サーバ仮想化技術の過去・現在・未来サーバ仮想化技術の可能性と限界(1)(3/3 ページ)

» 2006年03月07日 12時00分 公開
[古明地 正俊(野村総合研究所 情報技術本部情報調査室 上級研究員),@IT]
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選択技が増えてきたIAサーバ向け仮想マシンソフトウェア

 従来、IAサーバ向けの仮想マシンソフトはVMWareの独壇場であった。しかし、2005年12月にマイクロソフトの「Virtual Server 2005 R2」、VMWareの「VMWare Workstation 5.5」オープンソースコミュニティが提供している仮想化技術「Xen 3.0」が相次いで発表され、選択肢が増えてきている。

 昨年末に発表された仮想マシンソフトは「Intel Virtualization Technology (VT)」やAMDの「Pacifica」(開発コード)といった仮想マシンを支援する機能に対応しているのが特徴だ。プロセッサの仮想マシン支援機能を利用することにより、ゲストOSがハードウェアリソースへアクセスをする際の調停処理やメモリ管理機能が容易に実装可能となり、結果的に処理性能の向上が期待できる。

 マイクロソフトの「Virtual Server 2005 R2」では、ゲストOSとしては32ビットOSのみでしか使うことができないが、ホストOSとしてx64 Editionを使うことができる。そのため、x86/64の広大なアドレス空間を使い複数の仮想マシンを効率的に動作させることが可能となっている。さらに、マイクロソフトは「Windows Server 2003 R2, Enterprise Edition」に、追加コストなしで4つまでの仮想インスタンスを実行できるライセンスを付与するなど、仮想化技術の普及に積極的に取り組む姿勢を示している。

重要度が高まる運用管理製品との連携

 仮想化技術がサーバ統合の実現に有効なソリューションであることは先に述べたとおりだが、仮想化技術のみを使ったのでは仮想マシンの台数が増える一方であり、運用管理の負荷も増大する。そのため、仮想化技術を使いこなすには、多数のサーバを効率的に利用することができる運用管理製品との連携が必須である。

 運用管理製品の機能のうち特に重要となるのが、動的なワークロード管理機能である。動的ワークロード管理とは、仮想マシンに対する負荷(ワークロード)をリアルタイムにとらえ、その状況に応じて仮想マシンに割り当てるハードウェアリソースを動的に変更し、サーバクセス負荷に柔軟に対応できるよう仕組みである。このような動的ワークロード管理機能は、IBMのTivoliやHPのOpenViewといったハイエンド・サーバ向け統合運用管理製品の機能の1つとして従来から提供されている。また、最近では、グリッドコンピューティングの実現に向けて動的なサービスプロビジョニングやポリシーベースのプロビジョニング技術など、より高度な機能が提供されつつある。

 統合管理製品ほど多機能ではないが、IAサーバ向け仮想化技術に特化した運用管理製品も、仮想マシンソフトの技術とともに提供されつつある。VMWareは、ユーザーセッションを中断せずに仮想マシンを移動できる「VMotion」技術を提供しており、マイクロソフトも次期OS「Longhorn Server」で仮想化技術とともにOS稼働中にプロセッサの追加といった構成変更を可能とする「ダイナミック・ハードウェア・パーティショニング(DHP)」と呼ばれる機能を提供する予定である。また、XenSourceも「Xen 3.0」の発表に合わせて、「XenOptimizer」というデータセンターの仮想インフラ管理ソリューションを発表している。「XenOptimizer」は、Xen 仮想サーバの自動プロビジョニングや管理ダッシュボードなど仮想インフラを管理するための機能を有している。

 今後、仮想化技術を採用する際には、仮想マシンソフトやパーティショニングの性能やアーキテクチャのみでなく、運用管理製品との連携を視野に入れた製品選定が重要となるであろう。

 以上、第1回では、サーバ仮想化技術の動向について紹介した。第2回目以降では、活用例、評価ポイントについて解説していく。

著者紹介

▼著者名 古明地 正俊(こめいち まさとし)

野村総合研究所 技術調査室 上級研究員。

メーカーの研究開発部門を経て2001年に野村総合研究所に入社。情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト。専門は、企業ITシステムおよびユビキタス・ネットワーク関連技術。


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