ITサービス産業で見られる元請け、下請けのピラミッド構造が各社の労働生産性にも強い影響を与えることが情報処理推進機構(IPA)が4月11日に発表した29回目の「情報処理産業経営実態調査報告書」で分かった。IPAは「元請企業は労働集約的な業務を下請けに外注化する傾向がある」と指摘している。
調査は国内の受注ソフトウェア開発、ソフトウェア販売、システム管理、運用受託、インターネット関連などの企業が対象。4000社に調査票を発送し、723社が答えた。有効回答率は18.1%だった。
労働生産性は、営業利益などの付加価値を労働投入量(労働時間×従業員数)で割った値(労働生産性=人件費+リース・レンタル料+減価償却費+地代家賃+租税公課+営業利益を、労働時間×従業員数の値で割る)。自社を元請けと考える受注ソフトウェア企業の労働生産性は6415円だったが、下請け企業は3719円と大きな差が出た。元請けの場合は、自社内でソフトウェア開発を行っている企業と、外注業者を使ってソフトウェア開発を行っている企業の労働生産性に大きな違いはなかった。
しかし、下請けでは「元請会社は系列会社(あるいは親会社)である」と回答した企業の労働生産性が「際立って低い結果となっている」(IPA)。下請企業の労働生産性の低さは、請ける仕事の単価の安さが要因の1つとみられる。
2005年度から2006年度にかけての情報処理産業全体の売上高は2.5%増で4年連続プラス成長となった。セキュリティやコンテンツ関連、日本版SOX法などの需要拡大が貢献した。業種別ではソフトウェア業が0.9%の成長、情報処理サービス業が4.7%の伸びだった。情報処理サービス業のうち、インターネット関連分野は18.1%と高い伸びを示した。売上高営業利益率も改善し、全体では2005年度の3.7%が2006年度は4.0%となった。
業界全体の好調を受けて従業員数も増えている。2006年度の情報処理産業全体の従業員数は前年度から4.6%増。管理・営業、その他要員が12.4%の伸びで、技術・開発要員は2.6%の増加にとどまった。対して、労働時間は減少傾向にある。所定内労働時間は2005年度が1862時間で2006年度は1798.6時間に減少した。残業時間も263時間が229.3 時間に減った。
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