クラウド導入で公務員の怠慢な作業が迅速に?甲府市がsalesforce.comの導入事例を紹介

» 2009年04月22日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 セールスフォース・ドットコムは4月22日、プライベートイベント「Cloudforce Tour TOKYO」を開催。基調講演では、山梨県甲府市情報政策課の土屋光秋氏が同市の定額給付金システムにsalesforce.comを導入した事例を紹介した。

土屋氏写真 山梨県甲府市情報政策課 土屋光秋氏

 甲府市では、2008年11月ころから「定額給付金の給付が決まりそうだ」ということで、管理システムの構築検討を開始。

 甲府市が検討していたシステムは定額給付金支給事務の管理システムで、住民基本台帳の情報に基づいて支給する定額給付金や子育て特別手当を自動的に計算することを求めていた。このような仕様に基づいて、同市は複数社に要件定義を持ち込んだという。

 その際、「まず重要なのは“恐らく1回こっきりのシステムになりそうだ”という点だ。また、数カ月で構築が完了するスピードも必要だった。当然1回切りのシステムに多大なコストをかけるわけにもいかない。また、給付金管理というかなり特殊な仕様が求められるので、カスタマイズも必須だった。これらの条件を考えると、既存のパッケージソフトウェアは選択対象から落ちていった」(土屋氏)と経緯を説明した。

 土屋氏が何社か訪問した後に訪れたのがセールスフォースで、そのときの感想について「そのとき驚いたのが、担当の方が目の前でどんどんとこちらの要望に沿ってカスタマイズしていったことだ。結局仕様を伝えて3日後にプロトタイプができあがったのにはとても感心した」とコメントした。

 また、定額給付金に関してあらかじめ想定されたのが「問い合わせの多さ」だという。「甲府市民9万人が受け取るので、相当数の問い合わせが想定された。いままでの市庁窓口であれば、『昨日と今日で担当者が違うので分かりません』や『待っていればいつか申請書が届きますよ』といったお役所仕事が許されるが、今回そのような対応は許されなかった。そのためCRM機能を入れたかった」という。実際にsalesforce.comのCRM機能を導入したところ、役人間でのデータ共有が可能になり、「給付金申請書を失くして、昨日再請求したのだけど、いつ届くの?」といった質問に対しても「昨日受け付けて、今日の午前中に投函したので明日か遅くてもあさってには届きますよ」といった的確な回答が可能になったとした。

 実際、給付金の給付が始まると予想以上の問い合わせ数で、甲府市のケースでも1日1200件を超え、電話が鳴りっぱなしだったという。土屋氏は、「CRMを入れたことで、甲府市の職員ものらりくらりと回答しなくてよくなったため、ストレスが減った。また、CRMを使っていることで、このようなサービスに抵抗がなくなりいわゆる『公務員マインド』が変わりつつあるような気がしている」といった思わぬ作用が出ているとした。

 一方で、同氏はsalesforce.comの導入に関して「スルスルっと進んで導入できたわけではない」という。「やはり官公庁は、超がつく保守的な組織で前例主義だ。ソフトウェアという物を買うのではなく、サービスを買うという点でかなり説得に回らなければならなかった。ただ、甲府市ではPFI(Private Finance Initiative)の前例があったので、何とかsalesforce.comを導入することができた。今後は病院カルテなどのシステム構築も控えているので、さらに新しいことにチャレンジしていきたい」と説明した。

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