中国オフショア開発の経験者は、漠然とした不安を覚える未経験者のために、中国人の考え方や仕事の進め方を分かりやすく伝え、標準ガイドラインや文書のひな型を提供する義務を負います。
筆者自身はというと、社会全体に対して中国オフショア開発の勘所を伝える役割を担っていると信じています。従って、2004年の連載開始以来、多種多様なオフショア開発の事例を包み隠さず公開してきました。例えば、
実際、筆者が保有するオフショア開発に関するケーススタディーは日本一だと自負します。ですが、あなたの会社でもプロジェクトを成功に導くために必要な十分な事例を収集できると確信しています。
オフショア開発経験者の一番大事な仕事は、オフショア開発の暗黙知を体系化することです。何百ページもある分厚い開発標準プロセスを定義したところで、大して役に立たないことが多いですが、A4用紙数枚のケーススタディーが組織全体の理解を深めることがあります。
中国ビジネスの要諦を押さえた質問や対話を通して、パイロット組織の実行計画に潜む各種リスクを事前に洗い出す。そして、徐々に中国側に歓迎されやすい雰囲気を引き出し、日中両国が一体となってプロジェクトを遂行するための「自発的行動」を促します。
もし、あなたの周りに中国オフショア開発の意義が見いだせない人がいるとします。その人は、わざわざ声を荒らげてオフショア開発に反対するなどやぼなことはしません。その代わり、「会社の方針は分かるけれど、うちの案件は無理」と静かに、かたくなにオフショア発注を拒否し続けます。社命に反してまで出し渋っている人に対して、あなたはどう説得すればよいでしょうか。
現実にはオフショア推進責任者でさえ、「社内で実績がないから中国活用のPR活動は難しい」と本音を漏らします。同僚のプロジェクトマネージャが苦労して海外に仕事を出しても、自分の立場を危うくするだけだと思っているのです。残念ながら、この難しい局面を打開する特効薬などありません。
オフショア推進部門では、「日ごろから地道に説明運動をやる」や「失敗よりも成功事例を先にアピールする」といった努力を続ける必要があります。「投資したばかりは我慢の時期であり、痛みが伴うことを伝える」といった意見も出されましたが、余裕があれば実際に中国に連れて行くのが最も効果的でしょう。
中国ベンダの活気ある雰囲気を見せて、若いプログラマー同士が喧嘩するように議論する姿を目の当たりにすれば、初めて中国を訪問する日本人は、ほぼ間違いなく中国オフショア開発を見る目が変わります。
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