プロジェクトマネジメントは簡単なことを確実に実行するだけのはずなのに、実際にはなかなか計画通りには進まない。現実世界のプロジェクトマネジメントの難しさは一体どこに原因があり、そしてどのように克服すればいいのだろうか?
前回「プロジェクト管理は『簡単なことを、確実に』」では、プロジェクトマネジメントとは次の3つを行うことだと説明しました。
実際に行うべきタスクは、下図の通りです(図1)。これも、前回お話しした通りです。
これも前回の繰り返しになりますが、プロジェクトマネジメントそのものは、簡単なことを確実に行うだけなのです。
それでは、なぜプロジェクトで問題が続発するのでしょうか? なぜ思った通りの成果が上がらないのでしょうか? 今回は、「なぜプロジェクト管理が難しいのか」を考えることで、プロジェクトの本質とは何か、そしてプロジェクトで発生した問題をどのように解決すればいいのかについてお話ししたいと思います。
プロジェクトマネジメントがなぜ難しいか、その理由は2つあります。これはとても重要なポイントですので、しっかり把握してください。
トーマツ イノベーションにおいて、プロジェクトにおけるトラブルの事例を200以上検証した結果、主たるトラブルの原因が上記2点にあることが分かりました。これらが具体的にどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
例えば、完璧に「成果の設定」と「仕事の設計」ができている状態とはどのような状態でしょうか? 想像してみてください……。
いかがでしょうか? おそらく、経験豊富なプロジェクトマネージャであれば、「こんなことは非現実的だ」と思うでしょう。
まったくその通りです。プロジェクトは、さまざまな関係者や外部要因から絶えず影響を受けます。人間が100%未来を予知できない以上、「仕様変更のない要件定義」を行う、「漏れのないWBS」を作る、などということは本質的に不可能だと考えるべきでしょう。
従って、プロジェクトマネージャは常に不確実な要件や不確実なWBSなどを抱えてプロジェクトに臨みます。すなわち、「不確実性」というリスクを常に意識しておく必要があるのです。
プロジェクトのトラブルは、発見と対処が早ければ早いほど傷は浅く済みますが、プロジェクトがある程度大きくなると、プロジェクトが「うまくいっているのか」「うまくいっていないのか」の判断が難しくなります。例えば、次のような事例です。
いくつか例を挙げてみましたが、どれも判断に迷いそうなものばかりです。しかし、判断を先送りしたところで、目に見えないトラブルの種が消えてなくなるわけではありません。
前回説明した通り、プロジェクトを管理するにはPDCAサイクルを回して常に問題が発生していないかチェックし、問題を発見したらすぐに対策をとることが重要です。しかし、そもそもプロジェクトが「うまくいっているのか」「うまくいっていないのか」の判断ができなければ、PDCAサイクルを回して対策を打つことすらできないのです。
今年ビル・ゲイツ氏を抑えて世界一の資産家となった、バークシャー・ハサウェイ社CEOのウォーレン・バフェット氏の言葉に、「リスクは、何をやっているかよく分からないときに発生する」というものがあります。これは投資について語った言葉ですが、プロジェクトマネジメントにおいてもまったく同様だといえるでしょう。
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