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» 2006年05月09日 12時00分 公開

データ、UI、業務手順の「3要素」をとらえる分析設計技法「三要素分析法」集中講座(2)(1/3 ページ)

「三要素分析法」は技術者とユーザーとの意思疎通と開発現場での実用性を重視した業務システム向けの分析・設計手法だ。今回は3要素の関係とそれぞれの図式を見ていく。

[渡辺 幸三,@IT]

 前回「ユーザーと共通理解できる“システム観”が必要だ」では、「三要素分析法」が業務システム向けに最適化された分析・設計の枠組みであることを説明しました。そこでは、システム要件を分析・設計した結果は「データモデル」「機能モデル」「業務モデル」の「業務システムの3要素」として図式化されること。また、システム開発においてはそれらの論理要件のほかに、利用される実装技術や組織上の特性といった「物理要件」の影響を無視できないこと。結果的に、3要素が「データベース」「プログラム」「ユーザー」としてプロジェクト固有の形を取りながら実装されることを説明しました。後編では、3要素同士の関係と、それらがどのような形で図式化されるかを解説します。

3要素の牽制関係が重要

 「データモデル(帳簿組織の在り方)」「機能モデル(データ処理プログラムの在り方)」「業務モデル(仕事の進め方)」は、企業システムの在り方を視点を変えて写し取った結果です。それはちょうど、立体を3つの方向から見たときの見え方に対比できます。

 例えば図1で示した立体は、X、Y、Z軸の方向から見るとそれぞれ四角、丸、三角に見えます。方向を変えるとまったく見え方が異なる例です。しかし、異なるといっても、見え方が完全にそれぞれの軸ごとに完結しているわけではありません。丸の直径、四角と三角の底辺の長さや高さが一致していなければなりません。

ALT 図1 3方向で見え方がまったく異なる立体の例

 同様に「データモデル」「機能モデル」「業務モデル」も、それぞれの自由度と3要素間での牽制関係に基づいて成立します。その牽制の様子は、機能モデルが業務モデルとデータモデルに挟み込まれる形として表せます(図2)。

ALT 図2 機能モデルはデータモデルと業務モデルのハザマでうめいている

 「業務」は「データ」に直接触れることはできません。なぜならデータの実体はコンピュータ上のデジタル記録だからです。デジタルデータを操作するには、特別にあつらえた「道具(機能)」が要ります。機能があってこそ、業務とデータとは接続されます。

 いい方を換えれば、機能は中間管理職のように上と下から突き上げられる宿命にあります。つまり、機能(プログラム)の在り方は、業務の在り方に制約されるだけでなく、データの在り方にも制約されつつ決まるということです。

「恵み」としての制約

 このような牽制関係は、モデリングを進める際の厄介な制約に思えるかもしれませんが、実際にはその逆です。要素間の制約のおかげでモデリング作業はむしろ楽になります。

 企業システムのあるべき姿をとらえるために複数の視点を設けることで、一度に考えるべき事項が減ります。それは人間の理解力や洞察力を補うための工夫です。そして、それらの視点が独立しつつも微妙に牽制し合っているおかげで、人間の総合力の不足までを補えます。1つの視点に基づいてシステムの在り方を検討しても、その視点に基づく完ぺきな見え方を記述することは難しいものです。それぞれの視点からの見え方の間に一定の制約があれば、それぞれの視点での「暴走」を抑えられます。モデリングにおいて、制約は障害ではなく「恵み」です。

 具体的には、3要素間の牽制関係のおかげで、それぞれの視点ごとに「大体こんな感じかな」とイーカゲンにモデルをまとめることが許されるようになります。遅かれ早かれ、各要素を突き合わせる過程でモデルの不十分なところがあぶり出されることが分かっているからです。

 実際のところ、データモデルに沿ったシステムの在り方をパネルイメージ(画面など)の形でユーザーにフィードバックした時点で、データモデルが不十分であることに気付くことはしょっちゅうです。そのときは、平然とデータモデルを修正すればいいのです。いい換えれば、「データモデリングさえ慎重にやりさえすれば正しいデータモデルが出来上がる」なんて、そんなムシのいい話はありません。「データモデリングだけやります」なんて役割はお気楽過ぎて成立し得ないということです。

 もちろん、筆者はデータモデリングが重要でないといいたいのではありません。データモデリングと業務モデリングと機能モデリングとは、ほぼ併行して進められるべきだといいたいのです。「データモデリングだけ」の分析・設計作業が成立しないのと同様、「機能モデリングだけ」とか「業務モデリングだけ」の分析・設計作業も考えにくいものです。これらを切り離して行えば作業としては楽かもしれませんが、「三要素」間の牽制関係を生かしたバランスのとれたモデルが生まれにくいからです。

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