ユーザーの「世界観」を見極めるためには隠れた要求を見極める!(4)(3/3 ページ)

» 2008年01月10日 12時00分 公開
[並川顕,株式会社NTTデータ]
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MOYAにおけるCATWOEの活用

 NTTデータが開発した要求定義方法論MOYAでは、CATWOEを「分析領域定義」タスクと「課題分析」タスクで活用します。「分析領域定義」タスクではXYZ公式を使ってプロジェクトの目的を明らかにする、と連載第2回で説明しましたが、CATWOEを併用することによって、さらに踏み込んだ定義ができるのです。

 今回はさらにCATWOEを使った「課題分析」タスク、それから「課題分析」タスクと深いつながりのある「AsIs分析」タスクについてご紹介したいと思います。

「課題分析」タスク

 顧客の課題を掘り下げて詳細に分析していくのが「課題分析」タスクです。ステークホルダー分析タスクで、前回紹介したリッチピクチャーを使用して浮かび上がった課題について、CATWOEを使ってさらに詳細に分析していきます。

ALT 図2 MOYAのプロセス全体と「課題分析」タスククリック >> 拡大

 CATWOEを使う意義は、Worldviewという背景を踏まえながら課題の真の原因、すなわち「真因」をとらえていくところにあります。今回ご紹介した結婚相談所の事例でいえば、退会する会員が多いことが課題、そしてアドバイザーと会員の間にある「理想の相手」の解釈の違い、これが真因でした。課題の真因に根差した要求こそが、この連載記事のタイトルにある「見極めるべき隠れた要求」なのです。

 ある課題について、どこまでを「ステークホルダー分析」タスクで分析し、どこまでを「課題分析」タスクで分析すべきか、明確な線引きはありません。大まかな指針としては、リッチピクチャーは課題が「どこにあるのか」を探す際に使用し、大体の課題がつかめたら今度はCATWOEでより詳細に分析していくのがよいでしょう。これまで説明してきたツールを、それぞれの特性を生かして使い分けながら分析していくことが大切です。

「AsIs分析」タスク

 「課題分析」タスクである課題について分析を行う際に、業務をより詳細に把握していたほうが分析をスムーズに進められる場合があります。このようなときに実施するのが「AsIs分析」タスクです。

ALT 図3 MOYAのプロセス全体と「AsIs分析」タスククリック >> 拡大

 「AsIs分析」タスクは、いわゆる一般的なビジネスモデリングの作業です。MOYAでは、UMLのアクティビティ図やクラス図などを使って現状(As Is)のビジネスの流れや構造を記述することを推奨しています。ただし、プロジェクトメンバーが親しんでいるほかの表記法があれば、UML以外の表記法を使っても構いません。

 ビジネスモデリングの手法についてはここでは説明を省略しますが、詳しく知りたい方は以下の連載記事などを参照してください。

 なお、MOYAの「AsIs分析」タスクで行うビジネスモデリングで特徴的なのは、現状の業務すべてを分析対象にするのではなく、「課題分析」タスクを行っている最中に、詳細な分析の必要性が認められた業務領域のみにポイントを絞って実施することです。最初からとにかくすべての現状業務を把握しようと躍起になると、徒労に終わるケースが多いのです。MOYAでは、目的や課題といった少し感覚的な部分から分析を始めることによって、分析すべき対象業務や分析の視点を徐々に明らかにしていき、的を絞りながら現状業務をモデリングすることを提案しています。

目指すべきゴールは?

 今回は、課題をより深く知るためのツールとして、CATWOEをご紹介しました。次回は「ゴールモデル」について説明する予定です。これまでさまざまなツールを使って行った分析の結果を踏まえ、各ステークホルダーが目指し、共有すべき「ゴール」を見いだす方法を解説します。

筆者プロフィール

並川 顕(なみかわ あきら)

株式会社NTTデータ 技術開発本部 ソフトウェア工学推進センタ

国際基督教大学教養学部を卒業後、NTTデータに入社。大小さまざまなシステム開発プロジェクトに従事する。この経験を生かして、現在はお客さまの要求をカタチにする手法「MOYA」の開発と実践を行っている。

MOYAポータルサイト: http://www.nttdata-moya.jp/



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