抜本的な効率化が環境を守る〜キリンビール〜各社に聞く「グリーンITにどう取り組むか」(1)(1/2 ページ)

グリーンITという言葉は、日本ではまだ注目され始めたばかり。今後、定着していくことは間違いないが、「効率化と環境配慮の両立」は、企業にとって決して簡単なテーマとはいえない。先進各社は今、このキーワードをどう受け止めているのだろうか。現在の環境施策と今後の展望から、各社にとっての「グリーンIT」を聞く。

» 2008年03月21日 12時00分 公開
[内野 宏信,@IT]

CO2排出量、2010年目標を前倒しで達成2排出量、2010年目標を前倒しで達成

 製造、物流から再資源化・廃棄まで、商品ライフサイクルのすべてにおいて、環境負荷低減を図っているキリングループ。「3つのR(Reduce・Reuse・Recycle)と2つのA(Assessment・Audit)」という環境方針のもと、ライフサイクルの各段階における目標値を設定し、着実な改善に努めている。

 なかでもグループの中心となるキリンビールは2006年、ビール工場においてCO2総排出量34万2000トン、CO2排出原単位0.133トン/キロリットルを記録。総排出量、原単位、ともに1990年比で25%以上削減という2010年目標を前倒しでクリアした。

 同社の取り組みは実に幅広い。例えば従来比21%を軽量化したリターナブル大ビンや、同じく26%軽量化したアルミ缶を開発し、無駄な資源の発生を抑制。

ビンの断面写真。強度を維持しつつ、薄くして軽量化

 2005年にはビンとアルミ缶、ともに90%を超えるリサイクル率を達成したほか、販売店が容器保証金として1本5円でビンを引き取り、ビン返却時に返金する回収・再使用の取り組みも継続している。

 一方、事業活動の中心となる生産過程では、2007年までに5事業所2工場で太陽光発電を導入。9工場でCO2排出量の少ない天然ガスへの燃料転換を実施した。

 物流過程では、2006年までに20トン車の大型トラック315台を25トン車に切り替えた。さらに従来の16パレット積みから18〜20パレット積みとして積載率を向上し、総車両台数を削減。加えて昨年度からは、従来64ケース1ユニットで届けていた350ml缶を、取引先の了解を得て72ケース1ユニットで届ける取り組みをスタートした。

キリンビールの2006年の実績(キリングループCSRレポート2007より抜粋)

 この結果、生産活動におけるCO2排出量は34万2000トンと、前年比0.6%減。物流活動は9万8000トンで前年比11.2%増となったが、輸送量が前年より7%増加したなかでは、まずまずといえる数値を残した。

環境対策には、継続的に行える「正しい効率化」が必要

 同社SCM本部SCM推進部SCM推進担当主査の近藤太郎氏は、「すべてに対して無駄なく、効率よく、より良い品質を目指すのが当社のテーマ。それが業務効率化やコスト削減、ひいては環境負荷低減につながる」と話す。

キリンビール SCM本部SCM推進部SCM推進担当主査 近藤太郎氏

 事実、同社は以前からさまざまな効率化に取り組んできた。なかでも環境負荷の高い物流部門では1998年、日本国内でのSCM黎明期に「ビアダス(beerdas)」と呼ぶ需要予測システムを核とした需給統合システムを構築している。

 これにより、過去の受注データから生産量を決め、「どの工場の、どのラインで、いつ、どれだけ出荷するか」といった需給計画を一元的に管理、実施する体制を築いた。システムはサプライヤーや特約店とも連携。在庫、受注データなどをオンラインで交換してサプライチェーンの効率化を図り、大幅な物流コスト削減に成功している。

 さらに、2006年には「物流本部」から「SCM本部」に改変。サプライヤー、卸といった社外の関係各社をはじめ、社内営業部門とも連携を強化し、サプライチェーンのさらなる効率化に乗り出している。ただ近藤氏は「市場環境や顧客ニーズは刻々と移り変わっていく。効率化に終わりはない」と指摘する。

 「近年は、グリーンITという言葉に象徴されるように、効率化だけではなく環境という観点が不可欠となった。常に現状を疑い、市場変化にスピーディに反応できる体制へ改善を重ね続けている」

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