情報漏えい発覚と、未熟さに気付き身を引く女目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(10)(2/4 ページ)

» 2007年09月04日 12時00分 公開
[森下裕史(シスアド達人倶楽部),@IT]

目覚める思い

 八島が提案したのは、今回のプロジェクトが「短時間で何らかの成果を出すこと」が必要とされていることから、一から見直すのではなく、システムをいくつかのサブシステムに分割し、現行システムを最大限生かす方法だった。

 まずは、新生産管理システムを基幹部分として現行システムをリホストし、必要な情報を出せるインターフェイス部分だけを作る。もちろん、継ぎはぎは少し修復するが、抜本的な見直しはしない。時間がないからだ。この部分に手を付けていては納期に間に合わないというのが八島の判断だった。

 そして、今回の表舞台になる生産管理機能は、「営業にメリットがある部分」を優先して開発する。これは前回の打ち合わせで八島が話したように、ある程度ほかの機能から独立させる必要があるので、いくつかの業務を包括して大きな業務グループを作る。

 例えば、新機軸として、まず「RFIDを使ったパレットを用いて、リアルタイムに生産状況が把握できる仕組み」を作る。そして、さらにこの情報を営業用PDAでも参照できるようにする。関連会社や子会社との連携は、この生産管理機能が完成後、順次開発していく。

 独立した機能を完成させてから次の機能を完成させるので、納期や不具合状況に応じてリリース部分を調整することができる。従来のウォータフォール開発ではなく、スパイラル開発による短期リリースが今回のポイントだ。

在庫系を優先させるのは、在庫状況が把握できれば見込み生産や予備発注がなくなって受発注の負担が減る。これにより、不良在庫の改善によるコストダウンが可能になるため、経営陣を一番納得させやすいからだ。しかも、はやりのITはちりばめているうえに、営業や配送などの外部と接する部分なので、世間的にもインパクトは大きいはずだ。

 将来的には、現行システムの基幹部分を再構築して最適化する必要があるが、あらかじめインターフェイスをきちんと決めておけば、今回作るシステムには影響しないし、内部のことなので調整はしやすい。性能的に問題になる前に解決できればいいので、もう少し時間のゆとりはあるというのが八島の考えであった。

坂口 「八島さん、すごいです!! これで全体像の輪郭が見えてきたがしますよ!」

八島 「甘いなぁ、お前。でも僕の頭の中ではもう完成しているよ。後は必要な項目や性能を整理して、まとめればおしまいさ!」

坂口 「そうか、全体像を描くのには、何も調べるだけでなく想像してもいいんですよね。想像した部分の仮定条件だけ整理しておけば、後で修正も掛けられる」

八島 「ついでにいうと、物事に優先順位を付けて、できる内容に絞り込んでしまうことも大切だよなぁ」

坂口 「優先順位ですか?」

八島 「そっ。だから、目標からできることとできないことを分けるんだよ。つまり、できる目標に変更するんだ」

坂口 「えっ? 目標は絶対だと思っていました。そうか……。できない目標は夢と一緒なんですね」

八島 「そういうこと。夢は管理できないもん。でも、夢を忘れちゃ駄目なんだ。それを思い出させてくれたのは坂口だけどね」

 最後のセリフは聞こえない程度の小さい声で、そっとつぶやいた。

坂口 「えっ、なんですか? 何かいいました?」

 八島は照れ隠しするように、わざと無愛想な態度でいった。

八島 「まぁ、取りあえず、この資料を読んで業務との適合性を確認してくれ。こちらで制御できるのは、システムの中のことだけだ。業務すべてがシステム化しているわけではないからな。システムと業務の接点がうまくつながることが、システム成功の最大のポイントだぞ!」

坂口 「はい、ありがとうございました! 早速、戻って調べます」

 坂口は、八島のおかげで豊若に出された宿題のおぼろげな答えをつかんだ気がした。つまり、与えられたスコープ(システム化の範囲)にとらわれるのではなく、コスト(費用)とタイム(納期)とのバランスを考えてスコープを変化させることも重要だということだ。

 目的にとらわれていたばかりに、良いものを作ることに夢中になって、コストとタイムのバランスを無視していた自分に気付いたのだ。気を良くした坂口は、軽い足取りで推進室に戻ると、もう1つの問題が目の前でバタバタしていた。

 取りあえず部署別に並び替えてみようと部屋中に資料を並べていた伊東が、誤ってエアコンの送風ボタンを押してしまったらしい。部屋の中にはバタバタと資料を捕まえようと奮闘する伊東と舞い上がる資料があった。

坂口 「(この問題の答えは、簡単に出そうにもないなぁ……)」

 苦虫をかみつぶしながら、エアコンのスイッチを切る坂口だった。

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