情報処理推進機構(IPA)の理事長に4月1日付で就任した西垣浩司氏は5月1日、会見し、オフショア開発で存在感を増す中国やインドのITサービス企業に対抗するために、日本のITエンジニアの「まずはボリュームを増やしていかないといけない。さらに未踏ソフトウェア創造事業でとんがった部分を引き上げていかないといけない」と話した。地方を含めてIT業界の今後を不安視する声もあるが「私は楽観している」と述べた。
西垣氏はNECの元社長で、民間出身者として初めてIPA理事長に就任した。同氏はNEC時代にオフショア開発を担当。今年2月にもインドを訪問し、「(ITエンジニアの)質と量に圧倒された。中国もものすごい勢いで(ITエンジニアの)数が増えている」との感想を持ったという。そのうえで「日本のソフトウェア産業そのものがオフショアの攻勢を受けながら、質・量とも世界と伍していけるのか考えていかないといけない」と指摘した。
量を増やすために西垣氏が期待するのは2009年に開始する「ITパスポート試験」。同試験は初級システムアドミニストレータ試験を部分的に吸収する内容だが、ITエンジニアだけでなく、一般の職業人も対象にITの基礎知識を問う。同氏は「将来、情報処理技術者として生きていく以外の人もリテラシーとして取得すべきだと考えられるくらいになればすばらしい」と期待を示し、「企業サイド、学校サイドに広く働きかけながら、日本のITリソースの底上げを実現したい」と述べた。
質では、既存の未踏ソフトウェア創造事業を重視し、「有望な人をどんどん引き上げていき、人材育成につなげることを地道にやっていく」と表明。笹田耕一氏が未踏ソフトウェア創造事業で行ったRuby関連の開発などを説明し、「Rubyは島根県。こういうものが出てくれば地方でも非常に力になる」と述べ、未踏ソフトウェア創造事業に期待を示した。また、自動車を中心に組み込みソフトウェア開発の需要が急増しているとして、「インド、中国のオフショア開発を使っても絶対に人材が足りなくなる。そうなると地方でもこれからは仕事は出てくるし、地方のソフトウェア企業を使わないとやっていけなくなる。マクロには非常に楽観している」と話した。
西垣氏はまた、学生の間で就職先としてIT業界の人気が低下していることについて、IPAの調査結果を示して「マスコミで言われるほどには低迷していない」と指摘した。西垣氏はIPAが5月27〜28日に開催するイベント「IPAX2008」で、IT産業界の代表と10人の学生代表が議論するセッションに参加する予定で、「そこで私の考えを述べたい」としている。
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