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» 2008年03月24日 12時00分 公開

プロジェクトは、計画通りに進まなくて当然やる気を引き出すプロジェクト管理(3)(1/2 ページ)

プロジェクトマネジメントは簡単なことを確実に実行するだけのはずなのに、実際にはなかなか計画通りには進まない。現実世界のプロジェクトマネジメントの難しさは一体どこに原因があり、そしてどのように克服すればいいのだろうか?

[安達裕哉,トーマツ イノベーション]

簡単なはずのプロジェクト管理が難しいのはなぜ?

 前回「プロジェクト管理は『簡単なことを、確実に』」では、プロジェクトマネジメントとは次の3つを行うことだと説明しました。

  1. 成果の設定
  2. 仕事の設計
  3. PDCAサイクルを回すを回す

 実際に行うべきタスクは、下図の通りです(図1)。これも、前回お話しした通りです。

ALT 図1 プロジェクトマネジメントのタスク(出所: トーマツ イノベーション)

 これも前回の繰り返しになりますが、プロジェクトマネジメントそのものは、簡単なことを確実に行うだけなのです。

 それでは、なぜプロジェクトで問題が続発するのでしょうか? なぜ思った通りの成果が上がらないのでしょうか? 今回は、「なぜプロジェクト管理が難しいのか」を考えることで、プロジェクトの本質とは何か、そしてプロジェクトで発生した問題をどのように解決すればいいのかについてお話ししたいと思います。

プロジェクト管理が難しい本当の理由

 プロジェクトマネジメントがなぜ難しいか、その理由は2つあります。これはとても重要なポイントですので、しっかり把握してください。

  1. 完璧な「成果の設定」と「仕事の設計」が不可能である
  2. プロジェクトが「うまくいっているのか」「うまくいっていないのか」の判断が難しい

 トーマツ イノベーションにおいて、プロジェクトにおけるトラブルの事例を200以上検証した結果、主たるトラブルの原因が上記2点にあることが分かりました。これらが具体的にどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。

完璧な「成果の設定」と「仕事の設計」は不可能

 例えば、完璧に「成果の設定」と「仕事の設計」ができている状態とはどのような状態でしょうか? 想像してみてください……。

  • 各関係者の要望が100%反映されたプロジェクト目標が出来上がり、非の打ちどころがない
  • 仕様変更が絶対に発生しない要件定義ができている
  • まったく漏れのないWBS(作業分解図)が出来上がっているWBS(作業分解図)が出来上がっている

 いかがでしょうか? おそらく、経験豊富なプロジェクトマネージャであれば、「こんなことは非現実的だ」と思うでしょう。

 まったくその通りです。プロジェクトは、さまざまな関係者や外部要因から絶えず影響を受けます。人間が100%未来を予知できない以上、「仕様変更のない要件定義」を行う、「漏れのないWBS」を作る、などということは本質的に不可能だと考えるべきでしょう。

 従って、プロジェクトマネージャは常に不確実な要件や不確実なWBSなどを抱えてプロジェクトに臨みます。すなわち、「不確実性」というリスクを常に意識しておく必要があるのです。

プロジェクトの状況を見切るのは難しい

 プロジェクトのトラブルは、発見と対処が早ければ早いほど傷は浅く済みますが、プロジェクトがある程度大きくなると、プロジェクトが「うまくいっているのか」「うまくいっていないのか」の判断が難しくなります。例えば、次のような事例です。

  • プロジェクトメンバーに「割り当てた作業の終了まで後どれぐらいかかるか」と聞いたところ、「あと2日で終わります。」と回答があった。2日後に同じ質問をしたところ、「予想より時間がかかって、後2日かかりそうです」といわれた。この場合、トラブルが起きていると判断したほうがいいか?
  • 一見、プロジェクトは順調にいっているように見えるが、誰かがトラブルを隠しているかもしれない。どのようにすれば見えないトラブルを発見できるか?
  • 顧客からの回答が遅く、要件確定が3日遅れた。これはトラブルととらえるべきか?
  • プロジェクトメンバーが、プロジェクトマネージャが依頼したもの以外の仕事をやっているようだ。大丈夫だろうか?
  • 顧客側のプロジェクト責任者が変更になった。「いままでと同じように進めてくれ」といわれたが、本当だろうか? 何かアクションを起こした方がよくないだろうか?

 いくつか例を挙げてみましたが、どれも判断に迷いそうなものばかりです。しかし、判断を先送りしたところで、目に見えないトラブルの種が消えてなくなるわけではありません。

 前回説明した通り、プロジェクトを管理するにはPDCAサイクルを回して常に問題が発生していないかチェックし、問題を発見したらすぐに対策をとることが重要です。しかし、そもそもプロジェクトが「うまくいっているのか」「うまくいっていないのか」の判断ができなければ、PDCAサイクルを回して対策を打つことすらできないのです。

 今年ビル・ゲイツ氏を抑えて世界一の資産家となった、バークシャー・ハサウェイ社CEOのウォーレン・バフェット氏の言葉に、「リスクは、何をやっているかよく分からないときに発生する」というものがあります。これは投資について語った言葉ですが、プロジェクトマネジメントにおいてもまったく同様だといえるでしょう。

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