中小企業でERP導入が急増、3カ月導入も可能に特集:ERPトレンドウォッチ(1)(2/2 ページ)

» 2004年11月05日 12時00分 公開
[大津心,@IT]
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増えるビックバン導入

――ERP導入というと経営改革という側面があるが、導入企業側に「ITを利用して経営改革を行っていかなければならない」という意気込みを感じているか

佐藤 従来の日本企業では、ERPがカバーする領域が大きいだけに、それに伴うリスクの大きさを考え、「改革」といえるほどのシステム改変ができていなかった。

 しかし、昨今当社を含めてERPに関するコンサルティング能力が格段に上昇している。これは、ノウハウや経験、技術、実績などを積み上げたためだ。その結果、数万人規模の大企業では難しいものの、1000?2000人程度の中堅企業においては「欧米に見られる『ビックバン型』の、ERPのすべての機能をあらゆる業務に一気に導入して改革する」というケースが増加してきている。

 ERP導入コンサルティング力の向上は「導入期間」にも表れており、5年前であったら「2年以内」が短期導入の区切りであったが、最近では「1年」でも長く感じる。前出のテンプレートを用いた例では、3カ月で導入を完了させた例もあるくらいだ。ただし、テンプレートを用いて導入する場合には、「どのテンプレートが合うのか、見極める力」が一番重要だ。

――ERPの運用で重要な点はどこか?

佐藤 ERPは、導入時に何らかの目的を持って導入されるものだが、導入してから2?3年後に、新しい経営課題によって変更の必要性が生じてくることが多々ある。そのときに、再度すべてのERPモジュールを導入し直さなければならないわけではないが、正しい知識を持ったコンサルタントがピンポイントで修正したり、アドバイスしなければならない必要性が出てくる。ERPはアプリケーションを保守するだけではなく、維持管理することが日ごろから必要であり、ユーザーがERPを使用しているときに出てくる諸問題に対して、適宜アドバイスや対応をしていくことが必要だ。当社はこれを、アプリケーション・マネジメント・サービス(AMS)として提供している。

 例えば、事業部単位で動いている企業の場合、会計手法も異なるため気付くとR/3が10システムも別々に入っている場合がある。このような場合、当然「統合」も視野に入るほか、「アウトソーシング」も検討することになるだろう。また、その際にバージョンアップも行うと効率的である。また、プラットフォームの見直しも必要だ。

 このように、システム変更時にはさまざまな選択肢が存在しているが、それをすべてユーザーに提供できるようにこちら側も選択肢を用意しておかなければならない。

――運用面で情報システム担当技術者に負担が掛かっていると聞くが?

佐藤 業務改革主導でERPを導入するときに問題となるのが、「IT部門の参画が後手に回ってしまう」という点だ。一般的には「業務改革」という目的が先に存在し、ERPを導入している。このため、システム面の検討が不十分なことも多く、導入後の運用の段階で情報システム部門の技術者などに負担が掛かるケースが見られる。

 この問題を解決するために、経営企画段階で技術者も交えてDBなどのミドルウェアも含め、「運用面も考えて」ERPを導入していくことが重要だろう。また、業務改革だけが先行して業務運用が改革されていないことも多く、ユーザー視点に立った運用の仕組みづくりや体制がこれからますます重要になる。先述のAMSは、この分野を最も得意とするところであり、他社に先駆けて多くの実績をあげている。

 また、導入済みの企業においても運用で困っているユーザーの場合には、当社が幕張に用意しているデータセンターにおいて、ホスティングとして運用をIBMが担うサービスを提供している。このようにサービスメニューの拡充を図り、上流の戦略コンサルティングから、運用・保守まで、一貫して提供しているのがポイントだ。

――SAP NetWeaverが登場したことによる影響は?

佐藤 世間では、「IBMのWebSphereと、SAP NetWeaverが競合するのではないか?」といわれるが、当社ではまったくそのようには考えていない。「お客様の既存システムやIT戦略に合わせて最適な提案を行う」というスタンスだ。

 「SAP TechEd '04」では、「当社のミドルウェアがいかにR/3と連携できているか」について講演する予定だ。お客様のIT資産におけるR/3関連と、そのほかのシステムのポートフォリオにおいて、IBMのミドルウェアが果せる役割について訴えたい。当社のミドルウェアとは、運用・管理ツールの「Tivoli」やWebアプリケーション構築のための「WebSphere」などだ。

 ユーザーが困っているのは、「巨大なDBに接続する際の運用」に関する問題だ。その点、当社では古くなって閲覧されなくなったデータなどを、DB上から移動するためのアーカイブツール「Common Store for SAP」を用意している。ポイントソリューションではなく、R/3とそのほかのシステムのアーカイブを一元的に管理するときに有効なツールである。

 そのほか、数十に分割されたR/3とほかのシステムを一元的に管理できるツールであるTivoliも有効だ。このような、「R/3の運用ツール」が導入されているユーザーは、R/3導入ユーザーのわずか二十数%しかいないのが現状だ。このような、運用ツールをうまく使えていない、運用ツールの存在を知らないユーザーに対して、当社のミドルウェアを紹介したい。

――IBMのSAPコンサルティングベンダとして優位点とは?

佐藤 最も大きなのは、「UNIXやWindowsなどプラットフォームなどを問わず、R/3に適用できるすべての製品を導入からサービスの運用まで提供できる唯一のベンダである」点だ。

 また、当社自身が業務改革のためにR/3を基幹として採用し、世界最大規模のユーザーとして運用してきた実績がある。「ハードウェアやソフトウェアを問わず、10年間自分で苦しんで得たノウハウ」は当社以外提供できないものだろう。つまり、改革の実績と検証が済んでいるソリューションを提供できるベンダだ。

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