PMノウハウを組織的に共有する方法を考える有能プロジェクトマネージャ勉強会より(3)(2/2 ページ)

» 2006年01月14日 12時00分 公開
[生井俊,@IT]
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組織的共有方法2:「重要ノウハウによるPM技術補完」

 組織的な共有方法の2つ目は、重要ノウハウによるPM技術補完です。

ALT 組織的共有方法2:重要ノウハウによるPM技術補完(勉強会資料より)

 これは、基本的に底上げ型のPM技術を導入しています。重要なノウハウに関しては、それにくっつけてうまくやっていこうというものです。例えば、PMBOKに穴(不足部分)があるので、そこを埋めたいといったケースです。重要技術でPMノウハウを補完して、その技術をうまく使えるようにしていくものです。

 導入してやっていくためには、まず導入企業がどのレベルまでやっていくのかという目的の確認、現場でどんなことが起きているのかという問題の確認、PM技術以外の提供可能な重要PMノウハウ、それらを組み合わせて、補強すべきPMノウハウを確定します。

 標準PM方法論開発から入り、方法論の普及と教育により展開していくもので、有能PMやファシリテーターを育てるものではありません。「みんなこれをやりましょうね」ということで底上げを図っていくものです。

組織的共有方法3:「PMOノウハウ共有センター化」

 昨年・おととしと、プロジェクトマネジメント・オフィス(PMO)がはやりました。実際にこれがどういう存在だったかというと、火消し部隊の駐屯所であったり、プロジェクトの監査をする部署だったり、プリ・プロジェクト・レビューに徹底していたりと、さまざまなスタイルがあります。ラインの機能とスタッフの機能とを持ち合わせているケースが多く、きちんとした組織にしていくためには、ミッションを“きちんと”重なり定めていく必要があります。

 そのミッションを「ノウハウ共有」として、PMOを「ノウハウ共有センター」にするというのがここでの方法です。残念ながらこの勉強会までに、実績を作ることができていませんが引き合いはいくつかあり、こういう形でやっていけるのではないかと考えています。

 流通業が持つノウハウ・マネジメント、つまり本部のコンサルティング・スタッフが店舗を回ってノウハウを抽出し、全店に展開するという方法を実践していますが、PMノウハウ共有でも、それと同様の役割をPMOが担ってやっていけると思います。

ALT 組織的共有方法3:PMOのノウハウ共有センター化(勉強会資料より)

 実際にはPMOを手厚くやっていくわけにはいきません。ですから、PMOの専任メンバーに加え、各PMたちが交互に「臨時PMO」として参画する形で、そのときのPMOのチームをダイナミックに編成します。ここでは、プロジェクトが失敗してはいけませんからリスク管理をしていくことと、うまくコントロールできているPMノウハウを抽出して、必要に応じて暗雲が立ち込めているプロジェクトには、会議体の中で支援を行っていきます。重要なことについては、方法論化して配布・展開していくことが必要ですが、それは臨時PMOに任せるのではなく、PMOの専任メンバーを中心にやっていきます。

 進め方(プロセス)は、PMOが各プロジェクトのリスク管理を行うのが重要になってきます。「リスク特定は足で稼ぐ」というノウハウを基に、個々のPMがどれだけ真剣にリスク特定をしたのかというのを徹底的にレビューします。そうして集めた各リスク特定の方法のエピソードの中にうまくいっているいい話があって、サブノウハウとして確定できるものがあるかもしれません。バリューリスニングによってあるプロジェクトからノウハウをえぐり出し、別のプロジェクトに行って「ほかのプロジェクトではこういうリスク管理のやり方があるよ」とOJTをやっていくわけです。重要なものに関しては方法論化して、活用していくというサイクルになります。

 以上3点説明をしました。

Speaker

株式会社アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント

野間 彰(のま あきら)氏

製造業、情報サービス業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新にかかわるコンサルティングを行っている。最近はプロジェクトマネジメント、コンサルティング、研究開発、営業などの分野で、有能者のノウハウを組織的に共有・拡充する仕組み構築に携わっている。



野間氏 「ややこしい話はいいから、優秀な人材のノウハウを売ってほしい」という話もあります。ある程度まで体系化までできていますし、それをセット販売することが求められているのかもしれません。 しかし、会社はそれぞれに風土や目的も違いますし、社内に優秀な人材もいるというケースでは、その知識を機軸にするのが良いのではないかと考えています。

質疑応答から

──抽出したノウハウの教育を考えています。しかし、前提になるシチュエーションによって違うなど、数が膨大になります。これを一から全部教えないといけませんか。

大上氏 極めて限定的な部分でうまくいったケースなど、ファクトはそうなんです。それを意味解釈して論理に展開しなくてはいけません。その論理になったときに、状況などが変わってもほかに転用できる可能性が高まります。──人によって違うなど、前提条件が付く場合は?

野間氏 まず、そういうものを徹底的に排除して、論理までに突き詰める努力をしないといけません。それなら、全員のノウハウを聞き出す必要があるのかというとそうではなく、「競合他社に勝ちたい」といった会社の目的次第で、当然重要ノウハウが変わってきます。

──外部のノウハウを自社へ生かすためには、どうしたらいいですか。

大上氏 まず、外部のノウハウを論理に展開します。その論理に展開したものの中で、自社の目的達成に合致するものを厳選し、方法論に展開します。

編集部より

 勉強会の感想として「ノウハウの整理の仕方と、その展開方法がよく分かった」「ノウハウの共有をどのように進めていったら良いかが分かった」「フレームワークレベルのノウハウを実践例を交え、レクチャーいただいたので理解しやすく、今後の業務での利用ができる」といった意見が寄せられた。

profile

生井 俊(いくい しゅん)

1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコー、都立高校教師を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。


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