「ITスキル標準(ITSS)」が発表されてから2年以上経過し、ベンダ企業では人材育成や人事評価制度などへ反映し始めている会社も見受けられる。一方のユーザー企業側における活用状況や、認識はどのようになっているのだろうか。この連載では、ITスキル標準の問題点・課題や、ユーザー企業における利用価値、学生向けの活用提案まで、幅広く紹介していく。
@IT情報マネジメントの読者の方であれば、「ITスキル標準(ITSS)」はよくはご存じだと思います。2002年12月にバージョン1.0が発表され、はや2年半が経過しました。すでに、多くのITサービス企業を中心に、このITスキル標準に基づく「スキル診断」や「研修カリキュラム」が導入されており、それぞれの組織における人材育成カリキュラムや人事評価制度への反映といった取り組みが始まっているようです。さらに、個々のIT技術者におきましても、自らのキャリアパスに関してこのITスキル標準をベースとした診断を受け、今後目指すべき道を探っているといった方もいらっしゃるかと思います。
ここでもう1度、ITスキル標準についておさらいしてみましょう。ITスキル標準は、ITスキル標準センターにおいて以下のように定義されています。
「各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標。産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な『ものさし』(共通枠組)を提供しようとするもの」(ITスキル標準センターホームページより)
そして、このITスキル標準を活用することにより、
「企業戦略に沿った戦略的な人材育成・調達を行う際の目安となる。独自の取り組みによってすでにスキルに関する何らかの基準を持つ企業においては、スキル標準との対応関係の整理を行うことにより、自社の基準の客観的な位置付けを把握することが可能となる」(同上)
とうたわれています。
ここで注目してほしいのは、この活用例は情報サービス産業(提供側)のみならず、「情報システム部門を持つ一般企業を含む」(ユーザー側)と明記されている点です。つまり、ITスキル標準センターとしては、ITスキル標準を一般のユーザー企業でも活用してほしい、あるいは活用可能であるという意識がうかがえるのです。
ITスキル標準は上図のように、11職種38専門分野に分けられており、それぞれがレベル1からレベル7までの段階が設定されています。このスキルフレームワークは、直感的に分かりやすく、また大変上手に作られたものであると思います。ただし、このフレームワークがあまりにもインパクトが強過ぎて、ITスキル標準というとこのフレームワークのイメージだけが先行しているきらいがあります。その結果、ITスキル標準をよく理解しないまま、このフレームワークのイメージだけでさまざまな判断をすることが、往々にして起こりがちなのです。
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