ついに動き始めたシステムと加速する恋心(第9話)目指せ!シスアドの達人(9)(3/4 ページ)

» 2006年03月08日 12時00分 公開
[大空ひろし,@IT]

子会社が親会社を抜く!?

 一方、外回りの営業担当者も、新しいシステムを使って仕事をし始めていた。システムを開発する側の意識として、営業担当者を代表とする「普段コンピュータにそれほど接していない人たち」に対して、“システムを提供してやるんだ”という意識を持ってはうまくいかない。今回は提供するシステムを使う側の立場になって、受発注データの確認や、外回り旅費申請の簡略化など、無駄な動きを少なくした。

  この辺りはバックヤードの仕事なので、得てしておざなりになりがちであるが、将来的にさらに大きなシステムを構築するうえで重要な要件となる。今回のプロジェクトで業務をシステム化する目的の一部には、事務処理を効率化して業務を改善することも含まれている。

 そして、営業支援システムを導入して2週間が経過した。いまのところ、順調な稼働を見せている。そんなサンドラフトサポートの部長室では、

田所 「親会社でも、今度のシステムが話題になってるらしいな」

浜崎 「親会社には何も報告してませんけどね」

田所 「在庫管理部や配送センターが、それなりに興味を持ち始めたらしいぞ」

浜崎 「どうも……、『毎日少しずつだが、生産と在庫のバランスが良くなってきている』と、岸谷君が報告したらしいですね」

 と、そこへ西田社長が現れた。

社長 「おぉ、ちょうどいいところにいた。2人とも私の部屋に来てくれ」

両者 「はい」

 そして、神妙な面持ちで社長室に入る2人。

社長 「仙台から来た、坂口だがな」

浜崎 「はい、坂口が何かしでかしましたか」

社長 「いやなに、ほれ、例の支援システムの件だ。私が、パチパチ、ピッでドーンといったら、それは駄目だっていいながら、プロジェクトを立ち上げたな」

田所 「それですが、ちょうど2週間たちました」

社長 「おぉ、それだ。どうやら、わが社ばかりでなく、親会社でもうわさになってるらしいぞ。なんでも、『転籍者が多いサポートが何かやりだした』ってな」

浜崎 「それって、良いうわさなんでしょうか、それとも……」

社長 「いや、まだそれは判断するな、とにかく当面は温かく見守ろう」

両者 「分かりました、それにしても、社長も情報……早いですねぇ」

社長 「まぁな(ニヤリ)」

 親会社のサンドラフトでも、子会社のプロジェクトで、新営業支援システムが動きだしたことがうわさになり始めていた。サンドラフトとサンドラフトサポートのような関係にある会社で、子会社が自発的にシステム開発を行うことは非常にまれである。どちらかというと、親会社からの指示で行うことはあっても、いわゆる転籍者が多い会社では、システム開発は遠慮がちになる。

  それは、パソコンをはじめとするシステムに不慣れな人が比較的多いからでもある。しかし、最近では親会社にいたときからパソコンを使った仕事をしてきているので、抵抗を持っている人は少ないが、昔から子会社にいる人たちには、まだまだ少なからずとも抵抗を持つ人がいることも事実だ。

 サンドラフトの生産工場でも、サンドラフトサポートでのシステム導入当初は、送られてくるデータに疑心暗鬼だった。しかしまだそれほど時間は経過してないが、どうやら報告されるデータは正しいと判断しても支障を来たさないことが、だんだん理解され始めてきている。また、配送センターでも、「従来に比べると在庫が少なくなっている」という声を、担当者がいいだした様子だ。まだうわさの域を出ていないが、現場のそういった声は重要だ。

坂口 「皆さん、やっと2週間経過しました。まだまだこれからいろいろあると思います。だから、今日もガンバりましょーー!!」

一同 「よっしゃー!!」

坂口 「ところで、誰か苦情めいたことを何か聞いてませんか?」

松下 「いえ、何も聞いてない」

坂口 「そうですか、よかったぁ〜」

 トラブルらしいトラブルがないことに一抹の不安をぬぐい切れなかったが、また自分の本来の業務に時間を割き始めたメンバーも、毎日をつつがなく過ごしていた。

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