SCMは「人間」の仕事です「もう二度と失敗しない」SCM完全ガイド(3)(3/4 ページ)

» 2008年09月22日 12時00分 公開
[石川 和幸,@IT]

企業の命脈を握る需給計画(仕販在計画、生販在計画)

 さて、販売計画が確定したら、その数値を基に、販売‐在庫‐生産の計画(仕販在計画)、もしくは販売‐在庫‐生産の計画(生販在計画)を立案します。日本の製造業では、これらを指して「PSI(Purchase/Production,Sales/Ship,Inventory)計画」と呼ぶことも一般化してきました。

 PはProductionやPurchaseなどの「生産・仕入」を、SはSalesやShipなどの「販売・出荷」、IはInventory、すなわち「在庫」で、いわゆる仕販在計画、生販在計画を指します。意外に地味な業務ではありますが、この需給計画こそがSCMの肝なのです。

■需給計画がSCMの肝

 需給計画とは、販売計画を満たすべく在庫数を計画し、在庫数を満たすべく仕入計画・生産計画を立案するものです。販売会社などが立案する「仕販在計画」の場合は、販売計画から在庫計画を立案し、仕入計画(仕入所要数)を算出します。メーカーなどが考える「生販在計画」は、販売計画から在庫計画を立案し、生産計画数(生産所要数)を算出します。

 さて、このとき在庫数を計算するために「基準在庫計算」というものを使います。基準在庫計算は、「統計的基準在庫計算」と、シンプルな「期間バッファ在庫計算」という2つの方法が主に使われています。

 以下は、統計的基準在庫の一般的な公式です。安全係数(欠品を回避できる割合)に、出荷実績の標準偏差(統計的なバラツキ)を掛けたものに、販売計画数(期間所要数)を足した数になります。標準偏差にリードタイムの平方根を掛けているのは、次に在庫を補給するまでのリードタイムの長さに応じて、標準偏差も大きくなるためです。

統計的基準在庫の公式

 一方、期間バッファ在庫の求め方はシンプルです。「いまからどれくらいの期間分、販売計画数があればよいか」を勘案して、在庫数を計算します。例えば3週間先の計画を立てる場合、「翌週分の販売在庫が前倒しでなくなりやすいので、販売計画対象の週(3週間先)+その翌週分で2週間分を在庫しよう」といった形になります。経験知が影響する計算方法ではありますが、非常に分かりやすく、この方法は簡便型として有効です。

期間バッファ在庫計算の公式

 こうした計算に基づいて準備された在庫数が、販売計画を満たすもの=販売可能数=売り玉となります。

■社業全体に影響する需給計画

 さて、あえてさらりと説明してきましたが、重要なことに気付かなかったでしょうか? そう、需給計画とは販売可能数を決めるものであり、すなわち、会社の売り上げを左右する重要な計画なのです。そしてもう1つ、重要な点ですが、需給計画のうち「仕販在計画」は仕入計画を決めるものとして資金計画に影響し、「生販在計画」は生産規模を決めるものとして、工場の予算や利益計画に大きな影響を及ぼします。

 お分かりでしょうか? このように、需給計画は販売数を制約し、仕入数や生産数を決めることで、会社の棚卸資産規模を決定し、ひいてはキャッシュフローに影響を与えるのです。換言すれば、需給計画こそが企業の資産と収益性を決定しているといえます。

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