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» 2009年04月20日 12時00分 公開

不況に乗じて“勝てる”コスト構造を構築せよERPリノベーションのススメ(6)(1/3 ページ)

この不況も見方を変えれば、「現行システムをじっくりと見直す好機」ともいえる。目先のコスト削減に走ることなく、新技術の導入も視野に入れた、戦略的なコスト削減にじっくりと取り組んでみてはどうだろう。

[鍋野 敬一郎,@IT]

当面は「コスト削減」が合言葉

 依然として底が見えない不況が続いています。こうした中、多くの企業が赤字決算の見通しを発表しましたが、IT業界も同じです。不況には比較的強いとされてきましたが、回復はまだまだ先になりそうです。

 筆者がコンサルティングを行っている顧客企業においても、「新規投資の凍結」をはじめ、「稼働中のシステムの統廃合」や「システムを止めることも含めたTCO削減」を検討する例が増えてきました。

 ベンダ各社も今年のキーワードは「ITによるコスト削減」のようです。「サーバの大幅値引き」や「現行システムの延命提案」といったものから、「BIによる見える化でムダなコストを削減」「SaaSASPBPOを利用したコスト削減」など、実にさまざまな施策を提案しています。今回は筆者もこうした流れに乗って、“ERPを中心としたコスト削減”をテーマに、1つの考え方を紹介したいと思います。

IT予算を5年で5割削減するために

 では事例に入りましょう。今回の不況により、情報システム部門が「5年で5割のTCO削減」を求められたF社のケースです。

事例:F社のTCO半減計画〜現状編〜

 F社は総合商社を親会社に持つ中堅機械製造業。約10年前に創業社長が自社株を総合商社へ譲渡し、オーナー経営からグループ傘下の経営に変わったという経緯を持つ。というのも、F社は独自の技術とノウハウは充実していたが、資本力や市場開拓力には劣っていた。そうした弱点を相互補完する考えからグループ傘下入りを決めたのである。

 その後は狙いどおり急激な成長を遂げ、周囲からは大成功と評されていた。だが、それでも今回の不況のインパクトは大きく、成長戦略を抜本的に見直さざるを得ない状況になってしまったのだった。

 生産拠点は、すでに国内から中国、アジア諸国へ移していたが、ロシアや南米といった新興国拠点への積極展開は中止となった。そのため、拠点拡大に伴うシステム構築に追われていた情報システム部門も、ここ半年ほどは落ち着いた状況となっていたが、その実、事態は深刻であった。

 当初計画していた新規投資予算の大半が執行中止となったうえ、来年度IT予算については「現在稼働しているシステムの統廃合も含めて3割の削減」、5年後のTCO削減目標は「現状の5割減」──これを実現できる計画の提示を迫られていたのである。加えて、今後市場の需要が回復した場合も、「この予算内で対応できること」が計画策定の条件であった。

 これまでF社のIT予算は、売り上げの拡大に伴って増加を続けてきたこともあり、今年度は約10億円を超える規模となっていた。既存システムの保守・運用コストと新規投資の比率は基本的に7対3と、製造業としては平均的な割合だったが、この10年間は拠点拡大によるシステム構築が相次いだため、全体コストの3割まで人件費が膨れ上がっていた。だが、課せられた最終目標は「5年後に5割のTCO削減」──全体予算を5億円に絞らなければならないのである。

 例えば、人件費を絞り込んで2億円にしたとしても、残り3億円で現行システムの保守運用と新規投資を賄わなければならない。新規投資を1億円に絞り込んでも、これまで4億円掛かっていた保守・運用コストを半分の2億円にしなければならない。

 しかし幸いにも親会社からの支援があるため、企業の存続自体は問題なかった。また、取りあえず「来年度のIT予算は3割減の7億円」まで認められるほか、「TCO削減のための投資なら新規投資も認める」とのことだった。そこで早速、社内のITコストを棚卸ししたところ、次のことが明らかになった。

 人件費を除いた7億円のうち、最も大きなコストは基幹システムのERPにかかわる4億円であった。その内訳は、ERPおよびERP関連ソフトウェア保守費用、新規投資の追加ライセンスやサーバ購入費用、システム改修のベンダ・SI費用、サーバやネットワークなど機器関連の保守費用の4つで、それぞれに1億円が掛かっていた。

 残り3億円の内訳は、ERP以外のオフコンやPCサーバなど、既存システムのハード関連の保守費用が1億円、そのシステム改修のベンダ・SI費用が1億円、ERP以外のソフトウェア保守費用が7000万円、新規購入費用が3000万円というものであった。最終的には、これらを半減させなければならないのである。


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