中国人は日本人のことをこう思ってるんです現地からお届け!中国オフショア最新事情(6)(2/3 ページ)

» 2007年03月01日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

オフショア開発経験者の義務とは

 中国オフショア開発の経験者は、漠然とした不安を覚える未経験者のために、中国人の考え方や仕事の進め方を分かりやすく伝え、標準ガイドラインや文書のひな型を提供する義務を負います。

 筆者自身はというと、社会全体に対して中国オフショア開発の勘所を伝える役割を担っていると信じています。従って、2004年の連載開始以来、多種多様なオフショア開発の事例を包み隠さず公開してきました。例えば、

  • 中国側リーダーが途中で抜けた場合の対処法
  • 中国人を中心にプロトタイピングを進める方法
  • 中国ベンダの提案書はどの程度信用できるか
  • 日本式ルールを押し付けるべきか、中国に任せるか、第3のルールを作るべきかの判断
  • 中国企業からソースコードが不正流出したときの対処法
  • 「動けばいい」と保守性を考慮せず作り込む癖を正す法
  • 日中の技術者レベルの交流を促進するうまい方法

 実際、筆者が保有するオフショア開発に関するケーススタディーは日本一だと自負します。ですが、あなたの会社でもプロジェクトを成功に導くために必要な十分な事例を収集できると確信しています。

 オフショア開発経験者の一番大事な仕事は、オフショア開発の暗黙知を体系化することです。何百ページもある分厚い開発標準プロセスを定義したところで、大して役に立たないことが多いですが、A4用紙数枚のケーススタディーが組織全体の理解を深めることがあります。

 中国ビジネスの要諦を押さえた質問や対話を通して、パイロット組織の実行計画に潜む各種リスクを事前に洗い出す。そして、徐々に中国側に歓迎されやすい雰囲気を引き出し、日中両国が一体となってプロジェクトを遂行するための「自発的行動」を促します。

 もし、あなたの周りに中国オフショア開発の意義が見いだせない人がいるとします。その人は、わざわざ声を荒らげてオフショア開発に反対するなどやぼなことはしません。その代わり、「会社の方針は分かるけれど、うちの案件は無理」と静かに、かたくなにオフショア発注を拒否し続けます。社命に反してまで出し渋っている人に対して、あなたはどう説得すればよいでしょうか。

ALT 大連にある魚介類専門の料理店。メニューはなく、水揚げされたばかりの魚介類の中から自分で選ぶ形式だ。調理法も自分で指定する

 現実にはオフショア推進責任者でさえ、「社内で実績がないから中国活用のPR活動は難しい」と本音を漏らします。同僚のプロジェクトマネージャが苦労して海外に仕事を出しても、自分の立場を危うくするだけだと思っているのです。残念ながら、この難しい局面を打開する特効薬などありません。

 オフショア推進部門では、「日ごろから地道に説明運動をやる」や「失敗よりも成功事例を先にアピールする」といった努力を続ける必要があります。「投資したばかりは我慢の時期であり、痛みが伴うことを伝える」といった意見も出されましたが、余裕があれば実際に中国に連れて行くのが最も効果的でしょう。

 中国ベンダの活気ある雰囲気を見せて、若いプログラマー同士が喧嘩するように議論する姿を目の当たりにすれば、初めて中国を訪問する日本人は、ほぼ間違いなく中国オフショア開発を見る目が変わります。

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