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» 2008年08月18日 12時00分 公開

ビジネスに差がつく防犯技術(8):なぜ幹部は褒めるべき社員をしかってしまうのか (1/2)

褒められてもいいはずの部署や社員を叱責(しっせき)し、しかられるべきはずの部署や社員を評価してしまうような幹部社員はいないだろうか。彼らの資質の問題もあるが、彼らが判断材料にしている情報やデータの信頼性に問題はないのだろうか。今回はこの問題を考える。

[杉浦司,杉浦システムコンサルティング,Inc]

事件は会議室で起きているじゃない!

 青島刑事が捜査本部に向かって叫ぶ、「事件は会議室で起きているんじゃない!」。

 彼がいいたいのは、「会議室が把握していることは現場で起きていることのごく一部であり、下手をすれば事実関係を間違って理解していることだってある」ということだ。

 こういったことは、企業においてよく見かける光景である。一部の管理資料や限られた関係者の意見だけを聞いて、重要な意思決定をする幹部社員は少なくない。褒められてもいいはずの部署や社員を叱責し、しかられるべきはずの部署や社員を評価してしまうような幹部社員はいないだろうか。

 間抜けな幹部社員がいること自体が一番の問題かもしれないが、彼らが判断材料に使っている情報について、今回は検討してみよう。

伝言ゲームで最後に届くもの

 会社で起きている事実の誤認識は、伝言ゲームに似ている。伝言ゲームで最後に届く情報は、なぜ最初の情報と大きく食い違ってしまうのだろうか。

 伝言ゲームでは、先頭の人以外、伝えるべき情報そのものについて直接見聞きするわけではなく、間接的に聞くにすぎないという状況下において、伝言をリレーする人が記憶できなかったことや、知らないことを推測で取り繕うところに盲点がある。

 人は人から聞いたことについて、「その人自身が見聞きしたことなのか」「その人自身が別の誰かから聞いたことなのか」について、あまり気にしない。

 それどころか、「これは聞いた話ですが……」といわれた方が、何やら信憑(ぴょう)性が高そうな気になってしまう。

 いいかげんな話でも、2〜3人が同じ情報を持っていると、さらに信憑性が高くなっていく。テレビや雑誌などのマスコミから得た情報ともなると、多くの人が疑うことなく信じてしまう。「会話のごく一部だけを取り上げて、あたかも争いがあるように見せることだって、編集すればできてしまうのに」である。

客観的事実と主観を区別せよ

 まずは、われわれが入手する情報の中には、客観的な事実と主観の2種類があるということを認識する必要がある。

 経理情報でいえば、「支払いの催促」は債務という客観的事実を表しているが、「在庫金額」はその都度時価評価でもしない限り、「このくらいの価値で売れるはずだ」という主観を表しているにすぎない。

 ただ、「主観による情報が悪い」というわけではなく、恣意(しい)性や誤解が入り込みやすいリスクがあるということを知っておくことが重要なのだ。

 この情報が厄介なのは、主観による情報の信憑性は「見た目ではまったく判断することができない」という点にある。立派な印刷物にしたり、情報システムに載せたりすれば、どんな情報でも見た目の信憑性が上がってしまう。

 受け手側で判断できないとすれば、発信者側でこの情報が客観的事実なのか、主観的判断なのかを明示するしかない。主観的判断の場合は、「誰の主観であり、その判断は妥当である」という正当性(根拠)も明示する必要があるはずである。

 日常、情報の根拠について、いちいち確認していられない消費者は、常に悪徳業者にだまされやすいのは当然としても、会社の中で身内から上がってくる情報で判断を誤るというのはどうにもこっけいな気がする。

情報に格付けが必要な時代なのだ

 現代は情報に格付けが必要な時代だといえる。

 自分の目や耳で直接確認したものではない限り、情報の信頼性を常に意識しなければならないからだ。

 売上高が増えても、その売上増は「翌月返品されるまで」の見せかけの情報かもしれない。利益率の高い商品といっても、開発費や宣伝費といった費用を原価に乗せていないのかもしれない。営業現場であれば、この商品は売れないとか、あの顧客は買ってくれないとかいった話もどこまで本当なのかは分からない。

 突然回収できなくなった債権は、それまで誰もが不良だと思いもしなかったはずだろう。しかし、もし客観的事実を目で見ることができるとすれば、回収不能という事実は確実に進行していただろうし、ひょっとするともともとそうだったのかもしれない。

 幹部社員や経営層は、信用できない情報に対しては、自らが現場に降りていって自分の目や耳で確認するくらいの問題意識を持つべきではないだろうか。

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