これからご紹介する内容は、わたしが前職在職中にある営業部局から事業戦略の見直しを行うので側面支援してほしいという依頼を受け、特にIT経営の観点からアドバイスを行った際に作成したものです(骨子が分かる程度に修正してあります。ご了承ください)。
まず、見直すべき事業の範囲を定義します。それぞれの事業に対してどうしたいのか? つまり、事業主体として何を期待するのかを明確にします。そして、その期待を測定する定量的な「ものさし」を設定します。これは即決が難しいので、評価軸の候補群から評価者と実務者がピンとくるものを選びます。
そして評価軸が決まったら、次にそれらを構成要素(評価指標)ごとに分解し、その中から事業主体が事業を遂行する中で直接影響を与えることができ、かつITツールなどを使って常時効果測定ができる項目を見付けます。さらにその中から相関関係の少ない3?5個をKPIに設定します。
最終的に、対象事業の評価軸とKPIを決め、事業主体者の期待の実現に不可欠な打ち手(事業戦略)を決めたら、それらを矛盾のない形でIT戦略に落とします。
なお上図内の目標値は、以下のExcelシートを使用して事業戦略全体から見た投資とリターンの関係から、新規システム投資に対する期待値を算出したものです。
設備投資もIT投資も投資の一要素ととらえ、投資総額に対してリターンはどうか? という観点で事業採算性を検証すれば、おのずとシステム投資の内容が事業投資全体から見て妥当かどうかの判断が可能になります。システム開発の詳細については、さらにコスト削減(つまり投資額を逓減)できる点はないかを専門家と話し合うというプロセスを設定すればよいでしょう。
こうしたやり方は営業部門や事業開発の通常の仕事の進め方と同じでしょうから、営業パーソンに違和感なくプロジェクトに参加してもらう正攻法だと思います。同じような問題でお困りの方はぜひとも実践してみてはいかがでしょうか?
今回はわたしが実践してきた「外向きのIT化」に関するIT投資効果の評価方法についてお伝えしましたが、「内向きのIT化」に関する投資効果測定の概要については紙面の関係上割愛しております。この部分について分かりやすくまとめられている@IT情報マネジメントの記事を見つけましたので、興味のある方は、以下の関連記事をご覧ください。
▼著者名 齋藤 雅宏(さいとう まさひろ)
ライト・ハンド株式会社
1992年に三菱商事(株)に入社し、システム開発部に配属される。数百万ステップ規模の会計系基幹システムの開発・保守に従事。その後、食品VANの開発、ECサイトの企画・開発、新規事業の立ち上げ、事業投資先の経営支援、内部統制構築など、各種案件を経験する。これらの経験をノウハウ化すべく、2001年10月から2004年3月まで東京工業大学 社会理工学研究科経営工学専攻の非常勤講師に就任し、事業創造論を学部生および院生に指導。2007年、三菱商事(株)退社後は、ベンチャー企業へのハンズオン型経営支援(支援例:(株)クエスト・ワン)を通じて、『IT経営実践』の普及をライフワークとしている。
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