SAP、REACHや温室効果ガス管理に対応した環境ソリューション国ごとに異なる環境規制にも対応

» 2008年06月10日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 SAPジャパンは6月10日、報道関係者向けの説明会を実施。同社の環境対応ソリューションを、SAPジャパン インダストリー戦略本部 化学・石油・ガス産業担当部長 安並裕氏が解説した。

 安並氏は、「昨今、各社が環境への取り組みを強化しており、企業の環境報告書にはかならず『REACH』や『グリーン購買』『環境負荷』といった言葉が並んでいる。SAPでは、これらに対応するソリューションや機能を提供できるように機能拡充を図っている」と説明。具体的には、「SAP Environment,Health&Safety(EH&S)」「SAP Environmental Compliance」「SAP REACH Compliance」の3製品で対応する。

安並氏写真 SAPジャパン インダストリー戦略本部 化学・石油・ガス産業担当部長 安並裕氏

 安並氏は企業の現状を、「環境安全衛生に関するコンプライアンスや内部統制強化への意識が高まっている中、従来はERPや法規制データベース、成分情報などの重要データが国内外に分散していた。それをSAPで一元管理し、重要データを1箇所に集めることでセキュリティの向上を目指す」と説明した。

 SAP EH&Sは、コンプライアンスや品質を監視するために「基本データ&ツール」「製品安全」「労働安全」「危険物管理」「健康管理」「廃棄物管理」の6つのコンポーネントで構成される。SAPによると、本社の法規制データや研究所の物性データ、工場の販売・製造・購買データなどをSAP EH&Sで一元管理することで、MSDS(Material Safety Data Sheet)などの規制に必要な文章を35カ国語で自動出力することが可能だという。

 化学物質情報の一元管理も可能。「例えば、シャンプーに含まれる界面活性剤の情報などを属性情報として登録することで、その化学物質に関するあらゆる属性を管理することができる」(安並氏)とした。また、化学物質のボリュームトラッキング機能として、実際に製造・購入・販売した物質量をモニタ・レポートする機能も提供している。これにより、「国ごとに異なる規制にも対応できる。例えば、A国ではBという素材が○○グラム入っていると輸出規制になる、という場合でも、素材レベルで管理することが可能だ」(同氏)という。

 SAP Environmental Complianceは、企業の各サイトの電力、ガス、重油などの使用量からGHG(Greenhouse Gas)の排出状況を把握・モニタリングし、企業グループでの取得排出権を管理できるもの。現状、国ごとに温室効果ガスの排出量の法令が定められているため、国ごとの法令に沿った排出量算定に対応し、法人単位や組織単位での排出量計算が可能。ロケーションやシナリオを選択しながら計画や実績を管理することもできる。

 SAP REACH Complianceは、EUにおける環境対策のための法律である「REACH(Registration,Evaluation,Authorisation and Restriction of Chemicals)」に対応するための製品で、2008年7月に出荷開始予定。REACHでは、政府が定めた物質を年間1トン以上製造・輸入する企業が対象となるほか、製品製造に化学物質を使用するユーザー企業も対象となる。SAP REACH ComplianceではREACHへの対応として、化学物質管理のためのデータベースを提供するほか、タスク管理やレポート&分析機能、上流・下流業界とのコミュニケーション機能を提供する。

 安並氏は、「SAP EH&Sは欧米を中心に1400社で導入されているほか、SAP Environmental Complianceも57社で採用されている。導入企業は数百人規模で数百億円規模の企業が中心だ。日本では、国内事情を加味した導入支援体制を整備したい。ただし、いまのところ『日本ならではの機能』は予定されていない」とコメントした。

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