コンタクトセンターの価値を高めるテキストマイニングテキストマイニングの基礎(2)(2/2 ページ)

» 2008年06月10日 12時00分 公開
[神田晴彦,野村総合研究所]
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求められるテキストマイニング技術

 さて、ここまで幾つかの事例を見てきたわけであるが、このような成功を生み出すテキストマイニング技術がどのようなものかについては、前回の「膨大なテキストからビジネスのヒントを探せ」を読んでほしい。では、そのテキストマイニングに、どんな機能があるかを見ていこう。

どんな分類があるか

 1番目に挙げられるのは分類機能である。コンタクトセンターに寄せられた内容を分類し、集計をスピーディに実施する。この集計を分類する方法に大きく2つがある。それは、自動分類と任意分類(振り分け)とがある。

 1つ目の自動分類というのは、指定した数に基づいて自動的に分類する方法である。

 大雑把に説明しよう。分類する数を分析者が指定すると、その数にテキストマイニングソフトが自動的に分類する。代表的な方法としてクラスタリングという手法がある。この方法は、分析を始めたころや、報告書式の項目が未決定の場合に限っては非常に便利である。一方で、継続的に同じ項目で集計していくには、その後のチューニングにかなりのテクニックを要するケースが多い。

 2つ目の任意分類(振り分け)というのは、指定した分類条件にテキストデータを分類していく方法である。簡単に説明すると、任意の単語を選び、その単語が含まれているか否かで分類を自動的に行う。コンタクトセンターなどで報告すべき項目が決まっている場合には、この方法を用いるケースがやや多い。初回に設定した内容に基づいて、その後も実施することができるので、担当者が変わっても分類基準が変わることがなく、再現性や客観性が担保される。

 ただし、単純な文字列一致で分析しようとすると、本来振り分けたくない内容も分類されてしまうことがあるので、注意が必要である。例えば、「店舗設備の苦情」という項目があった際に、「暗い」というキーワードを指定したとしよう。そうすると、「店舗の照明が暗い」だけでなく、「店員が暗い」といった表現も含まれてしまう。

 このような際に威力を発揮するのが、前回の「膨大なテキストからビジネスのヒントを探せ」で紹介した構文解析技術である。「○○が暗い」という、「暗い」のその先(主語)までも把握して、分類設定を行うことができる。

 また、意味まで解析できる。すると、「明るい」という要望文のみをこの分類条件に加えることもできる。この際に、同義語や類似したものも、併せて振り分けてくれるようなツールもある。コンタクトセンターの実務になじむ分類である。

キーワードの特定による分析

 続けてキーワードによる分析である。先の通販や有料放送事業者の事例も、このキーワードの発見により、施策の検討を行うことができた。このキーワードというのは、単純に出現頻度を見るのではない。

 例えば、商品別や地域別、性別や年代別に、それぞれ集中している単語などを自動的にピックアップしてくる。先ほどの有料放送事業者の例では、20歳以下や30代前半という年齢層からの解約理由の文章からは、特定の歌手の名前や、スポーツリーグの名称、スポーツ選手の名前が多くキーワードで挙がってきた。これらの傾向が出てきて、初めて各ターゲットに合わせた打つ手を検討できる。

 このあたりの作業は、ある程度のレベルまでは人手でできる。しかし目視で作業していると、漠然とした傾向しか把握できないため、客観的かつ定量的に、傾向を示すことは困難である。

 また、すべての属性に対して傾向を把握する作業は膨大な作業時間を要する。このような作業をすべての属性に対して網羅的に、かつ定期的に実施してくれるのも、テキストマイニングの魅力である。

時系列分析の重要性

 コンタクトセンターで特に重要なのは、時系列分析である。コンタクトセンターには顧客の声が継続して集まってくる。そこで、各分類項目の増減を見たり、キーワードの推移をチェックしたりすることで傾向が浮かび上がってくる。

 特に、何か施策を打ったときに、その効果検証という意味合いで時系列分析をする企業が多い。

 例えば、ある家電メーカーでは、「ある操作をするためのボタンの位置が分かりにくい」という苦情が殺到していた。そこである時期から、上記の質問に関する回答を、取扱説明書に盛り込んだり、FAQサイトに掲載したりした。その後、それに関連した質問件数が減ったことをきちんと検証している。

 時系列での分析という観点では、急増トピックの分析も重要だ。最近、特に家電メーカーや食品メーカーにおいて品質リスクの情報を、いち早く察知する必要が出てきている。その際に、テキストマイニングによって急増傾向にあるトピックを定期的に抽出し、異変を探ることで、品質管理の徹底を図る企業も非常に多くなってきている。

社内ポータルの活用

 これまでは分類や分析に着目してきたが、コンタクトセンターで集まった顧客の声を、経営層や各事業部に報告することで情報発信が完了する。次のグラフ2は先の調査(「顧客の声の活用実態調査」)で報告に要する時間を集計したものだ。

ALT グラフ2 グラフ1と同じ野村総合研究所の「顧客の声の活用実態調査」から、顧客の声が報告・共有化されるまでにかかる時間を集計したもの。このグラフから、情報が3週間以内に経営層に伝達されている企業は5割ほどであることが分かる。なお、グラフの一番上の担当部署内の数値をすべて足しても本来は100%にならない。これは、公表された調査結果に小数点以下がないためである

 これまでの方法だと、報告までに時間を要する。実際にグラフ2を見てみると、コンタクトセンター(担当部署)から経営層までの報告時間を見ると、3週間以内に報告されている企業は5割程度しかない。これでは経営層にとって適切なタイミングでの問題の把握や、具体的な意思決定は困難であろう。昨今の消費者ニーズの変化の早さや商品・サービスの改廃の早さ、早期の品質リスクの察知の必要性を考慮すると、よりスピーディな情報共有が求められる。

 最近そのような際に、テキストマイニング分析結果を社内でポータルサイトを構築してそこにアップし共有する企業も非常に多くなってきている。経営層や各事業部のメンバはこのようなポータルサイトを通じて、コンタクトセンターに入ってきている顧客の声を、グラフやキーワードから瞬時に把握でき、適切なタイミングで具体的な指示ができるようになるのである。

 次回は、「顧客対応力」を強化するためのテキストマイニング技術について見ていきたい。

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