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» 2008年09月22日 12時00分 公開

超短期開発を支える7つのエッセンスエクスプレス開発バイブル(1)(1/3 ページ)

家を造るように、効率よく、失敗なく、システムを構築することはできないのだろうか? @IT RFID+ICフォーラム「RFIDシステムプログラミングバイブル」でおなじみの西村泰洋氏が、システム開発を短納期化するエッセンスを現場視点で伝授する

[西村泰洋(富士通),@IT]

家を造るようにシステムを開発することはできるのか?

 家を造るように、効率よくシステム開発ができないだろうか?──システム開発の短納期化が年々進む中、これはシステム開発に携わる者にとって大変興味深いテーマといえます。

 システム開発の大手ベンダ、大手ユーザー、経産省、関連団体などで運営されているIPA SECが執筆した『経営者が参画する要求品質の確保〜超上流から攻めるIT化の勘どころ』(IPA SEC著/オーム社/2006年6月)などでも、「家造りとITシステム構築」というテーマのコラムで、家造りとシステム構築の違いが語られています。システム開発を効率よく、失敗なく進めるうえで、家造り手法の適用に対する期待は近年、特に高まっているといえるでしょう。

 筆者はシステム開発に関しては、日本通運で物流システムを構築することからキャリアをスタートしました。その後、ロジスティクスSCMに対する社会的認知度の高まりとともにさまざまな経験を積み、近年はRFIDを利用した業務システム開発に携わっています。いま、この記事を読んでいただいている方の中に、RFID+ICフォーラムの読者の方もいらっしゃるかもしれません。

 そうした経験から申し上げれば、家を造るようにシステム開発をすることは、可能です。実際にそのようにしたことは幾度となくあります。RFIDシステムの開発をしたときも、家造りのような手法を採っていました。 しかし、世の中にはあらゆる業務があるうえ、システムの規模もさまざまです。この点で、すべてのタイプの業務システム開発に家造りの手法を適用するのは困難であるとも感じています。

 例えば、業務システム開発への適用が期待されてきたアジャイル開発プロセスの中でも、極めてメジャーなXP(エクストリーム・プログラミング)開発手法でさえ、組み込みシステム開発では徐々に普及しつつも、業務システム開発の分野では、ごく一部でのフィージビリティスタディにとどまっているのが現状です。つまり、万能な開発手法などはなく、状況に合わせて最適な手段を考えるというビジネス一般のセオリーは変わらないのです。

 そこで本連載では、まず“家造りの文化によるシステム開発”を正しく定義するために、以下の順序で話を進めていきたいと思います。

  • “家造りの文化”でシステム開発をするとは、どういうことなのか
  • 家造りとシステム開発の相違点とは
  • システム開発に活用すべき、“家造りの文化”のエッセンスとは

 これらの視点に沿って“家造りの文化によるシステム開発”とは何か、中身を明確にしておくことで、適切なときに、適切に活用できるかと思います。では、さっそく本題に入りましょう。

“家造りの文化”とは、造る人、使う人の双方にシンプルであること

 日本通運のように、筆者が以前勤務していたような物流企業では、日本でビジネスを始めたい外資系企業などから、物流業務とシステム開発を受託する、といったケースが多くみられます。例えば契約を交わす席では、以下のような会話が実際によくなされています。

外資系企業:弊社が欧州で製造した家具を、今回新たに開設する日本法人が輸入して、代理店に販売をする。従って、当社の日本の物流拠点から、主要都市にある卸売業者や販売店に納品したい。代理店との契約の都合もあるため、3カ月後には開始したい。やってくれるなら間違いなく御社と契約する。

物流企業:分かりました。主要都市の卸売業者と販売店に納品ができるよう、物流業務と関連システムを3カ月で構築すればいいのですね?

外資系企業:そのとおり。

 このようなケースにおいて、ウォーターフォールによる開発を前提にすると、「確かに小規模なシステムですが、要件定義と基本設計で2カ月、詳細設計・開発製造で3カ月、各種テストで1カ月はかかります。さすがに3カ月では無理です」といった回答になります。

 一方、ここで「3カ月で何とかやってみます」と答えると、その実現のためにはスピーディでシンプルなシステム開発手法が求められます。この“シンプル”とは、「短納期開発に携わるシステムエンジニア(SE)やプログラマにとって、無駄がなくシンプルな手法である」だけでなく、「顧客からみても、シンプルで理にかなっている」ということです。

 筆者は、こうした“スピーディかつシンプル”という考え方こそが、「家造りの文化」であり、「家造りの文化によるシステム開発」の核となるものだと認識しています。

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