もう1度、ITガバナンスの基本をおさらいしてみようITガバナンスの正体(6)(3/3 ページ)

» 2006年02月16日 12時00分 公開
[三原渉(フューチャーシステムコンサルティング),@IT]
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「ITガバナンス」基軸の「情報システム力」強化

 これまでの「復習」からは逸脱するかもしれないが、連載の今後の方向性を理解するためにも、縦軸(ページ1の図の「1」方向)の考え方を述べておきたい。

 @ITの多くの記事に見られるように、オープン系のテクノロジのうち、安定期に入ってきたものも見受けられるようになってきた(新しいテクノロジは次から次に生まれている)。経営の変化に即応できる柔軟な仕組み作りができるようになってきている。ベンダの独自技術(独自アーキテクチャ)上に成り立つ、大掛かりな情報システム構築の時代は終わりを告げた。外部環境が劇的に、かつ、時々刻々と変化をするこのご時世に、ベンダにお伺いを立てなければ改修や追加ができないような情報システム(ここでは主にアプリケーションシステムを指す)では、経営の足を引っ張るどころか、ベンダにキモを握られたりしていて本末転倒である。

 特に複数のベンダにまたがる仕組みの改修に至っては、コミュニケーションロスが単一ベンダ時でも大きいのに、その数倍に上ると想定してよい。経営のスピードとシステムの変革の足並みはそろっていなくては競合に対峙できようもない。このことは、最近の銀行再編時におけるシステム統合の例を待つまでもないだろう。

 ITと戦略は表裏一体なのだ。信長の鉄砲の使い方や第二次世界大戦の航空戦力の使い方──。いつもテクノロジが戦略を変えてきた。先進テクノロジの使い方を自分のものにして、優位性を確保したい。

 この意味では、アプリケーションパッケージシステムの「ITガバナンス」から見た導入にも注意が必要だ。よほど利活用部門の人(の意識)・制度・業務の変革や、利活用部門を含めたトップマネジメント層の理解促進、およびコミットメントを得なければ、大掛かりなアプリケーションパッケージシステム導入はうまくいかない。そもそも、旧業務を捨て、パッケージに業務を合わせる・パッケージが提示する業務に変革することを想定できる契約社会の欧米での成功事例が日本の風土に当てはまるのか疑問だ。

 日本の社会人は、変化・変革に関する、より多くの権限が与えられていたり、常に品質を高めようと努力する(日本企業の強みでもある)ので、業務が時々刻々と変わる(ただし、業務の根幹が法律で決められている会計の大部分はこの範疇ではない)。特に、各企業の基幹業務は常に業務改善・改革をしなくてはならないので、支える情報システムは柔軟性を内包していなくてはならないはずだ。この柔軟性を確保し、かつ利活用を促進して、常に経営のスピードにごしていくことこそITマネージャが目指す「ITガバナンス」の姿ではないだろうか。

 いわんや、自社の情報システム部門ではいかんともしがたく、パッケージベンダやハードウェアベンダのいいなりになって、何とか基幹業務を動かしている状況では、心もとない。パッケージベンダやハードウェアベンダにおんぶに抱っことなり、彼らなしでは、業務が回らない。これでは経営を握られているようなものだ(読者の中には、それをなりわいとしている方もいらっしゃるかもしれない。世の趨勢を味方に付けることも考えておきたい)。いまこそITマネージャは立ち上がり、ITガバナンスを手に入れるときだと認識してほしい。



神田取締役とシステム部門メンバーのランチオンも終わりかけ……。


池袋マネージャ: では、一般的なIT研修ではなく、各部署の業務に必要なIT研修は何か、個々人のレベル感の考慮を基にする、と。達成感を得ることが必要なんですね。開発部門の業務ローテーションもこの辺りがヒントになりそうです。ただ、営業のSFAは……(大崎さん、後を続けて!)。


大崎さん: そもそもSFAという言葉が営業の皆さんの意識と乖離していることがよく分かりました。良かれと思って導入したシステムが、逆に営業の皆さんの足を引っ張っているのですね。仕切り直して、抜本的に作り替えるか、活用方法を考えるかしなくては駄目ですね。営業の方を、もっともっと巻き込んで進めるようにします。


巣鴨リーダー(時間がなかなか取れないから、ベンダの提案をまず見てからにしよう。またベンダの人にお願いしなきゃな)来期のIT投資の戦略投資部分に組み込むことになりそうですね。


神田取締役:うむ。システム部門のみんながもっと現場に入り込んで、本当に必要なことは何かを見つけてこなきゃダメだよ。会社の外にも目を向ける。業務部門から「こうしてほしい」が出てくる前に察知できるくらいでなくてはね。現場から出てくるものは、小改善レベルでしかないことがほとんどだ。経営としては、もっと根本的に変えていきたいものなんだよ。小手先ではダメだ。


秋葉原さん:なるほどねぇ。導入したSFAなんてパッケージで、中身は何がどうなっているやら分からないブラックボックス状態だから、運用もメンテナンスもどうなることかと思ってたんですよ。やっぱりアーキテクチャから一緒にちゃんと考えられるところとやりたいな。もうベンダの思いどおりにはさせないぞ。


池袋マネージャ: まぁ、そう焦らないで。まずはわれわれの宿題をきちんとこなさなきゃいけないぞ。柔軟、柔軟といったって、そう簡単にはできない。神田取締役の苦労話も聞かせてもらって本当に良かったと思っています。また、近々お願いします(巣鴨リーダーの表情は危ないな。何かたくらんでいる顔だ……)。



池袋マネージャはメンバーの表情から彼らの心の変化を推し量りながら、これから起こる大きな変化の波を感じ取っていた。



筆者プロフィール

三原 渉(みはら わたる)

フューチャーシステムコンサルティング株式会社 ビジネスディベロップメント&インターナショナル事業本部 執行役員。大手外資系コンサルティングファームを経て、2003年より現職。これまで外資系を含む50社あまりの企業の戦略・改革プログラム・プロジェクトの立案と実行、および効果のモニタリングに携わる。特に経営戦略と連動した全社改革プログラム・IT戦略立案に詳しい。改革推進の障害の1つであるトップ層とミドル層の意識・IT知識の乖離(かいり)を埋めるべく、両者への働きかけを精力的に手がける。ご意見、ご感想、問い合わせのメールは、mihara.wataru@future.co.jpまで。


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