IP電話導入でコストは削減できるか?トレンド解説(9)(2/2 ページ)

» 2004年08月05日 12時00分 公開
[アットマーク・アイティ編集局,@IT]
前のページへ 1|2       

別部署がIT部門をサポート

富士通 アウトソーシングビジネス推進本部 マーケティング統括部 ネットワークサービス推進部 鈴木強氏

 IP電話導入後も、総務部の役割は事業部と、IP電話を実際に管理する部署とのインターフェイスを務めることだ。だが、IP電話の管理部門は外部業者からIT部門になる。ネットワンシステムズがユニークなのは、このIP電話の管理を2段階で考えていることだ。IP電話の導入プロジェクトから導入後初期の運用管理は同社で営業の技術サポートを行っている応用技術本部が行う。ネットワンシステムズはIP電話のシステム構築も手掛けているだけに、導入初期だけ応用技術本部がIT部門をサポートする。応用技術本部

第2技術部 第3チーム チームリーダー 延坂成人氏によると、IP電話導入直後は障害や事業部門からの問い合わせが多く、応用技術本部の出番が多かったという。

 ネットワンシステムズでは、IP電話の導入プロジェクト終了後に運用管理をIT部門に移す。「最近はサポートはほとんどしていない」(延坂氏)といい、IP電話の運用は安定してきている。延坂氏は「管理のスキームができれば担当部門の負担はそれほど大きくない」と説明した。IP電話をうまく管理していくコツは、従来の電話管理の枠組みを生かしながら、事業部門とインターフェイス役、実際の運用管理部門との連携のスキームを作ることにありそうだ。富士通のアウトソーシングビジネス推進本部

マーケティング統括部 ネットワークサービス推進部 鈴木強氏はIP電話の導入に関して「IT部門とシステム・インテグレータだけではIP電話は導入できない」と述べ、総務部や外部業者も含めた連携が重要と指摘した。

 ただ、ネットワンシステムズのケースでは、自社に十分な技術力があることがIP電話に関するコストを吸収したといえるだろう。IT部門のリソースがなかったり、技術的に不得手だったりする場合はサービス会社などに運用管理を委託することになる。IT電話が生み出すコスト削減効果、業務効率化と、業務委託などコスト増の要因のバランスを取る必要があるといえる。

 中小企業でのIP電話の運用管理はどうなっているのか。フリービットが提供するIPセントレックス型のIP電話サービスは従業員が30人以下の中小企業が対象のサービス。そのような企業では「そもそもIT部門自体がない」と同社の経営企画室

広報担当 リーダー 田嶋直樹氏は話す。従業員が30人以下の企業では専任の担当者を置かずにコンピュータやネットワークに詳しい者が兼任で管理するケースが多い。

IPセントレックスで管理負担はゼロ?

フリービット 広報担当 リーダー 田嶋直樹氏

 フリービットがIP電話を導入したあるソフト開発の企業は従業員が15人。ソフトウェア事業部長が電話関係を管理していた。IP電話導入の目的はコスト削減。以前は15人の社員に対して2回線しか電話がなかったが、IP電話でコストを削減したことで10回線に増やすことができたという。

 IP電話を導入してもソフトウェア事業部長の仕事は増えなかった。内線番号の管理はゲートウェイに接続したPCや電話機から可能。電話機を増設する場合でもフリービットに連絡し、PCでネットワークの設定を変更。電話機をゲートウェイに接続するだけで通話を開始できる。社内にIP-PBXを設置せずにネットワーク側で電話の機能を提供するIPセントレックスサービスだからこその管理の容易さといえるだろう。田嶋氏によるとフリービットの顧客には従業員が5人の企業もあり、やはりコスト削減目的でIP電話を導入したという。IPセントレックスに関する限り、IP電話導入で運用管理の負担が増加とはいえないようだ。

 コスト削減効果が当初注目されたIP電話。しかし、実際に導入すると運用管理のスキームが変化するなど組織内の課題が浮上するケースがある。それまでの電話の管理体制がどうなっていたのか、IT部門にIP電話を管理するリソースがあるか、コスト削減効果だけでないIP電話の戦略的な利用を検討しているか、などIP電話導入前にIT部門が考えることは多そうだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ