ついに動き始めたシステムと加速する恋心(第9話)目指せ!シスアドの達人(9)(2/4 ページ)

» 2006年03月08日 12時00分 公開
[大空ひろし,@IT]

業務を通じて成長していくメンバーたち

 そして先週末、ネットワークテスト、アプリケーションテストなど、システムリリース目前に行う最大級のテストを検証し終えたメンバーは、リリースを翌日に控えた日曜日に、久々にゆったりとした休日の朝を迎えていた。しかし坂口は、「休日で悪いなぁ」と思いながらも、福山に電話していた。

坂口 「福山さん、おはようございます。昨日も遅くまでお疲れさまでした!営業支援システムですけど、いままでのものはそれとして、これからは全システムがWebブラウザをベースとしたものに変化していくんじゃないかと思いましたので」

福山 「坂口かー。またぁ、休みの日になんだよ!」

 といいつつ、福山はそれとなく自分を慕ってくる坂口に悪い気はしていなかった。

坂口 「鉄は熱いうちに打てっていうじゃないですか!? だから思い付いたらって……、休みの日に本当にすみません!」

福山 「いやいや、そのとおりかもしれない。今回のものをベースに機能拡張をして、さらなる効率化を目指さないと意味ないからな」

坂口 「それで、まだまだ福山さんの力を借りなければいけないし」

福山 「また何か考えてるな」

坂口 「バレましたか、実はいま暗号化の導入を考えていました」

福山 「良いところに気が付いたな、今回のシステムは独自に作り込んだからそれほどでもなかったが、Webベースにするとなると暗号化は避けて通れないな」

坂口 「よかったぁ、賛成してもらえて」

福山 「細かいことは次のプロジェクトで決めることになるんだろうがな」

坂口 「はい」

 そんな電話で午前中を過ごし、久々の休日を味わった坂口たちだった。そして翌日、田所部長はいつもより早めに出社していた。それでも、プロジェクトのメンバーはすでに全員そろっていた。そう、この日から新しいシステムが動きだすのだ。

 今日はシステムの稼働初日ということもあり、利用するのはプロジェクトメンバーと一部の若手営業担当者だけに絞られた。この後、3日間の運営状況を見て、東京支社全体に拡大する予定である。4日目には社内的なセレモニーを予定しており、ささやかではあるがパーティーも予定されている。

田所 「みんな、おはよう〜」

一同 「おはようございます!」

田所 「いままでご苦労だったな。経過はどうかね」

坂口 「はい、順調です!」

田所 「そうか、坂口はじめ、みんな……頑張ったな!」

坂口 「メンバー全員の協力のたまものです」

田所 「そうだな、こういうものは1人ではできないからな。私は経過を見ながら社長に報告する。あさっての朝、経過を教えてくれ」

坂口 「分かりました」

 初日だが、午前中はトラブルもなく順調に進んでいる。営業担当者から、いくつかのデータも入り始めている。データベースも順調だ。その様子をモニターしていたメンバーは誰もがそう思った。社長へも良い報告ができるだろうと。

 しかし、翌日の午後、営業担当者から問い合わせがあった。本社にデータを送信するときに、少し時間がかかるようになったらしい。「まぁ、少し待っていたらデータ送信OKの返事が来たから大丈夫だとは思いましたが、新しいシステムですから連絡しときます」ということだ。坂口は、こういった心遣いに感謝した。

 一方、豊若もプロジェクト支援という立場であったがそれなりに気になっている。システム完成に近くなったころから、時間を見つけては訪問している。今日は別の仕事もあったが、新システムのスタート直後ということもあり、早めに来社した。そして問い合わせに対応している坂口に声を掛けた。

豊若 「こんにちは、先日は失礼しました。今日もお邪魔します。おっ坂口君、何か問題でもあったのか?」

坂口 「いえ、データ更新が少し遅いと連絡があったので確認しているところです」

豊若 「そうか」

坂口 「システムの立ち上げと、滑り出しには問題ありませんでしたが」

豊若 「設備的には、新しい機器を導入したんだよな?」

坂口 「はい、ネットワーク関係を含めてハードウェアはほとんど新調しました」

福山 「それにテストでも、ネットワークの疎通確認として、まずpingで確認しました」

豊若 「福山君、お疲れさま。相変わらず元気そうだね」

坂口 「まだ2日目ですし、ネットワーク関係については、IPだけでなく、ドメイン名でも、接続ができているか確認をしています」

福山 「それに加えて、クライアントからサーバに接続して、アプリケーションが予想どおりの動作をすることも確認しています」

豊若 「ネットワーク関係は、最も気を使うところだからな」

福山 「レスポンスタイムは想定どおりでした。そのほかにも、リソースの使用率や、スループットも確認して、OKでした。それにセキュリティチェックも正常に動作しています」

豊若 「システムを使ってくれる人が多くなると、それだけアクセスが増えることになるからな……」

坂口 「書類で処理していたときから比べると、多くの人がシステムに接続し始めています」

豊若 「そうだな、この状態がさらに広がるだろし、全社に広げるのが君たちのもう1つの使命だからな」

坂口 「はい、でも特にこの辺り、セキュリティをきちんとすると使いにくくなるし、使いやすさを求めると、レベルを下げないとならないし、システムの提供側には課題が多いですね」

豊若 「おっ、そこまでいうようになったか。坂口君また成長したな」

江口 「いえ、皆さんの指導のおかげです」

坂口 「いやー、江口さん、きつい!!」

一同 「ははははは!」

 プロジェクトを通して、メンバー自身がそれぞれ成長している。このようなプロジェクトを通して、参加者自身が成長することはまさにOJT(on the job training)の典型だ。

豊若「自分たちにとって、たとえつまらない質問でも、くだらないと思っても、FAQへ追加することは大切なことだぞ」

 そんな、いろいろなアドバイスをしている豊若の姿を、廊下から注視している社長の姿があった。

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