そもそもマーケティングって何?マーケティング入門〜売れる仕組みの作り方〜(1)(2/3 ページ)

» 2008年03月07日 12時00分 公開
[斉藤孝太,株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)]

会社経営におけるマーケティングの位置付け

 では次に、「マーケティング=売るための仕組み作り」を、より深く理解するために、「会社経営におけるマーケティングの位置付け」を考えてみましょう。

 会社は「経営理念・ビジョン」を掲げて、それを実現することを最も重要な目的としています。そのための「手段」として、人・モノ・カネという資源をどのように活用していくか検討します。それが「経営戦略」というわけです。

 その経営戦略を受けて、研究・商品開発・調達・生産・物流・マーケティング・財務・人事・組織・情報システムのそれぞれにおいて、人・モノ・カネという資源をどう運用していくか、個別戦略に落とし込んでいきます。

 ここでようやくマーケティングという言葉が出てきました。すなわち、マーケティングとは経営理念・ビジョン、経営戦略の下位階層に位置付けられる、数ある個別戦略の1つなのです。

 従って、マーケティング戦略には経営理念、経営戦略の方向性が色濃く反映されることになります。決して、それ単体で存在するわけではなく、あくまで会社の経営理念・ビジョンの実現、経営戦略遂行のための、1つの重要なファクターにすぎないのです。

売れる仕組みを作る4つの「P」

 ではマーケティング戦略とはどんなものなのでしょうか? それを表す最も重要な視点が、いわゆる「マーケティングの4P」といわれているものです。

 マーケティングの4Pとは、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の4つの要素のことです。すなわち、「どんな商品を、幾らで、どこで、どのように売るのか」といったように、戦略を組み立てることをいいます。消費者の視点でいえば、「あの商品、欲しいな。幾らぐらいなら買おうかな。どこで買おうかな。どうせ買うなら、あそこで買おうか」といった具合になります。

 このように「4P」でシンプルにとらえると、マーケティング=売れる仕組み作りについて、ポイントを取りこぼすことなく、しっかりと考えることができます。例えば、商品力に自信を持っているメーカーは、「商品」や「価格」ばかりを考え、「流通」や「販売促進」がお粗末になりがちなものですが、4Pでマーケティングを考えていれば、そういうこともないわけです。

4Pは互いに影響を与え合う

 また、4つのPはそれぞれが独立して成り立っているのではなく、1つのPが、ほかの3Pに影響を与えることも大きな特徴です。例えば、ある化粧品メーカーが、無添加・自然成分で作った化粧品を開発したとします。その場合、以下のような4Pのパターンが考えられます。

  • 「無添加・自然成分で作った化粧品を、1本8000円で、百貨店で、販売員の応対で売る」
  • 「無添加・自然成分で作った化粧品を、1本3000円で、ドラッグストアで、売場作りに注力したセルフ方式で売る」
  • 「無添加・自然成分で作った化粧品を、1本5000円で、カタログ通販で売る」

 どうでしょう? 同じ商品でも、そのほかの3Pの設定次第で、マーケティング戦略の方向性が大きく変わってくることが分かると思います。

 加えて、価格(Price)が違うと、広告宣伝や商品パッケージに投入できるコストも変わってきます。高価格に設定すれば、広告宣伝に有名なタレントを使うといった選択肢が出てきますし、パッケージに凝った素材を使うこともできます。

 販売チャネル(Place)を変えると、競合商品が変わってきます。例えば通販の場合では、他社通販の化粧品が競合となります。ドラッグストアであれば、化粧品売場内の他商品と競合することになります。

 競合商品が変われば、当然、消費者への訴求ポイントも変わってきます。1つ変わると、すべてが変わってくるわけです。ですから、売れる仕組みを作るためには、4Pについてバランスよく、先々の展開まで含めて考えることが大切なのです。

 といっても、こうしたマーケティングの4Pの発想法を、ちょっと面倒に思う人もいるかもしれません。そこでこの考え方を身に付ける上で、手っ取り早い方法を紹介しておきましょう。最近自分が購入した商品を、4Pの視点で考えてみればいいのです。

 例えば私は最近紳士スーツを購入したのですが、「イギリス製の生地で作られたベーシックなシルエットのスーツを、6万5000円で、スーツ専門店で、顧客管理台帳に基づいた丁寧な接客を受けて購入した」と整理することができます。これを毎日の習慣にすると、4Pの考え方が、すぐ頭に浮かぶようになります。

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