必要なIT投資を経営層に認めてもらうにはITガバナンスの正体(5)(4/4 ページ)

» 2004年05月21日 12時00分 公開
[三原渉(フューチャーシステムコンサルティング),@IT]
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経営層に「IT投資」だけ訴えてもダメ!

 毎年ほぼ同じ額の予算が申請・承認・消化されるのはおかしい。毎年、役員とIT部門間で議論がなされるべきなのだ。この議論をないがしろにすれば、「こんなはずではなかった」「効果が出ないのはIT部門のせいだ」という攻撃を食らうことは目に見えている。どのようなビジネスでも多かれ少なかれ、もはやITは必要不可欠になっている。

 だからこそマネジメント層には、「ビジネスを回すために、ITやIT構築を含むプロジェクトが必要である」と認識してもらう必要がある。同時に「その効果はプロジェクト後に、業務部門がいかにビジネスを推進できるかにかかっている」ことも理解してもらわなくてはならない。IT投資額を決定する場面で、マネジメント層と向き合い、こうしたことを議論できるITマネージャが必要なのだ。

 さらにIT投資(プロジェクト構築費を含む)プロジェクト投資については、業務部門トップ層の判断やコミットメントが必要となる。この必要性を、ITマネージャや業務部門からのプロジェクトリーダー、メンバーと、マネジメント層との間で共有すること。これが重要な点だ。投資に見合う効果や変化を実現し、その恩恵に預かるのは業務部門であることを忘れないでほしい。

 どのようにIT投資の全体をとらえるのか、どのようなIT投資の構成なのか、どのようにIT投資を策定するのか、そのIT投資が必要になるプロジェクト投資の全体像はどのように策定するのか、この辺りの投資管理手順もIT部門内で整理し、役員と共有しておきたい。“言うは易く行うは難し”である。1ついえるのは「独立・中立的な第三者の力を借りるとよい」ということだ。

 次回は、戦略投資の考え方・策定方法とモニタリング方法に目を向ける。システムのライフサイクルも考慮に入れながら、整理する。



役員との議論と理解活動に奔走している池袋マネージャとメンバーの議論が続く。


巣鴨リーダー:現場の人の意見だけではダメで、その業務をつかさどっている役員との情報共有が必要なのはよく分かるけど、それで投資に見合う効果が出るのかな。


大崎さん: 投資に見合う効果が出るかどうかは、ITを利活用する業務部門次第なんだから、結局業務部門が、業務部門の個々人が「効果を出す」とか、「この効果を出すためにこんな情報システムが必要だ」ってコミットしてくれなきゃ、わたしたちだってシステム構築する意味が分からなくなっちゃうでしょ。


秋葉原さん:そう、そう。いくら技術的に素晴らしい情報システムを作ったって、使ってくれなきゃ効果なんて出ないもんな。「こんなの使えないよ」なんていわれた日には、目も当てられないよ。業務部門ときちんと最初にその先のことを情報共有しておかないと「効果が出ないのはお前たちの作り方のせいだ!」なんていわれかねないもんね。この前のSFAもそうだったでしょう? 営業の日暮里さんだって、悩んでたじゃないですか。


池袋マネージャ: そうだね。だからいま役員とひざ詰めで、今後のITのことや中期経営計画で考えている目標値をどう達成するのか、その中での必要な業務改革と情報システムのことを話し合っているんだ。少し、社外にも目を向ける必要がありそうだ。他社はどうやってIT投資を整理して、計画に昇華しているのか、そもそも業務改革や情報システムを構築するプロジェクトをどうやって見積もっているんだろう。われわれのやり方は正しいのだろうか。


大崎さん:それって、役員からの質問ですか? 十年一日だったとはいわないけれど、確かに、自分たちのやり方に疑問を持ったことってあまりないですよね。もしかしたら、このことを神田取締役はいいたかったのかしら。自分たちのやり方をまずは疑え、ってことかしら。


巣鴨リーダー結局それって、まずはIT部門の業務改革をしろってことでしょ。神田さんが考えそうなこと・やりそうなことだよ。全社の改革をするためにはまずは自分の配下の改革、ってことだよな。少し腰を据えて、IT投資の整理の仕方/見積もり方法を見直すしかないかな。時間ないんだけどなぁ。



池袋マネージャは心の中で、「おや? 少し巣鴨リーダーの意識が変わってき始めたかもしれない」と思いながら、見積もり方法についてのディスカッションを始めた。



筆者プロフィール

三原 渉(みはら わたる)

フューチャーシステムコンサルティング株式会社 ビジネスディベロップメント&インターナショナル事業本部 執行役員。大手外資系コンサルティングファームを経て、2003年より現職。これまで外資系を含む50社あまりの企業の戦略・改革プログラム・プロジェクトの立案と実行、および効果のモニタリングに携わる。特に経営戦略と連動した全社改革プログラム・IT戦略立案に詳しい。改革推進の障害の1つであるトップ層とミドル層の意識・IT知識の乖離(かいり)を埋めるべく、両者への働きかけを精力的に手がける。ご意見、ご感想、問い合わせのメールは、mihara.wataru@future.co.jpまで。


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