企画書作成の難しさと酔った男女の行方(第7話)目指せ!シスアドの達人(7)(2/4 ページ)

» 2005年12月15日 12時00分 公開
[那須結城(シスアド達人倶楽部),@IT]

ベンチマーキングなどを実施すると……

 営業支援システムの他社のベンチマーキングを、主な競合会社を中心にインターネット検索などで実施した。

 キラリビールに対する調査結果は以下のようなものであった。

  • 何年も前から、販売スタッフ全員にモバイルPCを持たせ、営業活動を活用するシステムを稼働
  • 最近では、お客さまの要望や市場のニーズを集約・整理して販売スタッフの営業活動に効率的に活用する営業支援システムを完成・稼働している
  • 全社的なハード面のインフラ整備も同時進行で推進
  • インターネットを利用して、必要に応じてどこからでも情報を参照可能
  • 文字や数字だけでなく、イメージ情報も共有可能
  • モバイル端末だけでなく、社内のデスクトップ環境の整備も推進
  • 社内間のノウハウ共有を焦点に据え、直行直帰体制の確立による営業マンの時間利用の合理化に加え、各営業マンの卸や飲料店に対する提案力強化を推進

 また、ユウヒビールに対する調査結果は以下のようなものであった。

  • 数年前から営業支援スタッフ全員がPDAを駆使して営業力を強化し、シェア拡大に成功
  • マーケティングの基本活動のほか、勤怠管理、経費精算の機能を持たせ、会社のサーバから担当店舗の情報を配信、営業担当者は営業活動の結果をサーバに送信し、上司のチェックを受ける仕組みを構築している。結果として、飛躍的な店頭情報の増加を実現
  • 売り上げや店舗、売り場、競合に関する情報をほぼリアルタイムで収集可能にし、one-to-oneマーケティングを実現
  • 在庫情報、物流情報を扱う期間システムと連動することで、外出先からモバイル端末で在庫状況や、見積もりなども取得可能

 さらに、営業支援システムの機能を調査した。

  • 日報の共有化、日報報告作業の簡略化
  • 日報からデータの集計が可能で、営業分析にも活用
  • 顧客情報の共有化
  • 営業マンの気付きの支援
  • 営業情報集計と営業案件の見込み精度の向上
  • 案件情報参照(商談情報の参照)
  • スケジュール参照
  • 重点変革項目チェック

 これらは、企画書作成や、アンケートの質問項目のブラッシュアップにも参考にできると気付いた。

 さらに今回のベンチマーキングを通して、以下のような配慮が必要であることを坂口らはつかんだ。

  • 最初に取り組むテーマは絞った方が成功しやすい
  • PDAについても使用するときは専用機と同じにして、業務に不要なアプリケーションを利用者から見えないようにすることや、操作を簡略化すること、セキュリティポリシーに基づき、確実な対応をすることが重要である
  • 営業ほど、さまざまな情報を迅速に手に入れなければならない職種はない。出先でも、客先でも、すぐに最新の情報を手に入れ、また、上司の判断を仰ぐことができるようにすることがポイントである
  • 実際に営業マンが顧客とのコミュニケーションに費やす時間は、全体の仕事時間の3〜4割程度にしかすぎず、残りの6〜7割近くの時間は、移動やアポイントの間の空き時間、社内での会議や日報作成などに費やされている。これらの時間を、本来の業務である営業活動に費やすことができるように、いかに支援するかがポイントである

 本当は、現地にも足を運び、ベンチマーキングをすべきだろうが、インターネットの検索からだけでも非常に得るものが多い、と坂口らは感じていた。まずは、これらをベースに企画書作りの参考とすることにした。

営業部員に対する要望調査の実施

  ある週の月曜日、営業部の部内連絡会で、坂口が新営業支援システムの構築のプレゼンをし、その一環として、営業部員へのインタビューとアンケートの説明を実施した。その後、田所部長から、インタビューとアンケートへの協力を指示してもらった。アンケートはその場で配り、1週間以内に提出するように依頼した。また、インタビューは、部内連絡会の終了後数名を捕まえ、プロジェクトメンバー2名ペアで分担して、インタビューを実施した。後は、適宜、事務所にたまたまいる営業部員を捕まえて、インタビューを実施していった。

 その中に、営業2課の氷室信次主任がいた。坂口と松下のペアでインタビューを実施した松下らがまとめた質問項目に従い、質問していった。

 氷室は、最初はつまらなそうに質問に答えていたが、あるとき突然、

氷室 「これって、営業をシステムで支援することを考えているのですよね」

 と聞いてきたので、坂口は当然「そのとおりです」と答えた。

氷室 「でも、システムで支援するっていったって、パソコンか、PDAのツールを用意して配るだけでしょう。きっと誰も使わないということになりませんか。しょせん、ツールはツールでしかないので、営業を支援するといった無理なことを考えない方がいいんじゃないですか?」

坂口 「いや、その意見は違うと思いますよ。営業は手帳と頭さえあればいいっていう時代は終わったと思います。他社を調査してみても、うまくITを活用して成果を上げています。当社も現在のままだと、大きく差をつけられてしまうという危機感を持っているんです。氷室さんもそう思いませんか?」

氷室 「ITやツールも便利だし、iPodのようなポータブルミュージックプレーヤーも最近のものはHDDが大容量になって、いまでは手放せないけれど、営業は何といってもノウハウなのですから、ITで何ができるかという部分に疑問に感じています」

坂口 「営業にもノウハウの部分と、情報とかデータで効率化できる部分もあると思うのですが」

氷室 「ないとはいえないですけど、当社では、社内でパソコンすら使いこなせていないので、無理があると思いますよ」

坂口 「それであきらめていたら、おしまいだと思っているんです。何とか協力してくれませんか?」

氷室 「納得したわけじゃありませんが、田所部長の指示だから、今日のインタビューには協力しますが……」

 引き続き、用意した質問に対してすべてのインタビューが終了した。

坂口 「氷室さん、今日はどうもありがとうございました」

松下 「どうもありがとうございました」

 翌週には、アンケートは50%くらいまで回収できた。その後、個別にフォローし、何とか、70%まで回収率を上げることができた。インタビューに関しても、当初予定した15名をクリアすることができた。

 そして、松下を中心に、これらのインタビューの結果やアンケート結果の集計、分析を行っていった。

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