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ついに動き始めたシステムと加速する恋心（第9話）：目指せ！シスアドの達人（9）（4/4 ページ）

» 2006年03月08日 12時00分公開

[大空ひろし，＠IT]

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束の間の休息

　青葉がそこかしこに見える、暖かな昼休み。春の息吹を感じる季節になった。取りあえず大きなトラブルもなく、日々を過ごし始めているメンバーがそこにいた。そして、今日は、深田、谷田、水元がそれぞれお弁当を作ってきている。

坂口　「うわー、すごい!!」

福山　「こんなお昼はいままで見たことないぞっ!! 生きててよかったぁ！」

谷田　「福山さんも外食メインですか？」

福山　「そうだな。外食が多いねぇ～」

深田　「坂口さんも、いつも外食だし」

　とすかさず、

谷田　「そうよね、栄養に注意してね！」

椎名　「（谷田の口調で）じゃー、私が毎日作りましょうか？」

坂口　「ありがたきお言葉、謹んでお断りさせていただきます！」

一同　「ははははは!!」

松下　「ところで、今度の試験どうするの？」

谷田　「私、受けます」

深田　「私も」

谷田　「私、パソコンも買ったし」

松下　「え、買ったの？」

谷田　「はい、坂口さんのアドバイスで」

坂口　「アドバイスなんて……」

福山　「初級シスアドも、最近難しくなってきたしな。表計算や、データベースの基礎なんかは、パソコン使って勉強した方がいいかもな」

谷田　「ねっ、ね、そうでしょ？」

深田　「いいな～、谷田さん。私も買おうかな、パソコン」

福山　「じゃ、深田さんのパソコン購入プロジェクトチームリーダーは、オレだ！」

坂口　「よぉーし、任せた！」

福山　「お弁当のお礼もあるし、今度の日曜はデートだ、デートだ！」

深田　「誰が、デートだっていいました？」

福山　「そんな顔すんなよ。オレだって、悪くないだろ、なっ？」

松下　「じゃあ、深田さんのパソコン購入プロジェクトチームリーダーは、福山さんに決まりね！」

深田　「えぇー？」

福山　「OK、OK、楽しみだな～、日曜日」

谷田　「坂口さんは上級受けるんでしょ？」

坂口　「多分ね……」

深田　「頑張りましょうね」

坂口　「あぁ、みんなで頑張ろう！」

　その日の午後、坂口は営業に出た。いまのところトラブルはないので、いまはまた、当初の仕事に戻って小売店を回っている。それにしても、東京に来てからはあっという間に時間が過ぎる。時間の流れが違うのかもしれない。

　そして、それからさらに3週間が経過した月曜日。まだまだ結果は検証されてないけど、今後このシステムをさらに発展させるために何をすべきか、坂口は外回りの移動の時間を利用して考え続けている。おぼろげながら坂口の意識の中には、「システムって、作りっ放しや、導入しっ放しでは決して成功しない」という理論が形成され始めた。

　今回は豊若にグチったりしつつも、パソコンに不慣れな人にもいろんなアドバイスを送った。だが少々忙しかったこともあり、「満足な指導ができていないのではないか？」という一抹の不安をもぬぐい切れない。また、システム構築は簡単に進むものでないことを、実体験として意識し始めた。駅から、会社までの道すがら、いろいろ考えていた。

　一方の豊若は、このプロジェクトがスタートしてからのメンバーの成長に驚いている。豊若自身はオブザーバとしてのかかわりなので、毎日一緒に作業をしているわけではないが、仕事の後に飲みながら話す話題がそれを裏付けしている。

　上級シスアド資格保持者としては、プロジェクトの目的を達成することばかりではなく、それに伴う付帯的な効果をも期待し、そしてそれを実現しなければならない。このことはまだ誰にも話していない。特に坂口には、かつての自分を映していることもあり、また仕事ばかりではなく、次の国家試験には必ずや合格してほしいこともまだ伏せていたが、自分でいわなくても、それなりに理解し始めていることを感じている豊若だった。

◆次回予告◆

　坂口と福山による不眠不休の努力のかいあって、ついに動き始めた営業支援システム。いまのところ不具合は発生しておらず、メンバーは束の間の休息を味わっていたが……。

　次回は、順調に見えたシステムですが、徐々にほころびが出始めます。坂口と谷田の関係もいよいよ岐路に立って……。お楽しみに。