エンドユーザーの現場や顧客が抱えている問題点を明らかにすることが情報エキスパートの役割だ。では、“問題を発見する能力”を高めるにはどうすればいいのだろうか?
今回は問題発見力の強化に必要なスキルのうち、“質問力”(ヒアリングスキル)についてお話しします。
前回は問題発見力の強化がトレーニングによって可能なことをお伝えしました。具体的なステップは次のとおりでした。
このうち「問題発見力」がどのようなスキルから成り立っているかについて、次の4つから成り立っていることもお話ししました。
問題発見力の構成要素
その中で小学生の理数離れやセンター試験を例に取り、私たちが理解力について得意ではなく、問題発見が苦手な現代の日本人についてお話ししました。しかしある小学校での国語力の強化により理数離れを食い止め、理解力を強化できたこともお話ししました。
そして小学生が理解力、論理力を高めることができるならば、私たちビジネスマンも問題発見力に必要なスキルを高めることにより、問題発見力(つまりは問題可決力)を早期に高めることが可能だと結論付けました。
問題発見力強化の第一歩は、相手の話をよく聞くことから始まります。ソリューションとは顧客(相手)の困っていることを解決する方法や解決そのものを指します。ソリューションを提供するためには相手の困っていることをしっかりつかみ上げることが必要で、そのために相手の話をよく聞くというヒアリングが非常に重要なポイントになります。
よく「コミュニケーションは難しい」という話を聞きます。「時間を取って部下に十分説明したはずだったのに、実際に仕事をさせてみたら意図と違う行動をしてしまう」「システムの仕様について十分説明したにもかかわらず、後になってから顧客は仕様を十分理解していなかったことに気が付いた」などの経験がありませんか。こんなとき、つい「コミュニケーションというのは難しいもんだなぁ」とつぶやきたくなります。
コミュニケーションは相互の意思疎通が目的ですから、相手の話を聞くことも大切ですが、自分の意思や意見を伝えることも必要です。しかし、これは“相手のいっていることを十分に理解したうえで”という条件がついています。つまり、ヒアリングなくして質の高いコミュニケーションはあり得ません。質の高いコミュニケーションなくして、相手が抱えている問題を発見することはできない。問題を発見できなければ、ソリューションの提供もできない、という負の連鎖に陥ってしまいます。
負の連鎖のスタートであるヒアリングを十分に行うことができれば、それを防ぐことができます。そのため、まずは「よく聞くこと」から始まるとなるわけです。
自分の考えがまとまらずモヤモヤしているとき、「仕事ができる上司」と評判の部長と話をすると、自分なりの考えがはっきりと見えてくることがあります。このとき「仕事ができる上司」がしてくれたのは、回答を提示することではなく、適切な質問により私の問題を浮き彫りにすることでした。コミュニケーションが難しいのは、相手自身が気付いていない真の問題点や意図を引き出すことができないことが原因です。質問は話し相手の考えを深く、広く掘り起こし整理する効果があり、コミュニケーションを深めます。
ここで皆さんに質問です。
皆さんは先週の昼食に何を食べましたか?
即答できた方、すごい記憶力です。参りました。
ただし、普通の人は先週の昼食のメニューは覚えていないですね。私も覚えていないです。
そこで、さらに質問です。(以下、先週の私です)
「そういえば先週はA社向けシステムの運用設計をしていて、毎晩遅くまで大変だったな」
どこかへ出張や外出はありませんでしたか?
→「先週の水曜日は、客先に仕様の打ち合わせに行っていたんだ」
など、仕事に関する質問をするとそのことは覚えていたりします。
→そういえば「客先との打ち合わせが終わった後、品川駅で営業と打ち合わせしながらランチを食べた」
→「あっ、そういえばランチは中華だった」
「あのときのエビチリソースは結構おいしかったなぁ」
ビンゴ!
先週の昼食は品川でエビチリソースを食べたのでした。(皆さんは思い出しましたか?)
最初の質問時点では、昼食のメニューは確かにまったく思い出せませんでした(ちょっと変な日本語ですね)。
しかし、先週行っていた仕事に関連する質問をきっかけに、私の記憶が少しずつよみがえり、最終的にはメニューを思い出したというものです。
このように周辺の事柄について質問されるうちに、忘れかけていたことを思い出したり、気が付いていないことに気付いたりすることがあります。
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