シスアドの品格とは? シスアド研修会レポートIT戦略トピックス(Topics: Report)(3/3 ページ)

» 2007年04月13日 12時00分 公開
[大津 心,@IT]
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会員同士が発表し合い、研さんするシスアドたち

UISS作成者が語る、UISSとシスアドの交差点

JSDG会員の島川孝博氏

 安藤氏の次に登壇したのは、JSDG会員の島川孝博氏。JSDGの研修会では、JSDG会員自身が自分たちの経験やノウハウを発表し合うのが特徴だ。島川氏は、JUAS(社団法人日本情報システム・ユーザー協会)の「UISS策定ワーキンググループ」のメンバーであり、まさにUISSを実際に作成している人物。その島川氏が、「ワーキンググループの見解ではなく、あくまでも個人的な見解です」と前置きしたうえで、UISSにおけるシスアドの重要性を語った。

 そもそもUISSとは、「情報システムユーザースキル標準(UISS:Users' Information Systems Skill Standards)」の略称。ITベンダのような情報サービス産業を対象とした「ITスキル標準(ITSS)」では、ユーザー企業の情報システム部に求められるスキルを的確に表すことができないという問題を解消するために、2005年から経済産業省の委託を受けたJUASが中心となって策定したものだ。つまり、ITSSがIT業界における競争力強化のために作成されたのに対し、UISSは「ITを活用する側」の視点で作成されているのだ。

 また、UISSはITSSの「現場で使えるほど活用側が理解できていなかった」という失敗を踏まえて作成されている。従って、UISSでは導入・運用を見越して、自社に合わせて組み立てるための素材と手順を提供しているだけだ。例えば、ユーザー企業でITプロジェクトを円滑に進めるための「タスク」と「職種」を定義しているものの、その職種名やタスクはあくまで参考レベルの素材でしかない。活用手順も、モデルを示すだけで強制力のあるものではない。そして、「IT人材の持つべきスキルの空洞化」という問題を解決するために、手順の最初にある要求分析を重視しているのが特徴だ。

 その理由を島川氏は、「UISSは、企業の考え方次第で適用の仕方が異なるものといえる。ITSSは合否判定などの比較目的で利用されることが多いが、適用段階で戦略を考える企業はまれだ。企業で活用してもらうには、その企業の風土に合わせた形で運用されるべきだ」と説明。そのためには、ユーザー企業において、システムと経営の両方を理解する上級シスアドこそがこのような運用を実現できる人材だとし、UISSとシスアドが二人三脚で運用していくことが、UISS普及の鍵だとした。

IT環境の急激な変化に対応するには、上級シスアドの高度な技術が必須

 島川氏に続いて、JSDG会員として登壇したのはJSDG特別会員の高島利尚氏。高島氏はJSDG設立当初からさまざまな面でJSDGをサポートしてきた人物で、JSDG特別会員に認定されている。

JSDG特別会員の高島利尚氏

 高島氏は情報システムの変遷に触れたうえで、現在のITの利用状況を説明。インターネット利用者は1997年の1155万人から2005年には8529万人に。企業への普及率も1997年の68.2%から2005年には99.1%にまで増加した。また、ブロードバンドも1999年の22万人から2005年の2330万人に、ホームページの普及率も2001年の66.1%から2005年には85.6%に広がったとした。

 高島氏は、このようにITが普及したことによって市場環境も変化していると指摘。例えば、求人広告は毎日変更からリアルタイム変更へ、地図は毎年更新から毎日更新へと更新頻度を上げた。広告の表示方法も、不特定多数を相手にしたマス広告からターゲティングしたピンポイント広告へ変化してきている。

 こういった変化を受けて、官邸も新しい「IT新改革戦略」を発表。このIT新改革戦略は、日本が目指すべき姿を第一に「ユビキタスなネットワークをセキュリティやプライバシー保護に留意しつつ実現すること」、第二に「それによって世界最高のインフラ・潜在的な活用能力・技術環境を有する最先端IT国家であり続けること」としている。高島氏もこの考えに賛同。ITを戦略的に活用することがアジャイル(俊敏)な経営活動につながるとし、その活動に上級シスアドは取り組んでいくべきだと強調した。

 つまり今後の上級シスアドは、まず現在の経営環境や今後の動向を把握する。そして重要戦略課題を理解したうえで、IT活用によって企業が利益を出す姿を明確に示さなければならないとした。この「IT活用によって企業が利益を出す」ためには、上級シスアドの経営とITを結ぶ高度な技術力が必要であり、グローバル市場を生き抜くのに必須であると会場の上級シスアドたちに葉っぱを掛け、講演を終えた。

 そして、最後にあいさつに立った上級シスアド連絡会会長の山中吉明氏は、「企業におけるITの利活用は日々進化しており、人々の情報リテラシーも相応に向上してきている。当然、シスアドに求められる役割も変化してきている。例えば、企業内の業務改善を推進するリーダーに留まらず、近年では、ITリスクをマネジメントすることもより重要な役割となってきた。個人情報保護や内部統制の重要性が叫ばれる昨今、シスアドも時代が求める新しい役割をまっとうすべく、常に変化し続けていくことが必要だ。時代の波に翻弄されずに、業務改革とITの利活用に軸足を置きつつも、ITを取り巻く環境変化に順応して新たな役割を、シスアド自ら模索していきたい」と語り、研修会を締めくくった。

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