公共機関に連絡してみるのも1つの方法だ。

 もちろん、コンサルティング費用やシステム投資などコスト面の心配もあるだろう。行政ではこうした意見に対し、「IT投資促進税制」や補助金制度などさまざまな措置を施行している。IT投資促進税制とは、情報化投資による取得金額の1割を控除、もしくは5割の特別償却を行うという内容で、投資税制としては過去最大のもの。またITコーディネータ協会自身がみずほ銀行・UFJ銀行と提携し、中小企業を対象にした「ITコーディネータ IT活用型経営革新ローン」を開発している。こうした制度を利用し、最小の投資額で最大の効果を上げていこう。

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