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» 2008年03月24日 12時00分 公開

プロジェクトは、計画通りに進まなくて当然やる気を引き出すプロジェクト管理(3)(2/2 ページ)

[安達裕哉,トーマツ イノベーション]
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プロジェクト管理で最も重要な課題

 以上のことから、プロジェクトマネジメントで最も重要な課題は、

  1. 「『成果の設定』と『仕事の設計』は不確実である」というリスクへの対処
  2. プロジェクトが「うまくいっている」「うまくいっていない」の判断

の2点に集約されるといえます。

 まずは、1つ目の課題から見ていきましょう。前述の通り、「成果の設定」と「仕事の設計」には本質的に不確実性が付きまといます。このリスクに対して、どのように対処すればいいのでしょうか?

 下の図をご覧ください(図2)。

ALT 図2 「成果の設定」と「仕事の設計」のリスクを減らすには(出所: トーマツ イノベーション)

 上図の通り、「成果の設定」と「仕事の設計」におけるリスクを減らすには、大別して5通りの方法が存在します。

  1. 顧客に要件定義を依頼
  2. 契約の見直し
  3. 「成果の設定」「仕事の設計」の精度向上
  4. 関係者への説得・承諾
  5. 追加要求の影響を最小化

 もちろん、リスクへの対処方法はこれですべてとは限りません。しかしトーマツ イノベーションが行った調査では、プロジェクトマネジメントに優れた会社がリスクに対処する際には、この5つの施策の中からその場に適したものを選択し、確実に実行していることが多いという結果が出ています。

 では、これら5つの施策について、順を追って説明していきましょう。

顧客に要件定義を依頼する

 1つ目の施策は、自社で要件定義作業を請け負わず、顧客側で要件定義を行ってもらう方法です。リスク管理用語では、「リスクの回避」と呼ばれる対処法になります。

 初めての顧客との仕事や、ノウハウのない業務のシステム開発などは、非常にリスクの高い仕事です。そのようなケースでは、上記2?5の施策すべてをとっても、なおリスクが大きいと判断されるかもしれません。その場合は、システム開発工程の中で最もリスクの高い要件定義の作業を回避することを視野に入れるべきです。

 ただし、これはプロジェクトマネージャの判断だけで実行できる施策ではありません。顧客との関係や自社の売り上げなども考慮に入れなければ最終的な判断は下せないでしょうから、営業担当者やマネジメント層と協議した上で判断する必要があります。

 場合によっては、取るべきでない仕事を断る営業力も必要となるのです。プロジェクトマネジメントのトラブルは、プロジェクトマネージャだけで解決できるわけではありません。一時の売り上げと引き換えにリスクが非常に高い仕事を請け負った場合、プロジェクトの行く末がどうなるかは推して知るべしでしょう。

契約の見直し

 2つ目の「契約の見直し」も1つ目のものと同じく、ビジネス的な見地からの施策です。特に、リスクの高い要求定義の作業を請け負う際の契約は、見直してみる価値があります。

 顧客の業務に最も詳しいのは、顧客自身です。その顧客が要件定義を真剣に行わない限り、不確実性のリスクは増大します。そのような状況においては、いくらプロジェクトマネージャが詳細なWBSを作成しようと、必ずトラブルが発生します。

 このリスクを完全に回避するには、1つ目の施策のように要件定義の作業自体を回避し、顧客自身にすべてを任せてしまう以外にありません。しかし、たとえ要件定義の作業を請け負う場合でも、その契約形態を見直すことによってリスクを軽減させることが可能なのです。下の図をご覧ください(図3)。

ALT 図3 要件定義を準委任契約で受託する(出所: トーマツ イノベーション)

 上の図にある通り、「請負契約」と「準委任契約」とでは、要件定義工程のリスクの度合いが大きく異なります。非常にリスクの高いプロジェクトで要件定義を請け負う場合は、請負契約ではなく準委任契約で受託することも検討に入れるべきでしょう。

 もちろん、これも1つ目の施策と同様、プロジェクトマネージャだけで判断できるものではありません。自社の営業担当者やマネジメント層と相談し、それぞれの契約形態におけるビジネス上のメリット・デメリットと、プロジェクトマネジメント上のリスクとの間のバランスを図り、最終的な判断を下す必要があります。

ビジネス的観点からの抜本策

 「ヒアリングの精度を向上させる」「WBSの漏れを少なくする」など、プロジェクトの作業の範疇でリスクを減らしていくことはもちろん大事です。しかし、今回説明したような、経営や契約の観点から根本的な対策を行うことも、また非常に重要なのです。プロジェクトマネージャは常にこのことを念頭に置き、自社の営業担当者やそのほかの関係者とコミュニケーションをとっていく必要があります。

 リスクを減らすための5つの施策のうち、残り3つ(「『成果の設定』『仕事の設計』の精度向上」「関係者への説得・承諾」「追加要求の影響を最小化」)については、次回で詳しく説明します。さらにその後、プロジェクトのトラブルを発見するためのポイントについてもお話ししていきたいと思っています。

筆者プロフィール

安達 裕哉(あだち ゆうや)

トーマツ イノベーション株式会社 シニアマネージャ

筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーション株式会社に入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。


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