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» 2008年11月07日 00時00分 公開

「神奈川県宅地建物取引業協会」が会員企業向けに:AIR使った不動産物件システムを構築、「チラシ広告をDB化」

[垣内郁栄,@IT]

 県下7200の不動産業者が加入する社団法人 神奈川県宅地建物取引業協会は11月7日、「Adobe AIR」のアプリケーションをクライアントとして活用する不動産物件情報システムを構築し、11月17日に稼働を開始すると発表した。AIRアプリケーションで作成したPDFファイルを協会のデータベースに登録し、業者間の情報流通を促進することが狙いだ。

神奈川県宅地建物取引業協会 横浜鶴見支部 支部長の横山智司氏

 不動産業者が扱う物件情報はこれまで紙でのやりとりが中心。ある不動産業者が扱う物件を別の不動産業者に販売してもらうには専門の広告代理店などを経由させる必要があり、業界全体の非効率性を生んでいた。特に中小規模の不動産業者では自社の物件情報をほかの業者に流通させることが予算面で難しく、機会損失を生むケースもあった。また、不動産物件の広告、商談、契約にはチラシ広告から契約書、重要事項説明書など大量のドキュメントを作成する必要があり、不動産業者の負担になっていた。

 同協会が新システム「KTツール」で狙うのは「紙でしか流通していないチラシ広告をデータベース化し、中小零細の業者でも流通できるようにすること」(神奈川県宅地建物取引業協会 横浜鶴見支部 支部長の横山智司氏)だ。全国の不動産業者の8割は従業員が5人以下の小規模業者で、その小規模業者が全体の6割の物件情報を握っているという。流通させるパワーに欠ける小規模業者が多くの物件情報を持っていることが、流通の阻害要因の1つになっている。

1回のデータ入力が複数の帳票に反映

 KTツールのAIRアプリケーションを使えば、不動産業者がPCで物件情報を入力できる。チラシ広告や契約書などの帳票が物件ごとに用意され、1つの帳票に入力した情報が別の帳票に自動的に反映される仕組み。重複入力や情報の変更漏れを防ぐことができ、ドキュメント作成の効率が上がる。作成した帳票はPDFで出力可能。作成したPDF文書には、「Adobe Reader」に特別な権限を付与する「Adobe LiveCycle Reader Extensions ES」の機能が適用される。Reader Extensionsの機能が付与されたPDF文書は、Adobe ReaderだけでPDFフォームの編集や注釈の追加などが可能になる。横山氏は「フォームを編集可能にすることで自由度が高くなる」と話した。

KTツールのAIRアプリケーション。チラシ広告のひな形にデータを直接入力できる。右側には作成できる帳票が並ぶ
ローカルデータを参照し、自社で扱う物件情報を一覧できる

 作成した物件情報と帳票はXMLデータとして協会に送信され、協会が運営する「Oracle Database」に格納される。さらにこの物件情報は「REINS」など外部の不動産検索サイトに送られ、登録される仕組みになっている。不動産業者は物件情報を一度入力すればデータベースと検索サイトの両方に登録でき、「データの産地直送がしやすくなる」(横山氏)のだ。また、協会でもデータベースを活用した独自検索サイトの2009年中の開設を検討している。

PDFとの親和性の高さを評価

 協会は過去にWebブラウザを使った物件情報入力のシステムを構築したことがある。しかし、「入力したデータがローカルに残らず再利用できない」(横山氏)ために利用が広がらなかった。対してクライアントアプリケーションとして稼働するAIRではデータはローカルに保存する。Webアプリケーションと比較して、利用しやすいインターフェイスを設計できること、PDFとの親和性の高さなども評価した。KTツールを構成するOracle Databaseや、InterstageとSeasar2、BlazeDSなどを組み込んだアプリケーションサーバは、KTツールの開発を担当したPFUのデータセンターでホスティングする。

神奈川県宅地建物取引業協会の常務理事 松本茂氏

 KTツールの構想が協会内で生まれたのは2005年。PDFをベースにすることは決めていたが、2007年にアドビからAIR(当時はApollo)の紹介を受けるまでクライアントのイメージは固まっていなかった。「AIRを使うことで複数のPDF帳票をまとめて作成、管理できる。普段の業務と同じように使える取っつきやすさが決め手だった」と同協会の常務理事 松本茂氏は語った。

 実際の開発がスタートしたのは2008年初め。10月末に完成した。PDFを扱う上で必要なコンポーネントがそろっていることから「開発では特に難しい点はなかった」とPFUのシステムソリューショングループ 第一システム事業部 産業ECMソリューション部の坂本竜生氏は振り返った。KTツールのAIRアプリケーションは11月17日に同協会の会員向けWebサイトでダウンロード配布を始める。支部ごとに会員向けの講習会も開く予定で、同協会は4500社以上の利用を目指している。

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