「@IT情報マネジメント」は、企業情報システムのマネージャ層(以下“情報マネージャ”)に焦点を当てたコンテンツ/サービスを提供するWebサイトとして、2003年11月に開設された。果たして現在の情報マネージャたちは、勤務先のビジネスや情報システム部門について、どのような問題意識を持っているのだろうか? 第1回となる読者調査の結果から、その状況をレポートしよう
初めに回答者のプロフィールを把握するため、読者が勤務先の情報化にどのような立場でかかわっているのか聞いた結果が、グラフ1だ。今回は企業情報化のイニシアチブを握る3つの立場(「情報化を主導する経営者/役員」「情報化を企画する戦略スタッフ」および「関係者間を調整して情報化を推進するリーダー」)の選択者=合計で全体の36%を、“情報マネージャ”と定義する。これら情報マネージャと「システムを構築/管理する技術者」の意識の違いを対比しながら、以下の項目を見ていこう。
そもそも情報化とは、問題課題のための手段である。では読者の勤務先において、現在解決が望まれているビジネス課題には、どのようなものがあるのだろうか? まず情報マネージャ層の回答を見ると、「社内ビジネスプロセス/業務フローの効率化」「投資対効果(ROI)の明確化/業務コストの削減」および「ビジネス環境変化に対応した柔軟な事業開発/再編成」が、トップ3課題となった(グラフ2緑棒)。ムダのない/スリムな経営体質を培い、変化に適応することで、企業の生存能力を高めようとする情報マネージャの意思が表れているようだ。
一方技術者層では、「従業員の生産性の向上」、「顧客満足度の向上/顧客との関係強化」など、より現場に近い視点に立った課題が上位に挙げられている(グラフ2黄棒)。もちろん企業ごとに状況は異なるだろうが、企業内の立場によっても、ビジネス課題の捉え方に大きな違いがありそうだ。
では上記のようなビジネス課題を解決するために、企業の情報システム部門には、いまどのような役割が求められているのだろうか?
再び情報マネージャ層の回答に注目すると、「全社的なシステム基盤の整備」がトップに挙げられ、「要求変化に応じたシステム構成の柔軟な変更/拡張」がそれに続いている(グラフ3青棒)。グラフ2で問題意識が高かった“ビジネスプロセスの効率化”や“柔軟な事業再編”を実現するためには、これまで部門や業務単位で独自に構築されてきた各種システムの連携/統合が必要となる。しかし、個別最適化されたシステム間の整合性を後追いで調整する過程には、多くのリソースが費やされる。全社的な共通基盤の整備と、その上でシステムを構築/疎結合することは、変化の時代を生き延びる企業の情報システム部門にとって、今後最も重要なミッションとなりそうだ。
ここでシステム部門のミッションに関する、情報マネージャ層と技術者層の意識の合致/差異を、もう少し深掘りしよう。まず両者の意識が接近している項目としては、「情報セキュリティ管理体制の強化」および、システム開発/運用・管理・保守に要する「コストの削減」が挙げられる。これらは社会的な問題として表面化しており、立場を超えた共通認識が得られやすいものと思われる。
一方、先述した上位項目以外で両者の差を見ていくと、技術者層では「ITインフラ・サービスの提供/改善」、情報マネージャ層では「売り上げや生産性向上につながるシステムの企画/提案」および「経営や業務に役立つ指標/情報の迅速な提供」のポイントが、それぞれ高くなっている。現場の技術者としては“インフラの安定した提供”だけでも大変なミッションであるが、情報マネージャの立場からは、さらに“社内に付加価値を提供するサービス主体”としての情報システム部門像が期待されているようだ。
今回の調査では、読者が今後@IT情報マネジメントに期待するコンテンツ/サービスのテーマも聞いているので、後半ではその結果を紹介しておこう。
まず「IT戦略/情報化投資」分野の期待テーマを聞いた結果が、グラフ4だ。情報マネージャの半数以上が「経営戦略とIT戦略の整合性/ITガバナンス」、「IT投資効果の定量的評価」および「エンタープライズ・アーキテクチャ」への興味を示しており、技術経営(MOT)の実現に向けた情報ニーズが高まっていることが分かる。
続いて「システム構築」分野では、情報マネージャ/技術者ともに「情報セキュリティポリシー/セキュリティ監査」をトップに挙げている(グラフ5参照)。また情報マネージャ層では、それに続いて「基幹システムのオープン化/レガシー・マイグレーション」「システム統合/プロセス管理」「サービス指向アーキテクチャ(SOA)」といった、“変化に対応するシステム構築手法”への興味が、上位に並んでいる。
最後に「ITスタッフ育成」分野について尋ねたところ、ここでは技術者層が「ITスタッフが身に付けるべき技術スキル範囲」に高い興味を示したのに対し、情報マネージャ層では「ITスタッフのためのビジネススキル」がトップに挙げられたのが特徴的だ(グラフ6)。
ある製造業勤務の情報マネージャからは、「ビジネスとITを関連付けて課題解決策を発見するためのスキルアップについて知りたい」 とのコメントも寄せられた。上述したように、技術経営時代の情報システム部門には、経営層やユーザー部門に対する積極的な提案/付加価値提供が望まれている。そうした“新しい情報システム部門”を実現するためには、技術スキルとビジネススキルを併せ持ったスタッフの育成が、急務となりそうだ。
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