さて、以上のように「4Pの視点」は、マーケティング戦略を考えるうえで非常に重要な道標となります。これはいつの時代も変わりません。今後も続く鉄則といっていいでしょう。しかし、4Pそれぞれの具体的な実行方法については、時代とともに変化していきます。ここで登場するのがITツールというわけです。
特に近年は企業活動の多くにITシステムがかかわっています。マーケティング戦略においても、以下のように4Pそれぞれの戦略策定、実行に役立つITシステムが存在しています。
商品開発とは従来、カンや経験が重んじられてきた世界でした。しかし最近は、データマイニングやテキストマイニングといった手法を用いて、顧客情報を積極的に活用する開発が行われています。併せて、ネット上で顧客から意見を収集する取り組みも行われています。
アパレルやスーパーマーケット業界のような、季節やタイミングによって価格を変更する業種では、その価格設定は勘や経験で行われてきました。しかし近年は、その時々で消費者に受け入れられやすいプライシングを算定するシステムを使い、利益最大化を図る動きが盛んになっています。
かつてはリアル店舗が中心だった流通チャネルですが、ネット通販(中でもモバイル通販の勢いには目を見張るものがあります)の登場により、販売チャネルの選択肢が拡大しています。また、ネットは顧客側にとって購入前の情報収集手段として、リアル店舗での購買行動にもかかわっています。ネット通販は購入チャネルとしては3%に満たない規模ですが、市場への影響力はかなり大きいといわれています。
SNSやブログといったCGM系のツール、顧客へのアクションを自動的に行うキャンペーンマネジメントシステム、ネット上の顧客行動に合わせて広告を表示する行動ターゲティング広告など、新しいツールが次々と開発されています。4Pの中でも、最も進展著しい分野です。
以上のように4Pそれぞれについて、戦略実行をサポートするITツールがそろっています。ただ重要なのは、ITを使ったからといって、必ずしも望ましい効果が得られるわけではない、ということです。
これは多くの企業がIT投資に失敗しているケースからも明らかです。失敗の原因は、4Pのどれかに最新のITツールを使うと、その部分に過大な期待をしてしまい、ほかの3Pが甘くなる傾向があるためです。
例えば、4Pの1つである「流通」において、ネット通販を選択したとします。その場合、商品はリアル店舗で売れている商品ではなく、よりオリジナリティの高い商品である必要があります。価格については、リアル店舗よりも価格比較が簡単になる分、より慎重に設定しなければなりません。
送料の扱いも重要なポイントになります。販売促進においては、SNS・ブログといった口コミ系の活用が必須でしょう。このように、「流通(Place)」に最新ツールであるネット通販を採用した場合、ほかの3Pにも、それとバランスの取れた戦略が求められるのです。
次回以降、4Pの考え方や関連するITツールについて、詳しく述べていきたいと思います。
斉藤 孝太 (さいとう こうた)
株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)代表取締役。
大学卒業後、広告代理店に企画営業として勤務し、主に大手マンションデベロッパーの販売促進を担当。その後、企画・マーケティング会社にてマーケティングプランナーとして勤務。大手メーカーなどのマーケティング計画策定から販売マニュアル作成などを手掛ける。 その後、マーケティング・コンサルティングファームに入社し、多数の顧客案件を成功に導く。現在、店舗系ビジネスにおける顧客との関係性強化や、CRMを販売現場に導入するコンサルティングを実施している。
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