今日、一定規模以上の企業でグループウェアを使っていないところは少ないかもしれない。では、それがどの程度利用され、どの程度役立っているのか把握しているだろうか? この連載では、Notesをベースに情報共有基盤の「見える化」と「再整理」について解説していく。
グループウェアというソフトウェア分野を作り出したLotus Notes/Domino(以下、Notes)が、部門サーバとして爆発的に導入されたのがいまから約10年前。その後も業務に欠かせないツールとして現場で使い続けられ、何度かのサーバ統合を通じて全社情報共有基盤となっている企業も多い。
しかし、経営層の方々になぜNotesを使い続けているのか? という問いに対して納得のいく答えが返ってくることは少ない。ほかのオプションを検討しようにも、Notesの状況が正確に把握できていないのが実情であろう。
一方、もともと部門サーバ的位置付けであったNotesを、全社情報共有基盤とし、、業務遂行に欠かせないものとして活用することに、一抹の不安を抱えている運用担当者も多いのではないだろうか。
本連載では、Notesをお使いの経営層やIT企画担当者、Notes運用担当者などに特に有益と思われるリスク、利用状況、投資対効果の視点からのNotes「見える化」の手法を解説する。
Notesユーザーではない読者諸氏であっても、グループウェアの業界標準でありながら、関連する書籍や記事などの情報発信が少ないNotesの世界観を理解し、現在お使いの情報共有基盤の行く末を考えるよい機会となるはずである。
2006年現在、Notesの置き換えを検討している企業は多い。
一部の先進的Notesユーザーは、すでに最新版へのバージョンアップが一段落したところで、今後しばらくNotesを使い続けることになるであろう。しかし、それ以外の多くのユーザー──特に2005年9月に保守切れとなったR5のユーザーは、Notesを使い続けるべきか、乗り換えるか、大きな岐路に立たされている。
まず技術的な観点では、Notesの使い方によっては、Notesのバージョンアップはさほど簡単な話とはいえない。特に、エンドユーザーコンピューティング華々しかった時代※に、使いやすさを重視して、よかれと思ってカスタマイズしたテンプレート/フォームが多ければ多いほど、バージョンアップ後の互換性を担保するのが難しく、企業は想定外の出費を強いられる。例えば、1万人規模でNotesを使っているある企業では、バージョンアップの見積もりが約4億円(!)だったが、そのほとんどは長年にわたり整備してきたアプリケーションの動作検証と作り直しコストであった。
また経営的な観点から、単なるバージョンアップためだけに多くのコストを掛けることが許されないという状況もよく目にする。古い情報基盤を使い続けることによるリスクはある程度理解しながらも、バージョンアップという投資に対する付加的な効果を求める経営陣は少なくない。リスク対策を錦の御旗とするためには、しっかりと状況を整理することが必要で、場合によってはリスクが顕在化した際の被害額を定量化しておくことが求められている。
「簡単にバージョンアップできない」となれば、代替手段を検討することになる。そこで、そこへマイクロソフトをはじめとする多くのグループウェアベンダが、魅力的に見えるような移行プランを提案している。移行ツールを提供したり、セミナーで移行手法を説明したりするなどして、Notesユーザーを1社でも多く獲得しようと積極攻勢に出ており、しばらく動きのなかったグループウェア市場が活性化している状況だ。
ここで確認しておきたいのだが、導入企業の皆さまはNotesをどのように使っているのだろうか? マイクロソフトの移行キャンペーンページでもNotesの利用状況の確認は、移行検討時に重要なステップとして掲載されている。
もし、Notesで利用している機能がメールとスケジュールだけなら、Microsoft Exchangeへの乗り換えを検討するのも悪くないかもしれない。しかし、掲示板やライブラリテンプレートによる文書DB、さらにはNotesの機能を使用して構築したワークフローなどの業務アプリケーションを使っているのであれば、移行は相当難しくなることを覚悟すべきであろう。
今後の情報共有基盤の在り方を考えるにあたり、まずは現状を確認することが肝要である。そのための手法が、リスク・利用状況・投資対効果の観点からの「見える化」なのである。
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