サーバ仮想化技術の過去・現在・未来サーバ仮想化技術の可能性と限界(1)(2/3 ページ)

» 2006年03月07日 12時00分 公開
[古明地 正俊(野村総合研究所 情報技術本部情報調査室 上級研究員),@IT]

主なサーバ仮想化技術

サーバの性能拡張と仮想化技術

 一般に、サーバの性能拡張のための手段には、台数により性能を向上させる「スケールアウト」と単体のサーバ性能を向上させる「スケールアップ」がある。スケールアウトはWebサーバのようなフロントエンド・サーバの性能向上方法として利用されており、最近ではブレードサーバの普及に伴い、サーバの性能向上策として広く利用されている。一方、スケールアップによる性能向上は、メインフレームやハイエンドのUNIXサーバなどで利用される性能向上策である。

 両者で利用される仮想化技術もそれぞれ異なっている。スケールアウトにより性能向上を図るIAサーバでは、VMWareに代表される仮想マシンソフトウェアが一般的であり、メインフレームやハイエンドUNIXサーバではパーティショニングの技術が利用されている(図1)。

ALT 図1 スケールアップ、スケールアウトと仮想化の関係

パーティショニング

 パーティショニングには、大きく分けて「物理パーティショニング」と「論理パーティショニング」の2種類がある。

 1台の物理サーバを物理的なブロック単位に分割する方式を、「物理パーティショニング」という。1つのブロックは、1つ以上のプロセッサ、メモリ、I/Oカードにより構成される。物理パーティショニングでは、ハードウェア障害や負荷の影響がパーティション同士で影響を与えないため、システムの信頼性が高いという利点がある。

 また、CPU単位、メモリブロック単位で分割し、どのパーティションにも自由にリソースを配分できるようにしたものを、「論理パーティショニング」という。パーティショニングの技術はサーバベンダー依存の独自技術であり、利用できるOSなどに制限がある。例えばHPの場合、これまではHP-UX上でしか利用できず、最近セルボード(4CPU)単位の物理パーティショニング機能「nPar」などがLinuxから利用可能となった。ちなみに、HPでは物理パーティショニングをnPartition(nPar)、論理パーティショニングをVirtual Partitioning(vPAR)、IBMはPhysical Partiotioning(PPAR)、Logical Partitioning(LPAR)という名称で実装している。

仮想マシンソフトウェア

 仮想マシンソフトウェアには、WindowsなどのホストOS上に仮想マシンを構築する「Hosted Virtualization」タイプと、サーバ・ハードウェアやパーティション上に直接仮想マシンを構築する「Non Hosted Virtualization」タイプがある。アプリケーションソフトウェアは仮想マシン上にインストールしたゲストOS上で動作する。

 複数のIAサーバで動作していたシステムをパーティショニングによってサーバ統合した場合、既存のアプリケーションに変更が必要となるのに対して、仮想マシンソフトを利用したサーバ統合の場合、既存のアプリケーションが動作していたのと同様のOSをゲストOSに利用することにより、アプリケーション実行環境の移行が容易であるという利点がある。

 しかし、仮想マシンソフトやホストOSがシングルポイント障害の要因となるため、システム全体の信頼性という点では、パーティショニングによる仮想化に1歩譲ることとなる。

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