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» 2005年05月31日 12時00分 公開

企業システム戦略の基礎知識(7):システム発注で後悔しない契約書のチェックポイント (2/2)

[青島 弘幸,@IT]
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検収条件──判断基準の設定と事前の合意

 納品後は、速やかに検収しなければならない。そして、検収条件を満たせば支払いとなる。いつまでに、どんな条件で検収を完了するかを契約時点で取り決めておく。自社の資本金額と業者の資本金額の大小によっては、納品から60日以内に支払いを完了しないと下請代金支払遅延等防止法に抵触する恐れがあるので注意が必要である。

 先に述べた納品の仕方により、検収までに必要な作業が異なるので効率よく検収作業ができるように、あらかじめ検収内容を決めておかなければならない。基本は、仕様書に記述した要求事項に対してシステムが正しく動作するか否かをチェックすることになる。

 しかし、検収時点で完全にシステムの動作を確認することは、現実的には不可能である。検収後に実施する運用試験やリハーサルで不具合が発見されることは少なくない。さらには、1カ月後や半年後に不具合が発生することもある。特に期末作業や年度末作業などの大規模な処理では、検収時点で本番に相当するテストデータを準備するのも大変である。そうかといって、本番で処理が正常に完了するのを確認できるまで検収を待ってもらうわけにもいかない。どこかで割り切りが必要である。このような検討をする場合にも、要求事項を「なくてはならない機能、あったらいいな機能」に選別してリストアップし、優先順位を付けておくのがよい。

 どんなレベルで検収するかは、システムの規模と本番での不具合発生時の損失などリスクを考慮して妥当なレベルを、業者と事前に協議する必要がある。ここをあいまいにしておくと、不具合があるのに支払いをしてしまったり、逆にいつまでも検収を遅らせて支払い遅延でペナルティを科せられたりとトラブルが発生する。

瑕疵担保期間──不具合発生時の救済方法の定義

 検収時点ですべての不具合を発見できる可能性が低いとなると、検収して支払いを完了した後に不具合が発生した場合の救済手段を用意しておかなければならない。これを瑕疵(かし)担保期間といい、民法では、一般に1年間を瑕疵担保期間として認めている。検収後に納品物に瑕疵が発見された場合、1年以内であれば、業者は無償でこれを修理または交換しなければならない。

 逆に、この瑕疵担保期間を過ぎた後に不具合が発見された場合は、たとえ瑕疵であったとしても、通常は有償で対応ということになることも忘れてはならない。そのため、システムの規模が大きい場合には、瑕疵担保期間を長めに契約しておけると安心である。

 さらに、不具合が発生した場合に、それが瑕疵であるか否かを判定する条件まで取り決めておければなおよい。現状では、瑕疵であることを委託側が証明しなければならないのが通常である。当然ながら業者は、なかなか瑕疵であることを認めたがらない。瑕疵と認めるとそれが瑕疵担保期間内であれば、無償で修理しなければならないからだ。

 瑕疵であることを証明するのは、内部的な処理を解析したり現象を分析したりするなどして、かなり高度な専門知識が必要となる。そこで、できれば内部処理まで言及せずとも、仕様書の要求事項に対して正しい結果が得られないという現象が再現できれば瑕疵とするというようにして定義できれば、かなり安心である。ここで、委託側の要求仕様書など作業指示に不明確な点や漏れがあった場合には、瑕疵とは認められない。そのためにも仕様書は、あいまいさのない、質の高いものにしておきたい。とにかくシステム構築においては、ソフトウェアの仕様書からあいまいさを完全に排除できないという宿命を背負っている限り、契約には慎重に慎重を重ねても、まだ足りない。

 業者とトラブルを起こして最後に損をするのは、結局、委託側である。仮に余分にコストと期間を投入して、なんとか稼働にこぎ着けたとしても、あるいは、システム構築を途中で断念したとしても、最小の投資で、最大の効果を生むシステムを構築することは、到底できなくなってしまうのだ。

 次回は、プロジェクトの進ちょく確認について解説していこう。

著者紹介

▼著者名 青島 弘幸(あおしま ひろゆき)

「企業システム戦略家」(企業システム戦略研究会代表)

日本システムアナリスト協会正会員、経済産業省認定 高度情報処理技術者(システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、システム監査技術者)

大手製造業のシステム部門にて、20年以上、生産管理システムを中心に多数のシステム開発・保守を手掛けるとともに、システム開発標準策定、ファンクションポイント法による見積もり基準の策定、汎用ソフトウェア部品の開発など「最小の投資で最大の効果を得、会社を強くする」システム戦略の研究・実践に一貫して取り組んでいる。趣味は、乗馬、空手道、速読。

システム構築駆け込み寺」を運営している。

メールアドレス:hiroyuki_aoshima@mail.goo.ne.jp


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