理想像と現実のフィット&ギャップを知る――業務分析の成果をシステム統合に活かす戦う現場に贈る分散システム構築−情報部門編(4)(2/2 ページ)

» 2009年01月16日 12時00分 公開
[岩崎浩文,豆蔵 BS事業部]
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再利用可能な既存システムを知る

 豆成くんは、業務分析と並行して既存システムの調査を行っているようだ(あるべき論を語ればもう少し前に行っておくべきであるが、実際には並行作業になることが多い)。

 既存システムの中には、それがサービスとして再利用可能か否かの判断が付きかねるものがままある。また、あるサービスを具体的にどのようにして再利用するのか、というのは方式設計に相当するため、要件定義時には触れないことが多い。

 そこで調査段階ではそれぞれのコンポーネントやシステムについて、再利用が可能か否かという評価軸できちんと判断しておくことが重要となる。単純な再利用が不可だとしても、どのような方策が可能かということについても判断や選択肢が持てればなおよいだろう。

 なお、一般論としては、3層アーキテクチャ、つまり「画面+ビジネスロジック+データベース」の3層がきれいに分かれた構成であれば、「ビジネスロジック+データベース」の部分がサービスインターフェイスの候補として再利用が可能といえるだろう。それとは異なり2層以下、つまり「画面+データベース」という、画面とデータ処理が一緒くたに実装してあるアプリケーションの場合は、一筋縄ではいかないことが多い。このあたりは本連載の後半で扱う予定である。

ALT 図1 再利用しやすい3層アーキテクチャと、しにくい2層以下アーキテクチャ

分析結果と既存システムとの溝を知る

 さて、業務分析を行った結果の代表的な成果物としては、業務フロー図や概念モデルなどの可視化されたモデル図(模型図)が挙げられる。これはいわゆる既存(as-is)としての図である。これに基づいて、将来像(to-be)を起こしていくのが定石となっている。

ALT 図2 現実と理想にはギャップがある。そのギャップを知ることが大切だ

 これらの成果物を横目に見つつ、既存システムをその成果物に当てはめて対比させた場合、必ずそこに乖離(かいり=ギャップ)が発生しているのが分かるだろう。例えば業務フロー図であれば、「そこで本来利用されるべきアクティビティと、既存システムの画面とがうまく対応付かない」「既存システム側に適切なサービスインターフェイスがない」などである。概念モデルであれば、「業務で扱うべき情報構成の固まりと、バラバラに管理されている既存システムの情報の固まりとがうまく対応付かない」などである。

 業務分析から各既存システムを連携するための方式設計、つまり各サービスの抽出につながる道は、実はここに隠されているのだ。これについては、次回で豆成くんがうんと頭を悩ますことになるだろう。

筆者プロフィール

岩崎 浩文(いわさき ひろふみ)

株式会社豆蔵 BS事業部。ITコンサルティング会社にて商用フレームワーク設計・構築およびITアーキテクトとして多数の企業システム設計・構築に携わる。その後、サーバ製品ベンダにてSOAコンサルタントを担当したのち、2005年より現職。現在、方法論「enThology」(エンソロジー)の策定とSOA型システム設計支援の主任担当として多くの現場へ支援を行っている。

株式会社豆蔵


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