続・いまのIT組織でいつまでやっていきますか?何かがおかしいIT化の進め方(16)(3/4 ページ)

» 2005年05月24日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]

IT部門の将来

 IT部門は将来どのような姿に収斂(しゅうれん)させてゆくべきだろうか。

 もちろん各社それぞれに背景や考え方があるし、現在の実態によっても行き着く先は異なるであろうが、特に共通的と思われる基本問題を以下に考えてみる。

(1)統括(ガバナンス)機能

 情報システムという実態がある限り、それを統括して管理する最小限の組織機能は必要である。具体的には、前述の「集中と分散はなぜ繰り返すか」で記した、予算管理、投資決裁手続き、投資評価手続き、IT化の役割の分担、機器やソフトの標準、システム構成法の標準、データ体系・コード体系などの標準、コスト把握の仕組みなど、管理のためのインフラと技術的インフラの整備やオーソライズと、それらの管理・運用がある。

情報には“複数の情報を組み合わせることによって、新たな情報価値が生まれてくる”という特性がある。このデータは「この問題のこの目的に、このような使い方をするもの」と、いまはそう考えていても、時間がたち知恵が付いてくれば、別のデータを併せて使いたいという要求が生まれてくる。あるいは別のデータと組み合わせて見ることが、新たな問題の発見や問題解決につながることもある。データには本来“集まってくる性質”があるのだ。

 このような観点から、全社のデータを等しく利用できる体系にしておく重要性が、今後ますます求められる。この動きを阻害しないインフラ構造を維持していかなければならない。統括機能として特に留意の必要な問題である。

 ユーザー企業としてITアーキテクチャ(方式設計・構成設計)の問題は、個別のシステムやプロジェクトで扱う問題としてではなく、標準化の問題として、そこにエネルギーを集める方が、システム的にも人的資源の観点からも全体最適につながると思う。

 なお、普通のユーザー企業が完結した技術機能を内部に持つことは、一般的に不可能であろう。人材育成投資の回収が難しい専門技術要員を内部に極力抱え込まないため、技術力の代わりに、技術や商品の評価力と人をコーディネートする能力を身に付け、外の専門家の知識を活用するという方法が考えられる。

(2)企画機能・企画支援?業務改革支援機能

 個別のアプリケーションシステムの企画は、現在でも多くの場合、実質的にはそうであるように、本来的には事業・業務部門が主担する事項である。これをより明確にしていく必要がある。

 ただし、課題によっては企画をまとめ上げ、また具体化するために、ITや業務改革の専門的立場からの支援が必要な場合がある。IT化課題の多くは業務改革の課題である。業務プロセスレベルでの改革の方法を事前に明確しておかなければ、本物の企画にはならない。このような“質”を問われる仕事では、同種の仕事をする仲間同士で切磋琢磨できる環境が必須である。また、そのような専門的な作業要員は、1カ所にまとめて抱えておく方が全社の組織効率面から得策という場合が多い。

 企画の実行段階では、このチームのメンバーが業務要件の取りまとめと、プロジェクトの支援や管理に当たれば有効だ。

 社外の専門家(コンサルタント)には、分析力にたけた人が多い。しかし、問題解決を具体的に考える構成の段階では、必要となる「業界の内情や自社の経営戦略、業務プロセスの実態や社内の人に関する理解度や情報量(特に暗黙知)」によって、社内にいる人が圧倒的に有利な立場にいる。

 ITの分野においても、“質”(洗練度、高度さ、品位、倫理性といったグレードとしての質を意味する)が競争力(戦略的価値)を構成する要件として重要になる。この“質”の向上は情報システムと情報を使う人の相互啓発・協働(コラボレーション)を通じた組織文化の中で形成されてゆく。

 これには自社の中核的(戦略)業務プロセス、つまり固有分野に特化して深耕した技術やノウハウが重要になる。その気になれば、日常的にその問題に継続的に関与が可能な社内の人が格段に有利な分野だ。

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