もう1度、ITガバナンスの基本をおさらいしてみようITガバナンスの正体(6)(2/3 ページ)

» 2006年02月16日 12時00分 公開
[三原渉(フューチャーシステムコンサルティング),@IT]

テクノロジの進展と「ITガバナンス」

 人類は新しい技術を手に入れることで、そして、他者よりも使い方を工夫することで優位性を勝ち取り、生き残ってきた。現代社会でもこれは同じだ。テクノロジが企業や組織の変革を促す。テクノロジ(ここではITに特化しよう)は広く手に入れられるものであるけれど、選び方や工夫次第で企業の優位性を得るための武器になる。

 戦国武将である織田信長に例を求めると、信長は誰よりも早く鉄砲という武器の力を認識していた。ほかの武将に先駆け、3000丁3段撃ち(長篠の戦い)といった手法を実戦で用いて勝ち上がってきた(実際にはそんなにたくさんの鉄砲はなかったようだが)。もちろん、ほかの戦国大名も鉄砲の存在自体は知っていた。それでも信長に及ばなかったのは、この鉄砲という武器がもたらす効果=戦闘・戦争の変革を、正しくイメージすることができなかったからだ。現代の経営戦略とITとの関係もまた同じだといえる。

 何よりも大事なのは、ITの使い方・工夫だ。単にITを導入するのではなく、「ITガバナンス」の視点から、いかにうまく導入手順を踏むか、導入目的の理解促進を進めるか、いかに利活用を促進するか、といった工夫がなくては、先進テクノロジを手にするうまみ(優位性の入手)は薄れる。

 第二次世界大戦にも例を求めることができる。重厚長大を善しとし、当初主力となっていた戦艦をより大きなものにしていく戦略を取った国は、新しいテクノロジである「航空戦力」の俊敏性や移動スピードに負けていった。飛行機のテクノロジは、すでに当時列強各国は入手できていたはずだが、その使い方の工夫・質・量に開きが生じたからこそ、優劣が決したのだ。

 旧態依然としたテクノロジに固執していては、変化に対応できない。外部環境変化に対応するためには、経営の根幹であるITや情報システムが柔軟でなくてはならない。「情報システム力」の領域ではあるけれど、そこに向かう「ITガバナンス」力が、まず備わっていなくては、効果の高い仕組みの導入にはならないのだ。重厚長大なホスト(独自アーキテクチャ)にも良いところはまだあるかもしれないが、使い方・使い道に工夫が必要だ。オープン(新しいテクノロジ)を早く組み込み、より柔軟性の高い、しかも自社のITガバナンスによる全体整合性を確保でき、経営の変化に即応できる仕組み作りをITマネージャは目指したい。

 同様に、ERPのような業務アプリケーションパッケージシステムのうち、ブラックボックス化されたもの(情報システム部門では改修できず、ほぼ固定化してしまい柔軟性に欠ける状態になってしまうシステム)は、よほど注意して導入しないと目的としている効果は得られない。それどころか、利活用部門からそっぽを向かれ、無用の長物となりかねない。経営としてはそのような事態は許されないし、ITマネージャや情報システム部門からすると悪夢だ。

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ITマネージャの役割の変容

 「ITガバナンス」の対象は、「情報システムにかかわるすべての要素=人(の意識)・制度・業務と、情報システムそのもの」と述べた。視点こそ、情報や情報システムであるが、ITマネージャは、全社のことを網羅する必要がある(通暁せよ、という意味ではない)。全社ではなく、部分しか担当していない、だから、部分のみでよい、ということではダメなのだ。あくまでも全体を知りつつ、部分を担当するという立場でなくては、目指す「全体整合性」を確保できなくなってしまう。

 「IT投資」に4つの波があったことと同様に、システム部門やITマネージャの役割も変わってきている。

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 いまやシステム部門は、かつてのような職人や匠(たくみ)だけではなく、社内コンサルタント的な役割をも包含し、全社の人(の意識)・制度・業務を変革する役目を担わなくてはならなくなってきている。だからITマネージャこそが、ITガバナンスに目を向け、理解し、職人や匠をリード、マネージしながら、社内へ情報や情報システムの普及・展開活動も推進していかなくてはならないのだ。

 ただ要求されて、情報システムを何とか導入する、という情報システム部門や自身(ITマネージャ)の役割・使命を矮小化したとらえ方から脱却してほしい。

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